「進呈」「贈呈」「謹呈」「献上」の違いと使い分けの例文

「進呈」「贈呈」「謹呈」「献上」は、どれも「人に物を差し上げること」という意味ですが、少しずつ意味が違い、使われる場面も異なります。その違いを簡単にまとめると以下のようになります。

 意味場面
進呈物を差し上げる軽いやりとりを含む広い場面
贈呈祝福や感謝の気持を込めて物を差し上げる形式ばった晴れがましい場面
謹呈どうぞお納めくださいという気持ちを込めて差し上げる相手に敬意を表し礼儀正しくする場面
献上物を高くささげもったイメージで差し上げる天皇や王様など身分の高い相手に対する場面

このページでは「進呈」「贈呈」「謹呈」「献上」の違いについて、詳しい意味と具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。

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「進呈」「贈呈」「謹呈」「献上」の意味と例文

まず、「進呈」「贈呈」「謹呈」「献上」の辞書での意味を確認しておきましょう。

【進呈】人に物を差し上げること。進上。
【贈呈】人に物を贈ること。贈り物を差し上げること。進呈。
【謹呈】つつしんで差し上げること。
【献上】身分の高い人に品物などを差し上げること。

出典:『明鏡国語辞典』

辞書の説明だけでは違いや使い分け方はよくわかりません。以下でより詳しい意味や例文を見ながらそれぞれの違いを確認していきましょう。

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「進呈」「贈呈」「謹呈」

まず、「呈」という漢字が共通して使われている「進呈」「贈呈」「謹呈」の三つの言葉について詳しく見ていきます。

「呈/進/贈/謹」の漢字の意味

言葉の意味を知るときには、漢字の意味を知るとよりわかりやすくなりますので、分解して一つ一つ見てみましょう。

まず「呈」ですが、下にある「王」は突き出た階段を表しています。それに「口」が加わって、「口から突き出る→口でまっすぐに述べる」という意味を持っています。そこから、まっすぐに差し出した文書や物にまで使われるようになり「差し出す・差し上げる」という意味でも使われるようになりました。

次に「進」です。「進」は移動や距離を表す「辶(しんにょう)」と鳥を表す「隹(とり)」からできていて、鳥が飛ぶように「すすむ」ことを表しています。

「贈」は「貝+曽」からできています。「貝」はかつてお金として使われており、「お金・宝物」という意味を表しています。「曽」は、コンロの上に蒸し料理をするときに使う蒸籠(せいろう)を重ねた様子で、上へ上へと重ねるという意味を持っています。「貝+曽」からなる「贈」は、宝物を重ねておくる、つまり「プレゼントする」という意味です。

「謹」は、右側の字の上半分は人が腰に黄色の玉を付けている様子を、下半分は固めた土を表していて、「粘土をねりこめる」という意味を持っています。「謹」は、その左側に「言」が付いており、言葉をねりこめて「控えめにする」という意味を表します。

「進呈」「贈呈」「謹呈」に使われているそれぞれの漢字の意味がわかりましたので、それぞれの意味と使い方を確認しましょう。

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「進呈」の意味と使い方

「進呈」は「すすんで+差し出す・差し上げる」となり、誰かに物をあげるという意味です。「差し上げる」という意味があるのでやや丁寧ですが、「進呈」「贈呈」「謹呈」「献上」の中では最もカジュアルな言葉で、軽い気持ちでのやりとりにも使われます。

・参加者全員に粗品進呈
・君にこの本を進呈しよう。

粗品進呈やポイント進呈のように、高価なものでなくても「進呈」を使うことができます。また「あげよう」と言う代わりに「進呈しよう」とも言え、使用できる場面の広い言葉です。

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「贈呈」の意味と使い方

「贈呈」は「プレゼントをする+差し出す・差し上げる」となり、贈り物としてあげる場合に用います。以下の例文のように、ただあげるというよりも、祝福や感謝などの気持を込めて物をおくる場合に用いられます。また、結婚式や授賞式のような形式ばった晴れがましい場で物をおくるときに使われます。

・新郎新婦による花束贈呈です。
・人命救助に対する感謝状贈呈式が行われた。

「謹呈」の意味と使い方

「謹呈」は「控えめにする+差し出す・差し上げる」となり、相手に対する敬意の気持ちを持って、礼儀正しく、つつましく物をあげる場合に用います。「どうぞお納めください」のような気持が込められた言葉です。

・拙著を謹呈させていただきます。貴館の蔵書に加えていただければ幸いです。
・お得意様に新商品のサンプルセットを謹呈いたします。

本の著者が本をあげるとき、「謹呈 〇〇」と自分の名前をサインしておくる場合もあります。また、本だけではなく物をあげるときに「謹呈」と書かれた熨斗(のし)を付けることもあります。

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「献上」

では、「献上」について詳しく見ていきます。

「献/上」の漢字の意味

まず、「献上」に使われている「献」と「上」の漢字の意味からです。

「献」は、もととは「獻」と書かれていました。左側の字は虎の飾りのついた容器を表していて、右側は動物の犬です。犬の肉を容器に盛って神様にお供えする様子から「ささげる」という意味になりました。

「上」は二本の線から作られた文字で、下の長い線が基準線で、上にある短い線で位置を表しています。「上」の漢字の場合、短い線は基準線より上の位置にあります。だから「上」という意味です。反対に基準線の下に短い線があるのが「下」という漢字です。このように「上」は、基準に対して上であるという位置や方向を表しています。

「献上」の意味と使い方

「献上」の漢字の意味を組み合わせると「ささげる+上に」となります。「献上」は、自分よりはるかに身分が上の相手に物をおくるときに使う言葉です。はるかに身分が上とはどんな相手かというと、天皇や皇族、王様や主君などです。「献上」には、自分の身体を低くして、贈り物を高くささげもって差し上げるようなイメージがあります。

・陛下に名菓を献上する。
・その船は幕府への献上品を多数積んでいた。

「進呈」「贈呈」「謹呈」「献上」の違い、まとめ

「進呈」「贈呈」「謹呈」「献上」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。最後にもう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にお役立てください。

 意味場面
進呈物を差し上げる軽いやりとりを含む広い場面
贈呈祝福や感謝の気持を込めて物を差し上げる形式ばった晴れがましい場面
謹呈どうぞお納めくださいという気持ちを込めて差し上げる相手に敬意を表し礼儀正しくする場面
献上物を高くささげもったイメージで差し上げる天皇や王様など身分の高い相手に対する場面