「食料」と「食糧」はどちらも「しょくりょう」と読み、食べ物のことですが、以下のような違いがあります。
- 食料:人間や動物などの栄養になるものとして口に入れられる食べ物
- 食糧:生きていくために必要な食べ物。主食となる米や麦など、または嗜好品ではない食べ物
このページでは「食料」と「食糧」の違いについて、詳しい意味と具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。
「食料」「食糧」の意味と例文
まず、「食料」と「食糧」の辞書での意味を確認しておきましょう。
【食料】
食べ物。【食糧】
(主食となる)食べ物。出典:『明鏡国語大辞典』
「主食となる」という点に違いがあるようですが、これだけでは適切に使い分けをするのは難しいですね。以下でより詳しい意味や例文を見ながらそれぞれの違いを確認していきましょう。
「食」「料」「糧」の漢字の意味
言葉の意味を知るときには、漢字の意味を知るとよりわかりやすくなるので一つずつ見ていきたいと思います。
まずは、「食料」「食糧」のどちらにも使われている「食」からです。「食」の上側にある屋根のような形は蓋で、その下にあるのは皿に盛られた食べ物を表しています。「食」は、盛られた食べ物に蓋をした様子で、食べることや食べ物という意味を持っています。
「料」は「米+斗(ます)」からできています。米を斗(ます)で「はかる」ことを意味していましたが、米だけではなく様々なものの重さや分量をはかるときに用いられるようになりました。
「糧」は、「米+量」からできています。「量」の下側は穀物を入れる袋で、上にある「日」は漏斗(じょうご:口の狭い容器に粉や粒上のものや液体を注ぎ入れるために使う道具)です。「糧」は、漏斗を使って米などを袋の中に入れる様子を表しています。かつて租税として穀物が徴収されていたことから、分量をはかるときに、袋に入れる必要があったのです。租税を納めなければ罰せられることから、「糧」は生きていくために必要な物を指すようになりました。
では、それぞれの漢字の意味がわかったので、「食料」と「食糧」について詳しく見ていきましょう。
「食料」の意味と例文
「食料」は、それぞれの漢字の意味を組み合わせると「食べ物+はかる」となります。食べ物を売ったり買ったり作ったりするときには「はかる」ことがつきものですよね。そのようなことから「食料」は、食用にする物全般や食べ物として使う材料という意味を持っています。例文を見てみましょう。
・食料品売り場は地下一階にございます。
・1500万年にわたって、人類は他の動物の食料を掠奪しつづけてきた。
「台所中の食料」といえば、米、パン、野菜、果物などさまざまなものがありますよね。それらすべてが「食料」です。また、デパートなどの食料品売り場には、総菜やケーキ、お菓子などが売られていますが、それらもすべて「食料」です。
更に、「食料」は人間の食べ物に限ったものだけではありません。「動物の食料」のように、生き物が食べ物としている虫や小動物、植物も「食料」ですし、人間の食べ残しも動物にとって「食料」となる場合もあります。誰かや何かの栄養になるものとして口に入れられるものはすべて「食料」と言えます。
「食糧」の意味と例文
では、次に「食糧」の意味を見てみましょう。「食糧」は、漢字の意味を組み合わせると「食べ物+生きていくために必要」となります。さきほどの「食料」と比べると、より強い必要性のある食べ物という感じがするのではないでしょうか。生きていくために必要な食べ物とはどのようなものでしょうか。例文を見ながら確認していきしょう。
・紛争や武力衝突などの緊急事態が発生した場合はいち早い食糧支援が必要だ。
・国連世界食糧計画は「学校給食プログラム」を開発途上国で実施しています。
一つ目の例文の「食糧危機」が指すものは、主食となる米や麦、トウモロコシ、ジャガイモなどです。自然災害は農業に大きな影響を与え、中でも深刻な問題が主食となる作物の生産が脅かされることです。そのため自然災害による「食糧危機」の場合には「食糧」を使うのが一般的です。
紛争時などに支援が必要となる食べ物は米や麦だけではありませんが、二つ目の例文のように「食糧」が使われます。これは、生きていくために必要な食べ物という意味が「食糧」にはあるからです。
三つ目の例文の「国連世界食糧計画」のように、紛争や災害、気候変動等の影響による世界の食糧問題の解決に取り組む国際援助機関は、その名称に「食糧」を用いています。他にも「国連世界食糧計画」もあります。
このように「食糧」は、生きていくために必要な食べ物という点がポイントで、主食である米や麦などを指す場合と、嗜好品ではない必要に迫られたときの食べ物を指す場合があります。
「食料」「食糧」の違い、まとめ
「食料」と「食糧」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。最後にもう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にお役立てください。
- 食料:人間や動物などの栄養になるものとして口に入れられる食べ物
- 食糧:生きていくために必要な食べ物。主食となる米や麦など、または嗜好品ではない食べ物