「邦人」と「日本人」の意味の違い。マスコミ特有の使い分け方。マスコミとは異なる公用文等の中での使い分け方のポイントをまとめると次の通りとなります。
- 【意味の違い】「邦人」は自国の人「日本人」は日本国籍を有する人。諸外国人の中で日本人あることを強調する際に「邦人」を使う。
- 【マスコミの使い分け】「邦人」は事件など暗いニュースに。「日本人」は受賞や活躍などの明るいニュースに使われることが多い。
- 【公用文等の使い分け】「邦人」は他の漢字や熟語と組み合わせて使われる場合「日本人」は独立して使う場合が多い。一つの文書に「邦人」と「日本人」が混在することがある。
このページでは、「邦人」と「日本人」の違いをさらに詳しく解説しています。
「邦人」と「日本人」の違いと使い分け方を解説
【意味の違い】「邦人」と「日本人」が使い分けられる理由
「邦人」という言葉に含まれる「邦(くに)」という漢字が「国」「国家」をあらわすことはよく知られています。
しかし、それらの意味に加えて「邦(くに)」には「自国」「我が国」「日本の」という意味もあり、諸外国のものの中で日本のものであることを強調する場合に使われます。
洋の東西を問わずすべての外国の映画を「洋画」と呼ぶのに対して日本の映画だけを「邦画」と呼びますが、これなどは「邦」が日本のものであることを強調するわかりやすい例と言えます。
さて、「邦人」という言葉もそれと同様の使い分け方をされています。
「日本人」という言葉は「アメリカ人」「インド人」「中国人」など様々な国の国民の呼び方がある中での一つの呼び方に過ぎません。
そして、数ある言葉の一つなので対義語が存在しません。
しかし「邦人」の対義語は「異邦人」です。対義語があるということはすなわち、日本人とそれ以外の国の人を区別するための言葉ということです。
そのため、海外で事件が発生した場合に、ニュースなどでは事件に巻き込まれた諸外国の人たちの中で特に日本人だけの安否を伝える際に「邦人」という言葉を使うのです。
【マスコミの使い分け】「邦人」と「日本人」
マスコミでの「邦人」と「日本人」の使い分けの基準はないようです。しかし、次の二点で使い分けられる傾向が確認できます。
海外滞在期間が長期にわたる海外駐在員、留学生などは「在留邦人」「在外邦人」。パスポートだけで行ける短期の旅行者を「日本人」とする傾向があります。
事件、事故、自然災害などに日本人が巻き込まれた場合は滞在期間の短期長期を問わず「邦人」、様々な賞の受賞や活躍を封じる場合には「日本人」を使う傾向があります。
【公用文等の使い分け】「邦人」と「日本人」
政府が発行する文書や、各種公用文などではマスコミとは異なる「邦人」と「日本人」の使い分け方が確認できます。
「邦人救出」「邦人保護」など、「邦人」が他の漢字と組み合わされて熟語のような言葉になる場合に「邦人」が使われるケースが少なくありません。
マスコミが一つの基準としているらしい海外長期滞在者であっても、「日本人」という言葉が単体で使われる場合、公用文では「邦人」ではなく「日本人」が使われています。
また、他の漢字と組み合わせて一つの熟語が形成される場合と他の漢字と組み合わせず独立して使う場合の両方を含むとき、公用文では一つの文書でも「邦人」と「日本人」が一緒に使われています。
ニュースと異なり、あまり目にする機会のない公用文での「邦人」と「日本人」の実例を、一部抜粋して以下に引用します。
「邦人」と「日本人」が混在するケース。マスコミでは「邦人」と呼ばれることが多い場合でも「日本人」と表記されていることが公用文の中で確認できます。
海外に3月以上滞在する日本人及び海外に永住資格を得ている者(以下「在留邦人」という。)
出典:総務省「在外邦人の安全対策等に関する 行政評価・監視結果報告書」海外に在留する日本人及びその同伴する学齢段階の子どもの数はそれぞれ701,969人。(筆者注:長期滞在の海外子女数に関する文書)
出典:文部科学省「海外の子どもの動向 海外子女教育の概要」海外において日本人が安心して活動できるよう、今回の事件から得られる教訓を最大限、今後の邦人保護等の施策に活かしていく
出典:首相官邸「邦人※※テロ事件の対応に関する検証委員会 検証報告書」
「邦人」と「日本人」の違いと使い分け方、まとめ
「邦人」と「日本人」の違いと使い分け方、そして使い分ける理由。このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。
最後にもう一度、このページで解説した内容のポイントを以下にまとめます。頭の中の整理にお役立てください。
- 【使い分けの理由】諸外国人の中で日本人あることを強調する際に「邦人」を使う。
- 【使い分けの違い】マスコミと公用文では「邦人」と「日本人」の使い分け方が異なり、公用文では「邦人」と「日本人」が混在するケースもある。