「んだず」「めんごい」「おしょうしな」など、山形弁には素朴であたたかい響きの言葉がたくさんあります。
山形県は内陸と庄内で方言が大きく異なり、同じ県内でも「そうだね」の言い方が地域ごとに変わるほど多彩です。
この記事では、山形弁の地域別の特徴から日常会話フレーズ、語尾、感情表現、かわいい・面白い方言、会話例やメール・チャットでの使い方まで、例文たっぷりでわかりやすく解説します。
山形弁の地域別の特徴
山形弁は、大きく「庄内方言」と「内陸方言」の2つに分けられます。
さらに内陸方言は「村山方言」「最上方言(新庄弁)」「置賜方言」の3つに分かれるため、県内には合わせて4つの方言圏があると考えるとわかりやすいです。庄内方言は秋田や青森と同じ北奥羽方言に、内陸方言は宮城や福島と同じ南奥羽方言に分類されます。
村山地方(山形市・天童市・寒河江市など)
県庁所在地の山形市を含む村山地方の方言は、いわゆる「山形弁」としてテレビなどで紹介されることが多い言葉です。語尾の「〜ず」「〜べした」が代表的で、「そうだ」は「んだず」「んだべした」と言います。アクセントの区別がほとんどない無アクセント地域であることも特徴で、のんびりとした柔らかい話し方に聞こえます。
- 例文:んだず、今日はいきなり寒いずね。
- 例文:んだべした、芋煮会は河原でやるもんだべ。
- 例文:天童さ将棋の駒見に行ぐべ。
最上地方(新庄市・舟形町・最上町など)
最上地方の方言は「新庄弁」とも呼ばれます。内陸方言でありながら、隣接する庄内や秋田の影響も受けているのが特徴です。「そうだ」は「んだじゅー」「んだにゃー」と言い、語尾の「じゅー」「にゃー」に独特のかわいらしさがあります。新庄市周辺には「〜あんす」という丁寧な言い方も残っています。
- 例文:んだにゃー、雪がずいぶん積もったにゃー。
- 例文:んだじゅー、明日も早ぐ起ぎねばなんねじゅー。
置賜地方(米沢市・南陽市・長井市など)
米沢藩の城下町を中心とする置賜地方の方言は、上品で丁寧な言い回しが残っていることで知られます。「ありがとう」を意味する「おしょうしな」は、置賜を代表する言葉です。「そうだ」は「んだっそ」「んだごで」と言い、過去の「〜た」を「〜ちゃ」と言う独特の表現もあります。米沢周辺では「〜やる」「〜なる」といった敬語の助動詞も使われます。
- 例文:いつもおしょうしな。助かったっそ。
- 例文:んだごで、あそこの米沢牛はうまいごで。
庄内地方(鶴岡市・酒田市など)
日本海に面した庄内地方の方言は、内陸とは別のグループに属し、北前船による上方(関西)との交流の影響も受けてきました。「そうだ」は「んだのー」と言い、語尾の「〜の」がやわらかく響きます。「ありがとう」は「もっけだの」と言い、理由を表す「〜さげ」も庄内でよく聞かれる表現です。
- 例文:んだのー、今年のだだちゃ豆はうめのー。
- 例文:もっけだの。雨降ってるさげ、気つけで帰れの。
基本の挨拶・日常会話フレーズ一覧

山形弁でよく使われる基本的な言葉を一覧表にまとめました。
地域によって言い方が異なるものは、主に使われる地域も記載しています。
| 標準語 | 山形弁 | 意味・使い方 |
|---|---|---|
| こんばんは | おばんです | 夕方以降の挨拶。県内全域で使われます |
| ありがとう | おしょうしな | 置賜地方を中心に使われる感謝の言葉です |
| ありがとう | もっけだの | 庄内地方の感謝の言葉です |
| そうだ | んだ/んだず | 相づちの基本形。「ず」が付くと村山風になります |
| そうだね | んだのー | 庄内地方の相づちです |
| そうだよね | ほだず/ほだな | 内陸でよく使う同意の言葉です |
| だから | んだがら | 「そうだから」「だよね」の意味でも使います |
| どうして | なして | 理由を尋ねるときに使います |
| わからない・だめ | わがんね | 「わからない」のほか「だめだ」の意味もあります |
| よかった | いがった | 安心したときや喜ぶときに使います |
| おいしい | うめ/んめ | 食べ物をほめるときの定番です |
| とても | いきなり | 「急に」ではなく「とても」の意味で使います |
| かわいい | めんごい | 子どもや動物などに使います |
| 恥ずかしい | しょす | 照れくさいときにも使います |
| 怒る | ごしゃぐ | 「ごしゃがれる」で「怒られる」になります |
| すねる | むつける | 子どもがふてくされる様子に使います |
| 疲れた | こわい | 「怖い」ではなく「疲れた」の意味です |
| 怖い | おっかね | 恐怖を表す言葉です |
| もったいない | いだましい | 物を粗末にするときに使います |
| 捨てる | なげる | 「投げる」ではなく「捨てる」の意味です |
| 持つ | たがぐ | 荷物などを持つときに使います |
| くっつく | ねっぱる | ご飯粒やテープがくっつく様子です |
| 水に浸す | うるがす | 食器や豆を水に浸けておくときに使います |
| 払い落とす | ほろぐ | 雪やほこりを払うときに使います |
| くすぐったい | もちょこい | 体をくすぐられたときなどに使います |
| 濡れて気持ち悪い | やばつい | 靴下や服が濡れて不快なときに使います |
| はかどる | はかいく | 仕事や作業が順調に進むことです |
| 腐る | あめる | 食べ物が傷んだときに使います |
| 赤ちゃん | おぼこ | 小さな子ども全般にも使います |
| お父さん | だだちゃ | 庄内の言葉で「だだちゃ豆」の由来とされます |
| 結婚式 | むがさり | 村山地方を中心に使われる言葉です |
| 仲間に入れて | かだらせで | 「かだる」は「仲間に入る」の意味です |
| 少し | ちぇっと | 庄内地方でよく使う言葉です |
| 行こう | あべ | 「一緒に行こう」と誘うときに使います |
| 食べて | け | 「食え」が縮まった形で、勧めるときに使います |
| 寒い | さみ | 冬の挨拶代わりにも使います |
| 冷たい | しゃっこい | 水や手などが冷たいときに使います |
| 嫌だ | やんだ | 断るときや不満を表すときに使います |
| 驚いた | たまげだ | びっくりしたときの定番表現です |
| 意気地なし | ずぐなし | 怖がりな人をからかうときに使います |
表の言葉を使った実践的な例文を紹介します。
- 例文:おばんです。遅ぐにわりっすね。
- 例文:この漬物、いきなりうめず。
- 例文:なして昨日来ねがったの?
- 例文:今日は雪かきしてこわいっす。
- 例文:まだ食べられるのになげるのはいだましいべ。
- 例文:その荷物、おれがたがぐがら。
- 例文:鍋はうるがしておいでけろ。
- 例文:コートの雪、ほろってから入ってけろ。
- 例文:雨で靴下までやばつい。
- 例文:ほら、まんず芋煮け。あったまっから。
すぐに使える短い会話一言集

山形弁には、相づちや返事に使える短い一言がたくさんあります。会話の中でさっと使えるものを集めました。
| 方言の一言 | 標準語 | 使う場面 |
|---|---|---|
| んだ! | そうだ! | 相手の話に同意するとき |
| んだず! | そうだよ! | 村山地方での強めの同意 |
| んだのー | そうだねえ | 庄内地方でのやわらかい相づち |
| んだにゃー | そうだね | 最上地方での相づち |
| んだごで | そうだよ | 置賜地方での相づち |
| ほだな | そうだな | 内陸で考えながら同意するとき |
| いがったー | よかった | 安心したとき |
| おしょうしな | ありがとう | お礼を言うとき(置賜) |
| もっけだの | ありがとう | お礼を言うとき(庄内) |
| わがんね | わからない・だめだ | 困ったときや断るとき |
| なしてや | どうしてよ | 不思議に思ったとき |
| あべ | 行こう | 誘うとき |
| け | 食べて | 食べ物を勧めるとき |
| やんだー | 嫌だ | 嫌がるとき |
| たまげだ! | びっくりした! | 驚いたとき |
| しょすー | 恥ずかしい | 照れたとき |
| めんごいなー | かわいいね | 子どもや動物を見たとき |
| こわいー | 疲れた | 仕事終わりなど |
| おばんです | こんばんは | 夕方以降に会ったとき |
| まんず | まず・まあ | 話の切り出しや感心したとき |
一言を使った会話の例文です。
- 例文:「今日の芋煮、いがったなー」「んだず!」
- 例文:「これ、かわいい犬だべ」「めんごいなー」
- 例文:「この服似合ってるよ」「しょすー」
- 例文:「一緒に帰っべ」「あべあべ」
日常の何気ない会話で使う方言一覧

日常のさまざまな場面で、山形の人が自然に口にする言い回しをまとめました。
| 場面 | 方言 | 標準語 |
|---|---|---|
| 朝起きたとき | はえぐ起ぎろず | 早く起きなさい |
| 朝ごはん | まんずご飯け | まずご飯を食べて |
| 天気(寒い朝) | 今朝はいきなりさみず | 今朝はとても寒いね |
| 天気(雪) | 雪いっぱい降ったなー | 雪がたくさん降ったね |
| 雪かき | 雪かぎしてこわい | 雪かきをして疲れた |
| 通勤 | 道凍ってっから気つけろ | 道が凍っているから気をつけて |
| 職場(挨拶) | おはよっす | おはようございます |
| 職場(作業) | 今日ははかいぐなー | 今日ははかどるね |
| 職場(相談) | ちぇっと聞いでけろ | 少し聞いてください |
| 買い物 | これなんぼ? | これはいくら? |
| 買い物(量) | よっぱら買ったな | うんざりするほど買ったね |
| 料理 | 豆うるがしておぐ | 豆を水に浸しておく |
| 片づけ | これなげでいい? | これを捨ててもいい? |
| 掃除 | ほごり、ほろってけろ | ほこりを払ってください |
| 食事 | このそば、いきなりうめ | このそばはとてもおいしい |
| 帰宅 | ただいまー、さみがったー | ただいま、寒かった |
| 雨の日 | 濡れでやばつい | 濡れて気持ち悪い |
| 家族と | おぼこ寝だが? | 子どもは寝たか? |
| 寝る前 | はえぐ寝ろず | 早く寝なさい |
| 夜の挨拶 | おばんです | こんばんは |
日常会話の例文です。
- 例文:今朝はいきなりさみず、手袋持って行げよ。
- 例文:雪かぎしたっけ、腰いでくてこわい。
- 例文:このペットボトル、なげでいいべか?
- 例文:今日は仕事はかいぐさげ、早めに帰れっかもしんね。
語尾でわかる山形弁の特徴

山形弁の最大の特徴は、地域ごとに異なる語尾です。
同じ「そうだ」でも、語尾を聞けば出身地がわかると言われるほどです。
村山地方の語尾「〜ず」「〜べした」
村山地方では、言い切りや強調に「〜ず」を付けます。「〜だず」「〜するず」のように使い、「〜だよ」に近い意味です。また、「〜べ」に「した」を付けた「〜べした」は「〜でしょう」「〜だよね」と同意を求めるときによく使います。
- 例文:今日は早ぐ帰るず。
- 例文:そんなの当たり前だべした。
- 例文:このラーメン、冷たいのがうまいんだず。
最上地方の語尾「〜じゅー」「〜にゃー」
最上地方(新庄周辺)では「〜じゅー」「〜にゃー」という語尾が特徴的です。村山の「〜ず」が変化したような響きで、柔らかく親しみのある印象を与えます。
- 例文:明日は雪だじゅー。
- 例文:んだにゃー、もう冬だにゃー。
置賜地方の語尾「〜そ」「〜ごで」「〜ちゃ」
置賜地方では「〜そ」「〜ごで」が「〜だよ」に近い語尾として使われます。さらに、過去を表す「〜た」を「〜ちゃ」と言うのも置賜の大きな特徴です。
- 例文:あそこの店、昨日行っちゃっそ。
- 例文:んだごで、米沢は雪多いごで。
庄内地方の語尾「〜の」「〜さげ」「〜ろ」
庄内地方では、語尾に「〜の」「〜のー」が付き、やさしく穏やかな印象になります。理由を表す「〜さげ(〜だから)」は、上方との交流の名残とも言われます。命令や勧めの「〜れ」「〜ろ」に「の」を付けて「〜れの」と言うと、やわらかい言い方になります。
- 例文:雨降ってるさげ、傘持っていげの。
- 例文:んだのー、今日はあっちぇのー。
県全域で使われる語尾「〜べ」「〜っす」
推量や意志・勧誘の「〜べ」は県内の広い地域で使われます。「行ぐべ」で「行こう」、「雨降るべ」で「雨が降るだろう」の意味になります。また、「〜っす」は丁寧語として使われ、目上の人にも使える便利な語尾です。
- 例文:昼飯、一緒に食うべ。
- 例文:明日は晴れるべな。
- 例文:いつもお世話になってるっす。
感情表現を表す山形弁

山形弁には、気持ちをストレートに伝える言葉が多くあります。喜怒哀楽ごとに代表的な表現を紹介します。
喜びを表す方言
うれしいときや安心したときは「いがった」「うれしなー」などを使います。「いきなり」を付けると喜びの大きさが伝わります。
- 例文:合格したってが、いがったなー!
- 例文:いきなりうれしいっす、おしょうしな。
怒りを表す方言
怒ることを「ごしゃぐ」と言います。「ごしゃいだ(怒った)」「ごしゃがれだ(怒られた)」のように活用します。いら立ちを表すときには「やんだ」もよく使います。
- 例文:宿題やってねくて、母ちゃんにごしゃがれだ。
- 例文:そんなにごしゃぐなず、謝ってっべした。
哀しみを表す方言
悲しいときやつらいときは「せづね(切ない・苦しい)」を使います。すねてしまう気持ちは「むつける」で表します。
- 例文:友達が引っ越してせづねなー。
- 例文:おもちゃ買ってもらえねくて、むつけでる。
楽しさ・驚きを表す方言
驚いたときの定番は「たまげだ」です。大変な出来事やとんでもないことには「おどげでね」を使います。楽しい気持ちは「おもしゃい(おもしろい)」で表すこともあります。
- 例文:たまげだ!こんなに雪積もったの初めてだ。
- 例文:この大雪だど、雪かぎがおどげでねぇ。
- 例文:昨日の祭り、いきなりおもしゃがったず。
感情表現いろいろ一覧

さまざまな感情を表す山形弁を一覧表にまとめました。
| 感情 | 方言 | 標準語 | 例文 |
|---|---|---|---|
| 喜び | いがった | よかった | 例文:無事に着いだが、いがったー。 |
| 楽しさ | おもしゃい | おもしろい | 例文:花笠まつり、おもしゃがったな。 |
| 驚き | たまげだ | びっくりした | 例文:値段見でたまげだ。 |
| 大変さ | おどげでね | とんでもない・大変だ | 例文:今年の雪はおどげでねぇ。 |
| 怒り | ごしゃぐ | 怒る | 例文:遅刻してごしゃがれだ。 |
| いら立ち | やんだ | 嫌だ | 例文:また雨が、やんだなー。 |
| 悔しさ | くやしー | 悔しい | 例文:試合負げで、くやしくてなんねず。 |
| 悲しみ | せづね | 切ない・苦しい | 例文:別れはせづねな。 |
| すねる | むつける | ふてくされる | 例文:いつまでむつけでんの。 |
| 恥ずかしさ | しょす | 恥ずかしい | 例文:人前で歌うのはしょすー。 |
| 恐怖 | おっかね | 怖い | 例文:夜の山道はおっかね。 |
| 疲れ | こわい | 疲れた | 例文:一日立ちっぱなしでこわい。 |
| 面倒 | めんどくせ | 面倒だ | 例文:雪かぎ、めんどくせなー。 |
| 空腹 | 腹へったず | お腹がすいた | 例文:腹へったず、なんか食うべ。 |
| 困惑 | わがんね | わからない・困った | 例文:こいづ、どうすっか、わがんね。 |
| 落胆 | あやー | ああ(がっかり) | 例文:あやー、売り切れだっけ。 |
| もったいなさ | いだましい | もったいない | 例文:残すのはいだましいべ。 |
| 不快 | やばつい | 濡れて気持ち悪い | 例文:汗かいでシャツがやばつい。 |
| 安心 | いがったいがった | 安心した | 例文:熱下がったが、いがったいがった。 |
| 愛しさ | めんごい | かわいい | 例文:孫がめんごくてなんね。 |
感情表現を使った例文です。
- 例文:あやー、財布忘れできた。わがんねなー。
- 例文:孫の顔見だら、こわいのも忘れるず。
かわいい・面白いと言われる山形弁

山形弁には、聞いた人が思わずほっこりするかわいい言葉や、意味を知るとクスッと笑える面白い言葉があります。
かわいいと言われる方言
めんごい(かわいい) 山形弁を代表するかわいい言葉です。子どもや孫、ペットなどに愛情を込めて使います。
- 例文:このおぼこ、いきなりめんごいなー。
- 例文:めんごい猫だず、名前なんて言うの?
おしょうしな(ありがとう) 置賜地方の感謝の言葉で、やわらかい響きが「上品でかわいい」と人気です。米沢の観光地でも見かける言葉です。
- 例文:手伝ってけで、おしょうしな。
- 例文:遠いどごろ来てけで、おしょうしなっす。
しょす(恥ずかしい) 照れくさい気持ちを短く表す言葉で、言い方がかわいいと評判です。
- 例文:ほめられるとしょすなー。
- 例文:写真撮られんの、しょすー。
んだにゃー(そうだね) 最上地方の相づちで、語尾の「にゃー」が猫のようでかわいいと話題になります。
- 例文:んだにゃー、今日は暖かいにゃー。
- 例文:んだにゃー、また明日会うべ。
もちょこい(くすぐったい) 響きそのものがかわいらしく、子どもとのじゃれ合いの場面でよく使われます。
- 例文:そこ触んねでけろ、もちょこい。
- 例文:足の裏もちょこくて笑ってしまう。
おぼこ(赤ちゃん・小さい子) 小さな子どもへの愛情がこもった言葉です。
- 例文:おぼこ、よぐ寝でるなー。
- 例文:おぼこの頃から知ってっぞ。
面白いと言われる方言
いきなり(とても) 標準語では「突然」の意味ですが、山形では「とても」の意味で使います。「いきなりうまい」と聞くと、県外の人は「急においしくなったの?」と戸惑います。
- 例文:このさくらんぼ、いきなり甘いず。
- 例文:今日はいきなり混んでだなー。
こわい(疲れた) 「怖い」ではなく「疲れた」の意味です。仕事終わりに「こわい」と言われ、何が怖いのか驚く人も多いです。
- 例文:残業続きでいきなりこわい。
- 例文:山登りしてこわぐなった。
なげる(捨てる) 「ゴミなげで」と言われて、ゴミを放り投げてしまうのは県外出身者あるあるです。
- 例文:このゴミ、なげでおいでけろ。
- 例文:古い服はなげっか。
やばつい(濡れて気持ち悪い) 「やばい」と似た響きですが、濡れた服や靴下の不快感を表す言葉です。標準語にぴったりの言葉がないため、山形出身者が県外で困る言葉としても知られています。
- 例文:雪で靴の中までやばつい。
- 例文:雨さ降られて背中やばつい。
ずぐなし(意気地なし) 響きのユーモラスさから、からかい半分で使われることが多い言葉です。
- 例文:お化け屋敷入んねなんて、ずぐなしだな。
- 例文:ずぐなしって言わんねように頑張るず。
むがさり(結婚式) 初めて聞くと意味の想像がつかない言葉の代表です。「迎え去り(嫁を迎えて連れ去る)」が語源とする説があります。
- 例文:来月、いどこのむがさりあんだ。
- 例文:むがさりのごっつぉ、うまがったなー。
よく使う山形弁ランキングTOP10

日常会話での使用頻度や知名度をもとに、よく使われる山形弁を10位までランキング形式で紹介します。
| 順位 | 方言 | 意味 | 解説 | 例文 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | んだ/んだず | そうだ | 相づちの基本で、県内全域で毎日のように使われます | 例文:んだず、明日は休みだず。 |
| 2位 | 〜べ | 〜だろう・〜しよう | 推量にも誘いにも使える万能の語尾です | 例文:昼飯食いさ行ぐべ。 |
| 3位 | いきなり | とても | 山形らしさが一番出る強調表現です | 例文:このそば、いきなりうめ。 |
| 4位 | おばんです | こんばんは | 夕方以降の挨拶として、年代を問わず使われます | 例文:おばんです、寒いっすね。 |
| 5位 | こわい | 疲れた | 仕事終わりや運動後に自然と出る言葉です | 例文:今日はいきなりこわい。 |
| 6位 | なげる | 捨てる | 家庭でも職場でも頻繁に登場します | 例文:空き缶なげでけろ。 |
| 7位 | めんごい | かわいい | 子どもや動物に愛情を込めて使います | 例文:めんごい靴だなー。 |
| 8位 | ごしゃぐ | 怒る | 子どもの頃から耳にする定番表現です | 例文:先生にごしゃがれだ。 |
| 9位 | おしょうしな | ありがとう | 置賜を中心に親しまれる感謝の言葉です | 例文:いつもおしょうしな。 |
| 10位 | いだましい | もったいない | 物を大切にする山形の暮らしに根付いた言葉です | 例文:まだ使えんのにいだましい。 |
山形弁の会話例
実際の会話の雰囲気がわかるように、山形弁を使ったやり取りの例を紹介します。
会話例1:冬の朝、家族の会話(村山地方)
👩「はえぐ起ぎろず。今朝はいきなりさみぞ」 👨「んだが。雪いっぱい降ったべか」 👩「んだず。出がける前に雪かぎしてけろ」 👨「やんだなー、朝からこわぐなるず」
会話例2:職場での雑談(最上地方)
👨「今日は仕事はかいぐにゃー」 👩「んだにゃー。ちゃっちゃど終わらせで帰るべ」 👨「帰りに一杯どうだ?」 👩「あべあべ。たまにはいいにゃー」
会話例3:友人へのお礼(置賜地方)
👩「引っ越しの手伝い、おしょうしな。いきなり助かったっそ」 👨「なんも。困ったどぎはお互いさまだごで」 👩「お礼に米沢牛でも食いさ行ぐべ」 👨「いいごで、楽しみにしてっぞ」
会話例4:だだちゃ豆の季節(庄内地方)
👨「ちぇっとだだちゃ豆もらったさげ、持ってきたの」 👩「もっけだの。今年のはうめのー」 👨「んだのー。ビールさ合うの」 👩「よっぱら食ってしまいそうだの」
移住者・旅行者が覚えておきたいフレーズ
山形に引っ越した人や旅行で訪れる人が覚えておくと便利なフレーズを紹介します。意味を知っているだけで、地元の人との会話がぐっとスムーズになります。
おばんです(こんばんは) 夕方以降のお店や近所付き合いでよく使われます。自分から言うと親しみを持ってもらえます。
- 例文:おばんです、今日もお疲れさまっす。
- 例文:おばんです、まだお店やってますか?
おしょうしな/もっけだの(ありがとう) 旅先でお礼を言うときに使うと喜ばれます。置賜では「おしょうしな」、庄内では「もっけだの」と使い分けるとさらに好印象です。
- 例文:道教えでけで、おしょうしな。
- 例文:おまけしてけで、もっけだの。
こわい(疲れた) 地元の人に「こわいべ?」と聞かれたら「疲れたでしょう?」という気づかいです。
- 例文:長旅でこわいべ、ゆっくり休んでけろ。
- 例文:こわかったら、そこさ座ってでいいよ。
なげる(捨てる) ゴミ出しのルールを聞くときなど、生活の場面で頻繁に使われます。
- 例文:燃えるゴミは月曜になげでけろ。
- 例文:これ、なげでもいいがっす?
け(食べて) 食べ物を勧められるときに「け」とひと言で言われることがあります。遠慮せずいただくのが山形流です。
- 例文:漬物あっから、け。
- 例文:遠慮しねでいっぱいけ。
〜っす(〜です) 丁寧な語尾で、目上の人にも使えます。移住者が最初に覚えやすい語尾です。
- 例文:よろしくお願いしますっす。
- 例文:今日から隣さ越してきた者っす。
メール・チャットでの山形弁の使用例

山形弁はくだけた場面で使うと親しみが伝わります。シチュエーション別にBefore(標準語)とAfter(山形弁)の例を紹介します。
友人とのLINE
- 例文(Before):昨日はありがとう。すごく楽しかったよ。
- 例文(After):昨日はおしょうしな。いきなりおもしゃがったず。
- 例文(Before):今度の休み、一緒に芋煮会に行こうよ。
- 例文(After):今度の休み、一緒に芋煮会さあべ。
家族とのLINE
- 例文(Before):今日は遅くなるので、先に寝ていてください。
- 例文(After):今日遅ぐなるさげ、先に寝ででけろ。
- 例文(Before):雪がすごいから、運転に気をつけてね。
- 例文(After):雪おどげでねぇがら、運転気つけろず。
地元の同僚への社内チャット(Slack/Teams)
- 例文(Before):資料ありがとうございます。とても助かりました。
- 例文(After):資料おしょうしなっす。いきなり助かったっす。
- 例文(Before):今日は作業がはかどりましたね。お疲れさまです。
- 例文(After):今日ははかいぎましたね。こわいっすね、お疲れさまっす。
ビジネスメール(社外向け)
社外向けのビジネスメールでは、方言は使わず標準語の敬語で書くのが基本です。ただし、地元の取引先と長く付き合いがある場合などは、結びのひと言に方言を添えると親しみが伝わることがあります。
- 例文(Before):本日はご来社いただき、ありがとうございました。寒い日が続きますので、ご自愛ください。
- 例文(After):本日はご来社いただき、誠にありがとうございました。雪の多い時期ですので、どうぞお気をつけてお帰りください(今年の雪はおどげでねぇですね)。
- 例文(Before):先日はお世話になりました。
- 例文(After):先日は大変お世話になりました。本当に「おしょうしな」の気持ちでいっぱいです。
山形弁の歴史的背景

山形弁が地域ごとに大きく異なるのは、地形と歴史が深く関係しています。
藩政時代の影響
江戸時代、現在の山形県は庄内藩(鶴岡)、米沢藩(置賜)、新庄藩(最上)、山形藩などに分かれていました。藩ごとに人の行き来が制限されていたため、それぞれの地域で独自の言葉が育ちました。米沢藩では上杉家の城下町として武家言葉の影響が残り、置賜の丁寧な言い回しにつながったと考えられています。
- 例文:米沢の年配の方は、今も「おしょうしな」を自然に使います。
- 例文:新庄の「〜あんす」は、城下町の丁寧な言葉の名残とされます。
北前船と最上川舟運による伝播
庄内地方の酒田港は、江戸時代に北前船の寄港地として栄えました。上方(大阪・京都)との交易が盛んだったため、庄内の言葉には上方の影響が見られます。理由を表す「〜さげ」はその一例と言われています。また、最上川の舟運によって内陸と庄内が結ばれ、物とともに言葉も行き来しました。
- 例文:雨降ったさげ、今日は家さいる。
- 例文:酒田の商人言葉には、どこか上方の響きがあります。
近代以降の変化
明治以降、学校教育やラジオ・テレビの普及により、山形でも標準語が広まりました。現在では若い世代の方言は以前より薄れていますが、「んだ」「〜べ」「いきなり」など、日常的な言葉は世代を超えて使われ続けています。また、山形弁研究家としても知られるダニエル・カールさんや、山形弁で歌う歌手の活躍などにより、山形弁の魅力が全国に知られるようになりました。
- 例文:若い人でも「んだず」は普通に使います。
- 例文:テレビで山形弁を聞いて、懐かしくなりました。
山形弁の豆知識

山形弁にまつわる、知っていると話のネタになる豆知識を紹介します。
「だだちゃ豆」の名前の由来
庄内の特産品「だだちゃ豆」の「だだちゃ」は、庄内の方言で「お父さん」を意味します。殿様が「これはどこのだだちゃの豆か」と尋ねたことが名前の由来という説が知られています。方言がそのままブランド名になった珍しい例です。
- 例文:だだちゃ豆は夏の庄内の味だの。
- 例文:うちのだだちゃは、豆ゆでるのが上手だの。
「山形」が「じゃまがた」に聞こえる理由
内陸方言では、ヤ行の音が強く摩擦して発音されるため、「山形」が「じゃまがた」のように聞こえることがあります。また、「キ」が「チ」に近く聞こえることもあり、こうした発音の特徴が山形弁らしい温かみを生んでいます。
- 例文:じゃまがたの芋煮は牛肉としょうゆ味だず。
- 例文:発音に地元らしさが出るのも山形弁の魅力です。
「そうだ」だけで出身地がわかる
「そうだ」の言い方は、村山は「んだず」、最上は「んだにゃー」、置賜は「んだごで」、庄内は「んだのー」と地域ごとに異なります。県内の人同士なら、相づちひとつで出身地の見当がつくと言われています。
- 例文:「んだのー」って言ったがら、庄内の人だべ。
- 例文:「んだごで」が出たら、置賜出身だず。
山形弁を使う際の注意点

山形弁を使ってみたい人が知っておきたい注意点を紹介します。
地域によって意味や言い方が違う
同じ山形県内でも、内陸と庄内では言葉が大きく異なります。たとえば「ありがとう」は置賜では「おしょうしな」、庄内では「もっけだの」です。相手の出身地に合わない言葉を使うと、ちぐはぐな印象になることもあります。
- 例文:鶴岡の人には「もっけだの」の方がしっくりくるのー。
- 例文:米沢では「おしょうしな」が通じやすいっそ。
県外の人には誤解されやすい言葉がある
「こわい(疲れた)」「なげる(捨てる)」「いきなり(とても)」などは、標準語とまったく違う意味になるため、県外の人には誤解されやすい言葉です。県外の人と話すときは、意味を補足したり標準語に言い換えたりすると安心です。
- 例文:「こわい」って、疲れたって意味なんです。
- 例文:ゴミをなげる、つまり捨てておいてくださいね。
ビジネスや目上の人には使う場面を選ぶ
方言は親しみが伝わる反面、改まった場ではくだけすぎた印象を与えることがあります。社外とのやり取りや初対面の目上の人には標準語の敬語を使い、打ち解けてから方言を取り入れるのがおすすめです。
- 例文:初対面の取引先には標準語で話し、雑談で山形弁を少し交えました。
- 例文:上司に「〜っす」を使うときは、職場の雰囲気を見てからにしています。
まとめ

山形弁は、庄内・村山・最上・置賜の4つの地域ごとに、語尾や言い回しが大きく異なる奥深い方言です。
「んだず」「んだにゃー」「んだごで」「んだのー」のように、相づちひとつにも地域の個性が表れます。
「めんごい」「おしょうしな」のようなかわいい言葉や、「いきなり」「こわい」「なげる」のように意味を知ると面白い言葉も多く、知れば知るほど魅力が見えてきます。
山形を訪れる際や山形出身の人と話すときは、ぜひこの記事で紹介したフレーズを使ってみてください。きっと会話が弾み、距離がぐっと縮まるはずです。

