お子さんのお名前をつけるのに「凜」と「凛」のどちらを選ぶべきかお悩みでしょうか?このページでは「凜」と「凛」の共通点と違いを解説。そして人気(使用頻度)比較を行うことで、どちらの「りん」を選ぶのかの判断材料をまとめています。
「凜」と「凛」に違いはある?
まずはじめに、このページをご覧になっているあなたが最も気にされているはずの「凜」と「凛」の違いについてご説明します。
「凜」と「凛」の間に意味の違いない
「凜」という漢字のつくりは「稟」。つくりの「稟」の下半分が「禾」。それに対して「凛」という漢字のつくりは「禀」。つくりの「禀」の下半分が「示」です。
「凜」と「凛」は、つくりの下半分の「禾」と「示」という違いを持っていますが、「凜」も「凛」、そしてつくりの「稟」も「禀」もまったく同じ意味を持つ漢字です。
「稟」=「禀」
ちなみに「凜」と「凛」は画数もまったく同じです。そのため、画数による姓名判断をしてもまったく同じ結果が出ることになります。
「凜」と「凛」/「稟」と「禀」それぞれの意味
「凜」と「凛」は、「冫(にすい)」と「稟」または「禀」というつくりから成り立つ漢字です。「冫」は氷をあらわし、つくりの「稟」「禀」は米倉をあらわしています。
氷と米倉の組み合わせによってあらわされているのは、米倉が氷りついてしまうほどの厳しい寒さです。
その厳しい寒さが、身も心も引き締まるような寒さという意味に転じ、自分にストイックで妥協を許さない生き様をあらわす言葉になりました。
降り積もる雪の中でさえも、その極寒をものともせずに青々と生い茂る松の樹の凛々しい生き様を詠んだ
「ふりつもる み雪にたへて いろかへぬ 松ぞををしき 人もかくあれ」
という御製がありますが、まさにこの御製の心のような言葉が「凜」であり「凛」なのです。
「凜」と「凛」の違いはこの一点
「凜」と「凛」の間に意味の違いはありませんが、一つだけ違いが存在します。それは「凜」が正字であるのに対して、「凛」は俗字であるという点です。
正字と俗字。普段、あまり耳にすることのないこの言葉の意味は次の通りです。
1716年の中国で完成した『康熙字典(こうきじてん)』という漢字辞典が存在します。この『康熙字典』に載っている字体を正字と呼び、それ以外を俗字や略字と呼びます。
『康熙字典』に載っている字体こそが正規かつ正統であるという考え方から正字と呼ばれ、それ以外の字体を俗字や略字と呼ぶことで区別しているのです。
ここまで書くと、正字の「凜」が俗字の「凛」よりも正統派だ。優っている。そう考えたくなりますが、この正字と俗字という区別には異論も存在します。
そもそも日本国内の公用文などで正式な漢字として認められている常用漢字には、正字でなく俗字や略字が採用されているケースが少なくありません。
例えば「国」という漢字は常用漢字として公用文などで使うことが定められています。ところがこの「国」という漢字は略字です。正字は「國」と表記します。しかし、公用文などでは「國」と書くことは認められていません。
正式な漢字でありながら『康熙字典』では正字ではないというギャップを疑問視する声も多く、正字と俗字という区別でなく、旧字と新字という区別にすべきだという意見も存在しています。
よって、「凜」と「凛」の間にある違いはこのページでは次の一点とします。
「凛」新字
「凜」と「凛」子供の名前に人気なのはどちら?
「凜」と「凛」人気ランキングの比較
「凜」という旧字が人名用漢字に追加されたのは1990年(平成2年)。「凛」という新字は2004年(平成16年)に人名用漢字に追加されました。
それ以来、明治安田生命の調査によれば、旧字の「凜」も新字の「凛」も、赤ちゃんにつけられる名前の人気ベスト100に毎年ランクインするほど人気を集めています。
「凜」と「凛」、ともに赤ちゃんにつけられる名前として人気の高い漢字ですが、実際はどちらに人気が集まっているのか一目でわかるようにデータを集計してみました。
グラフの縦軸はランキングの順位。上にゆくほど高い順位を示しています。グラフを見るとここ数年は新字の「凛」の人気が旧字の「凜」を上回っています。
ちなみにデータは女の子の名前のランキングです。男の子はわずかな回数しか登場していません。
凜 | 凛 | 凜/凛を含む他の名前 | |
2004年 | 3 | 82 | |
2005年 | 7 | 12 | |
2006年 | 24 | ||
2007年 | 17 | 42 | |
2008年 | 36 | 24 | 72位:凛太郎 |
2009年 | 31 | 16 | 42位:凛音 |
2010年 | 20 | 14 | 64位:凛音、100位:凛太郎 |
2011年 | 13 | 70 | |
2012年 | 8 | 26 | 97位:凛音 |
2013年 | 6 | 7 | 69位:凛(男の子)、凛太郎 |
2014年 | 10 | 1 | 47位:凛音 |
2015年 | 16 | 5 | |
2016年 | 23 | 4 | 70位:凛花 |
平均 | 16.4 | 25.2 |
データ出典:明治安田生命
旧字の「凜」だけが持つデメリット
最後に、旧字の「凜」だけが持つデメリットをお伝えします。結論から言うとパソコンなどの漢字変換ソフトでは、旧字の「凜」よりも新字の「凛」が先に出てきます。
パソコンによっては旧字の「凜」が出てこない場合さえもあります。
そのため、旧字の「凜」の名前をつけても役所や銀行などで間違えられて新字の「凛」で登録されてしまったり、手書きで対応されるケースが少なくありません。
この混乱はお子さんが成長後も、成人して独立した後も続くことが予想されます。
旧字の「凜」には、こんなデメリットがあるのです。
「凜」と「凛」に違い、まとめ
「凜」と「凛」の違いをについてもう一度まとめます。
「凜」と「凛」はまったく同じ意味と読み方を持つ漢字で、画数もまったく同じです。違いは一点、「凜」が旧字(正字)なのに対して「凛」は新字(俗字)です。
新字の「凛」の方が14年遅れて人名用漢字に追加されたこともあり、旧字の「凜」の方がランキングでは上位に位置していますが、ここ数年は逆転現象が起こり始めています。
また、旧字の「凜」はパソコンによっては変換されない場合もあり、銀行や郵便局、役所などの手続きで間違えられる場合が少なくないという事実があります。
このページでまとめたこれらの情報が、「凜」と「凛」を選ぶ際の判断材料としてお役にたつことができれば幸いです。