「十分」と「充分」の違いと使い分け方を理解する3つのポイント

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「十分」と「充分」。これら二つの言葉は、多くの辞書では「物事が満ち足りて不足や欠点がない状態」をあらわすまったく同じ意味を持つ言葉として解説されているだけで、その違いや使い分け方に触れていません。

辞書で調べてもわからない「十分」と「充分」の違いと使い分け方。これらを理解するポイントと、どちらを使うべきか迷った場合の対処法をこのページではまとめています。

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「十分」と「充分」の違いと使い分け方をシンプルに理解する3つのポイント

  1. 十分:数値で計測でき、他者が「じゅうぶん」と判断できる場合(客観的)
  2. 充分:数値で計測できず、本人しか「じゅうぶん」と判断できない場合(主観的)
  3. どちらを使うべきか迷った場合は「十分」を使う

以上が「十分」と「充分」の違いと使い分け方を正しく理解する際に重要となる3つのポイントです。このポイントだけで理解できた方はここまでお読みいただければ充分です。

もう少し詳しい説明を読みたい。確かな知識を頭に入れておきたいという方は、3つのポイントをそれぞれ詳しく解説いたしますので引き続きご笑覧ください。

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「十分」と「充分」の違いと使い分け方をより深く理解する3つのポイント

「十分」と「充分」は同じ意味を持つ言葉ですが、実生活の中では主観と客観の区別によって使い分けがなされています。

しかし、そもそも「主観と客観の区別」とはどういうことなのでしょうか。以下に、その一般的な使い分け方を具体例を示しながらご説明します。

「十分」を用いるケース

次に述べるような人を想像してみてください。お酒が大好きで、何十年にわたって毎晩のように大量のお酒を飲み続けてきた結果、病気になってしまった人を。

その人は、これ以上お酒を大量に飲み続けたら取り返しのつかない病気になるとお医者さんから厳しく注意されました。にも関わらず好きなお酒をやめることができません。

そこで主治医とよくよく話し合った結果、一週間に一度。一回、350mlの缶ビールを一本までなら飲んでも良いということになりました。

この人がお酒を飲む量の上限=じゅうぶんな量は、赤い字で示した通りすべて数字で決められています。

数字で決められているので、この人以外の人でもどれくらいのお酒を飲んだらじゅうぶんな量なのか。それを超えると飲みすぎなのか判断がつきます。

数値で計測でき、他者が「じゅうぶん」だと客観的に判断できる場合がこれに当たります。

このような場合に用いるのが「十分」です。誰もがこの人に対して「十分に飲んだから、お酒はそこまでにしておきなさい」と言うことが出来ます。

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「充分」を用いるケース

上に述べたお酒が大好きな人の話の続きです。

この人はお酒が大好きで、つい最近までは毎晩のように大量に様々なお酒を飲んできました。まるでご飯を食べるように、飲酒が日常茶飯事化していました。

そんな人にとって、「一週間に一度。一回、350mlの缶ビールを一本」などというルールはあまりにも厳しすぎます。これくらいでは満足できません。

その人の健康を心配する家族は「一週間に一度。一回、350mlの缶ビールを一本」で十分だと説得しても、その人本人はこれだけでは満足できません。その人は心から満足するまでじゅうぶんに飲みたいはずです。

この場合の、本人が主観的にしか決められない満足感。すなわち数値で計測できず、本人以外に「じゅうぶん」と判断できない場合に用いるのが「充分」です。

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「十分」と「充分」、どちらを用いるか迷った場合

上に述べた具体例は主観と客観の判断がつきやすいケースです。しかし、実際には主観と客観の判断がつきにくいケースが少なくありません。そして主観と客観の判断がつけられなければ「十分」と「充分」のどちらを使うのかを決めることができなってしまいます。

そのような場合には「十分」を使いましょう。

理由は明白です。文化庁が「「充分」はあて字である」こと、「漢字を使うとしたら「十分」を採るべき」であることを明記しているからです。

以下、文化庁による「十分」と「充分」についての言及の全文を引用します。

「十分」と「充分」――いずれも普通に行なわれている。憲法では「充分」を使っている。本来は「十分」であって,「充分」はあて字である。また,「十」のほうが字画も少なく,教育漢字でもあり,「充」はそうでないことなどからも,漢字を使うとしたら「十分」を採るべきであろう。しかしながら,最近では,この語はかな書きにする傾向がある。公用文や「文部省刊行物表記の基準」などでは,かな書きを採り,「十分」と書くことを許容している。

出典:文化庁「語形の「ゆれ」の問題 漢字表記の「ゆれ」について(報告)3」

【コラム】日本国憲法第三十七条では「充分」が用いられていますが、これ以外にも63の法令で「充分」という表記が使われています。最近の例では、平成28年(2016年)12月に施行された「人事院規則一〇―一五(妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等)」にも「充分」が使われています。
一方で「十分」を使っている法令は1000を超えています。公用文では「十分」に統一されているわけではないものの「十分」を使うことが一般的なようです。
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「十分」と「充分」の違いと使い分け方、まとめ

通常は漢字の使い方にとても厳格な法令文の中ですら、使い分け方に曖昧さが残る「十分」と「充分」という二つの言葉。これら二つの言葉を、わたしたちが普段づかいの中で使い分けることが難しいのは当然です。

よって、「十分」と「充分」の違いについては、あまり深く考えず以下の3つのポイントでシンプルに理解するのが良さそうです。

  1. 十分:数値で計測でき、他者が「じゅうぶん」と判断できる場合(客観的)
  2. 充分:数値で計測できず、本人しか「じゅうぶん」と判断できない場合(主観的)
  3. どちらを使うべきか迷った場合は「十分」を使う
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