ビジネスの実務で避けては通れない三つの言葉「グロス」「ネット」「マージン」。ツボさえおさえてしまえば三つの言葉の違いを区別するのはとても簡単です。
そこでこのページではビジネス以外での「グロス」や「ネット」の使い分け方なども紹介しながら「グロス」「ネット」「マージン」の違いを理解するツボをお伝えしています。
このページの目次
まずは「グロス」と「ネット」の関係をしっかりと理解する
「グロス」「ネット」「マージン」の違いを区別する最短ルートは、まずは「グロス」と「ネット」それぞれの言葉の意味と、二つの言葉の関係をしっかりと理解することです。
「グロス」と「ネット」それぞれの言葉の意味
【グロス】総計
【ネット】正味
参考:岩波書店『広辞苑』
「グロス」と「ネット」は、それぞれ日本語にすると「総計」と「正味」。日本語になおしても違いがはっきりと見えてきません。
しかし「グロス」と「ネット」、または「総計」と「正味」の違いはスーパーやコンビニで売っているポテチなどのスナック菓子を思い浮かべると理解しやすくなります。
「グロス」と「ネット」の関係を具体的にイメージできるからです。
「グロス」と「ネット」の関係をポテチで具体的に理解する
ポテチの袋の裏側にはたいがい「NET80グラム」などと印刷されています。見覚えありませんか?この「NET」こそがあなたが頭を悩ませている「ネット」です。
ポテチの袋の裏側にある「NET=ネット」とは、ポテチそのものの重さ。言い方を変えると食べることが出来る部分だけの重さです。これが「ネット」です。
そしてポテチの袋、すなわち食べることができない部分の重さを、ポテチそのものの重さに加えた合計の重さ、これが「グロス」です。
この「グロス」と「ネット」の関係を図解で示したのが以下の図と、その下にある「グロス」と「ネット」の関係をあらわした公式です。
グロス = ネット + 袋の重さ
いよいよ本題!「グロス」「ネット」「マージン」の違い
広告業界の「グロス」「ネット」「マージン」の違い
コンビニのポテチで「グロス」と「ネット」の区別の基本を理解したところで、いよいよ本題に入ります。「グロス」「ネット」「マージン」の違いです。
ここでは特に「グロス」「ネット」「マージン」という三つの言葉を最も多用する広告業界を例にとって説明をすすめます。
新聞や雑誌などの広告媒体には定価設定があることはご存知ですね?定価設定とは、広告を出す企業が支払う金額のこと。この定価設定が「グロス」です。
そして広告代理店はこの「グロス」から20%前後の手数料を受け取ります。この20%前後の手数料が「マージン」。
「グロス」から「マージン」を差し引いた残りを新聞社や雑誌社などが受け取ります。この部分が「ネット」です。
図解すると以下の通りです。
「グロス」「ネット」「マージン」の違いをお金の流れで理解する
広告業界の「グロス」「ネット」「マージン」の違いを具体的にイメージしながら理解できるよう、お金の流れの点から整理してみましょう。
新聞の広告欄に広告を出して自社製品を宣伝したいと考えている企業、すなわち広告主が広告費として支払う金額を100万円とします。
この広告主が支払う100万円がグロスです。
この100万円は一旦は広告代理店が受け取りますが、広告代理店は自分たちの取り分である手数料の20万円を手元に残し、80万円は新聞社に渡します。
このとき、新聞社が受け取る80万円がネット。
広告代理店が自分の取り分として手元に残した20万円がマージンです。
この関係を図解すると以下の通りです。
広告業界以外の「グロス」と「ネット」の違い
「グロス」と「ネット」という言葉は、広告業界の営業でよく用いられる言葉ではありますが、広告業界に限定した専門用語ではありません。他の業界でも使われています。
広告業界以外の「グロス」と「ネット」の違いを知ることは、「グロス」と「ネット」の違いの本質を理解することにつながります。そして、本質さえ理解できれば「グロス」と「ネット」の違いにもう迷うことはありません。
以下に広告業界以外の「グロス」と「ネット」をご紹介します。
ゴルフの「グロス」と「ネット」の違い
ゴルフでは強いプレイヤーと弱いプレイヤーのバランスを取るためにハンディキャップが設けられています。
このハンディキャップにからめて、ゴルフの世界でも「グロス」と「ネット」という言葉が使われています。
ハンディキャップなしの総スコアが「グロス」。ハンディキャップを差し引いたスコアが「ネット」です。
マラソンの「グロス」と「ネット」の違い
大人数が参加するマラソン大会では先頭を走る走者と集団の末尾を走る走者とでは、スタートラインに立つタイミングが大きく異なってしまいます。
そこでスタートの合図から走者がゴールするまでの時間をグロス。その走者がスタート地点に到達したところからゴールまでの時間をネットと分類しています。
なお、マラソン大会の「グロス」と「ネット」とでは「ネット」の方が公平のように見えますが、実際の大会の運営にあたっては「グロス」が採用されています。
オフィスなどの賃貸不動産の「グロス」と「ネット」の違い
総務部の方以外、目にする機会はあまりないとは思いますが賃貸オフィスにも「グロス」と「ネット」が使われています。
トイレ、給湯室、廊下、エレベータホール、階段などそのビルに入居している他社と共有するスペースを含めた面積を「グロス」。
自社だけで占有できるスペースを「ネット」と分類しています。
「グロス」「ネット」「マージン」の違い、まとめ
「グロス」「ネット」「マージン」の違い、おわかりいただけましたでしょうか。最後にもう一度、ある企業が100万円で新聞広告を出した場合、その100万円がどのように「グロス」「ネット」「マージン」に分けられるのかをまとめます。
グロス | 100万円 | 広告主が支払う |
ネット | 80万円 | 新聞社が受け取る |
マージン | 20万円 | 広告代理店が受け取る |