ビジネスシーンで使われることの多い「見積もる」という動詞。
この「見積もる」という動詞が名詞になったとき、はたして「見積」「見積り」「見積もり」のどれが正しいのか迷う人は少なくありません。
このページでは、実務の中で迷わずに正しい選択ができるようになるための情報を提供しています。
このページの目次
見積・見積り・見積もり/正しい使い分け方を理解する3つのポイント
- 【見積」【見積り】【見積もり】どれも正しい
- 【見積り】が法令文の中で最も使用頻度が高い
- 【見積書】【見積価格】に送り仮名は付けない
見積・見積り・見積もり/正しい使い分け方を解説
【見積】【見積り】【見積もり】どれも正しい
「見積」「見積り」「見積もり」の三通りの表記のうち、一体どれが正しいのでしょうか。結論から言うと三つとも正解です。正しい表記です。
動詞としての「見積もる」ではなく、名詞として用いるとき「見積」「見積り」「見積もり」のいずれで表記しても問題はありません。
三つとも正解なので、残る問題は三つのうちどれを選択するかということになります。
【見積り】が法令文の中で最も使用頻度が高い
ビジネス文書などの作成にあたり漢字や送り仮名の表記に正統性を求めたいとき、参考としておすすめしたいのが公文書、特に言葉の表記に厳密な法令文です。
ちなみにこのページを投稿した2017年9月現在、「見積」「見積り」「見積もり」という表記が法令文に使われている頻度は下記する通りです。
見積:184回
見積り:205回
見積もり:0回
「見積」「見積り」「見積もり」の三つとも正しいと上に述べましたが、法令文の中では「見積もり」は一切使われていません。
また「見積」には「見積書」や「見積価格」などが含まれていますので「見積」単体で使われているケースはさらに少なくなります。
法令文では「見積り」が圧倒的に多く使われていることから、ビジネス文書などでも「見積り」を使うことが無難な選択であると言えます。
参考:e-Gov法令検索
【見積書】【見積価格】に送り仮名は付けない
「みつもり」と単体で表記する場合は、「見積」「見積り」「見積もり」のいずれも正解であること。法令文では「見積り」が主流であることは上に述べた通りです。
では「書」や「価格」などと組み合わせる場合はどうなるのでしょうか。
これも結論から申し上げます。「り」や「もり」の送り仮名は付けません。この結論の根拠となる文部科学省・内閣告示第二号「送り仮名の付け方」の該当箇所を以下に引用します。
通則7
複合の語のうち,次のような名詞は,慣用に従って,送り仮名を付けない。
(1) 特定の領域の語で,慣用が固定していると認められるもの。
〔例〕見積((書))
(( ))の中を他の漢字で置き換えた場合にも,この通則を適用する。
引用:内閣告示第二号「送り仮名の付け方 複合の語 通則7」
要約すると「見積書」と書く場合、または「書」を他の漢字で置き換える場合、送り仮名を付けないということです。
正:見積書、見積価格
誤:見積もり書、見積り価格
見積・見積り・見積もり/いずれも正しい理由
さて、「見積」「見積り」「見積もり」の三つとも正しいと上に述べましたが、正しさの根拠を示していませんでした。
根拠の説明は少しばかりややこしくなります。実務でお忙しい方は以下に述べる根拠は読まなくても差し支えありません。ビジネスを優先してください。
【1】「見積もり」という表記が正しい理由
「見積もり」という表記が正しい理由は、内閣告示第二号「送り仮名の付け方・通則4」に求めることができます。
通則4
本則 活用のある語から転じた名詞(中略)は,もとの語の送り仮名の付け方によって送る。
引用:内閣告示第二号「送り仮名の付け方」
「見積もる」という動詞は活用のある語です。「活用のある」とは「見積もる」「見積もらない」「見積もります」と横展開することを意味します。
「見積もり」は活用のある「見積もる」から転じた言葉なので、もとの送り仮名を付けて名詞にする、すなわち「見積もり」になる、ということです。
【2】「見積り」という表記が正しい理由
「見積り」という表記が正しい理由も、内閣告示第二号「送り仮名の付け方・通則2」に明記されています。
通則2
本則 活用語尾以外の部分に他の語を含む語は,含まれている語の送り仮名の付け方によって送る。(中略)
許容 読み間違えるおそれのない場合は,活用語尾以外の部分について,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。
〔例〕積もる(積る)
引用:内閣告示第二号「送り仮名の付け方」
要約すると「積もる」は「積る」と表記しても良い。そして「積もる」を言葉の中に含んでいる「見積もる」は「見積る」とも表記できる。「見積る」と表記できるので「見積り」も許容範囲内ということです。
【3】「見積」という表記が正しい理由
「見積」が正しい根拠は、内閣告示第二号「送り仮名の付け方・通則6」です。
通則6
許容 読み間違えるおそれのない場合は,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。
〔例〕売り上げ(売上げ・売上) 取り扱い(取扱い・取扱) 乗り換え(乗換え・乗換)
引用:内閣告示第二号「送り仮名の付け方」
通則6の許容欄の例に「見積もり」こそあがってはいませせんが、「見積もり」は「見積」と表記しても「読み間違えるおそれのない」ことは、例としてあげられている「売上」「取扱」「乗換」などと同様です。
よって「見積」という表記も正しいという結論を導き出すことができます。
「見積」「見積り」「見積もり」正しい使い分け方、まとめ
「見積」「見積り」「見積もり」の正しい使い分け方についての解説、お役に立つことができましたでしょうか。
ビジネスで多忙を極めるあなたのために、今一度、「見積」「見積り」「見積もり」を正しく使い分けるポイントを以下にまとめておきます。
- 「見積り」を推奨。法令文の中で使用頻度が最も高いため。
- 「見積書」「見積価格」と書く時はに送り仮名は付けない。