「給付」「支給」は、どちらも「金品を払い渡すこと」ですが、誰が、何をどのように払い渡すのかという点で違いがあります。その違いを簡潔にまとめると以下のようになります。
誰が | 何をどのように | |
給付 | 国・公共団体などが | 支払う規定や義務のある金品を手続きに基づいて |
支給 | 役所・会社・個人などが | 金品を手続きなしでも |
このページでは「給付」「支給」の違いについて、詳しい意味と具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。
「給付」「支給」の意味と例文
まず、「給付」「支給」の辞書での意味を確認しておきましょう。
【給付】
1.国・公共団体などが、金品を支給すること。
2.債権の目的となっている、債務者の行為。たとえば売主が目的物を引き渡したり、被用者が労務を提供したりする行為をいう。【支給】
金銭・物品をあてがい渡すこと。出典:『明鏡国語辞典』
辞書の説明だけでは意味の違いがはっきりとはわからないので、より詳しい意味や例文を見ながらそれぞれの違いを確認していきましょう。
「給」「付」「支」」の意味
言葉の意味を知るときには、漢字の意味を知るとよりわかりやすくなりますので一つ一つ見ていきたいと思います。
まず、「給付」「支給」のどちらにも使われている「給」からです。
「給」の左側の部分は撚り合わせた糸を、右側の「合」は蓋のついた容器です。蓋と容器がぴったりと合わさることから「合う」という意味を表しています。「糸+合」で作られた「給」は、糸の欠けた所を継ぎ合わせる様子で、ここから「足らないところに丁度いいものをあてがう」や「与える」という意味を持つようになりました。
次に「付」ですが、左側の部分は横から見た人の形を、右側の「寸」は右手の手首に親指をあてて脈をはかる様子を表しています。「付」は、手をぴたりと他人の体にくっつけることや、人に手で物を付けることで、そこから「くっつける」や「手渡す」という意味を持つようになりました。
最後に「支」です。「支」の上にある「十」は竹や木の枝を、下の「又」は人の手です。この二つを組み合わせた「支」は、人が手に竹や木の枝を持っている様子を表しています。Y型の枝を当ててつっかい棒のように使うと、物などを倒れないようにできることから「ささえる」という意味を持っています。また、分かれた形の枝の様子から「分かれる・分ける」という意味もあります。
では、それぞれの漢字の意味がわかったので、「給付」「支給」について詳しく見ていきましょう。
「給付」の意味と例文
「給付」は、それぞれの漢字の意味を組み合わせると「足らないところに丁度いいものをあてがう+手渡す」となります。「給付」は、「くっつける」「手渡す」という意味の「付」が使われていることから、きちんと届くように払われるという点が重要な言葉です。
そのため、国や公共団体など支払いの義務をきちんと履行しなければならない機関からの払い渡しには「給付」が用いられます。また、きちんと届くためには規定に従って、手続きを踏む必要があります。「給付」は、きちんと手元に届ける義務のある金品を、正しい手続きに基づいて支払われる場合に用いられる言葉です。
例文を見てみましょう。
・歯科・眼科が公的保険対象外となっている国は多いが、日本では給付対象だ。
年金は国が規定に基づいて額を定め、適切な手続きを踏んで支払われるものなので「給付」を使います。また、公的保険も国の規定によって支払われるものなので「給付」が適切です。
「支給」の意味と例文
「支給」は、それぞれの漢字の意味を組み合わせると「分けて支え、足らないところに丁度いいものをあてがう」となります。「支給」は「分けて支える」ことに焦点が当たっており、元金となるものや財源から分けて払い渡す場合に用いられます。
例文を見てみましょう。
・ロバートの母親は月約三百ドルを彼に支給することを決めた。
ボーナスは利益を配分して支払われるものなので「支給」を使います。また、「ロバートの母親」のように個人が支払いをする場合にも「支給」を使うことができます。
「支給」は、「給付」のように必ずしも規定や手続きが必要なわけではなく、足りないところに金品を分け与えるさまざまな場面で使うことができます。また、個人からの支払いの場合にも使えるように使用範囲が広いのも特徴です。
「支給」のほうが意味が大きく、「給付」はその中に入っていると考えておくといいと思います。
「給付」「支給」の違い、まとめ
「給付」「支給」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。最後にもう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にお役立てください。
誰が | 何をどのように | |
給付 | 国・公共団体などが | 支払う規定や義務のある金品を手続きに基づいて |
支給 | 役所・会社・個人などが | 金品を手続きなしでも |