「ひたい」と「おでこ」は同じ意味を持つ言葉として使われていますが、もともとは異なる意味を持っていました。
「ひたい」と「おでこ」に共通する意味。それぞれに特有の使い方と使い分け方。そして「おでこ」のもともとの言葉の意味をまとめると次の通りです。
ひたい(額) | おでこ(御凸) | |
共通する意味 | ヒトの眉毛から髪の生え際までの垂直な部分 | |
特有の使い方 | ヒトと動物に使える | ヒトにしか使えない |
使い分け方 | 書き言葉と話し言葉に使える | 俗語のため主に話し言葉 |
もともとの意味 | もとから同じ意味だが、古くは「額」は「ぬか」とも読まれた | ひたいが普通以上に出ていること ひたいが普通以上に出ている人のこと |
このページでは「ひたい」と「おでこ」の意味の違いと使い分け方についてさらに詳しく解説しています。
「ひたい」と「おでこ」の意味
「ひたい」と「おでこ」、それぞれの言葉の意味は次の通りです。『新選国語辞典』から引用しています。
【ひたい(額)】
髪の生え際から眉までの間【おでこ(御凸)】
①ひたいが高く出ていること。
②ひたいの俗語出典:小学館『新選国語辞典』
「ひたい」も、「ひたい」の俗語として「おでこ」も、人間の眉毛から髪の毛の生え際までの垂直の部分を指しています。両者に違いはありません。
なお、年をとって髪の毛の生え際が後退した場合でも「ひたい」や「おでこ」と呼ばれる部分が広がることはありません。
もともと髪の毛の生え際だったところが「ひたい」や「おでこ」の基準となり、髪の毛の生え際が頭頂部まで後退しても、頭頂部を「ひたい」や「おでこ」とは呼びません。
「ひたい」と「おでこ」の違いと使い分け
上に引用した通り「ひたい」が髪の生え際から眉毛までの部分を指す言葉なのに対して、「おでこ」は「ひたい」の特徴を指すのが第一の意味です。
普通以上に高く出ている「ひたい」のことや、「ひたい」が普通以上に高く出ている人のことを指すのが「おでこ」のもともとの意味でした。
そして、そこから「ひたい」そのものを意味する俗語となりました。
「おでこ」は俗語です。そのため、書き言葉として使うのはふさわしくありません。一方で「ひたい」は、書き言葉としても話し言葉としても使用できます。
また「ひたい」という言葉は、7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された日本最古の和歌集『万葉集』の中でも確認されるほど古い言葉です。
そのため「額に汗する」「額を集める」「猫の額」などの慣用表現をはじめとして「ひたい」が一部に含まれる言葉がたくさんあることも「ひたい」という言葉の特徴です。
一方、俗語である「おでこ」という言葉は、もともとは人の「ひたい」の特徴を指す言葉だったため人間にしか使うことができません。
動物にも使える「ひたい」よりも使い道が限られています。
また多種多様な慣用表現がある「ひたい」に対して「おでこ」には慣用表現がないことも、二つの言葉の違いを際立たせているポイントの一つです。
「ひたい」と「おでこ」の意味の違い、まとめ
「ひたい」と「おでこ」の意味の違い、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。
同じ意味を持つ言葉として使われることが多い「ひたい」と「おでこ」ですが、もともとは次のような違いを持っていた言葉だということを覚えておけば、適切な使い分けができるようになるのではないでしょうか。
- 【ひたい】ヒトの眉毛から髪の生え際までの垂直な部分。動物の目の上。
- 【おでこ】ひたいが普通以上に出ていること。ひたいが高く出ている人。