「表れる」と「現れる」の違いと使い分け方を理解するポイント

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「表れる」と「現れる」の違いは明確な使い分け方が示されていないため、二つの言葉を区別するのがとても難しい同意語です。このページでは難しい違いと使い分け方を理解するポイントを示し、できる限りシンプルにお伝えできるようまとめています。

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「表れる」と「現れる」の違いと使い分け方を理解するポイント

 表れる現れる
文化庁文化審議会による区別思いが外に出る。表現する。表に出る。隠れていたものが見えるようになる。
区別のポイント抽象的形がないことがあらわれる。具体的形があるものがあらわれる。
同義熟語を参考にして区別する表現:心に思うことを表し出すこと。出現:隠れていたものが姿をあらわすこと。
 「表れる」と「現れる」は同意語で厳密に区別する定義はないため例外がある
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「表れる」と「現れる」の違いと使い分け方の目安を解説

使い分けが難しい同音異字の言葉は、仮に一方だけが常用漢字であれば、使い分けに迷った場合には常用漢字の方を選ぶという考え方が可能です。

しかし「表れる」と「現れる」は両方とも常用漢字です。そのため迷った場合の指針もなく使い分けが極めて困難な同音異字の一つです。

厳密な使い分けルールが存在しない「表れる」と「現れる」。上の一覧表に挙げた「違いと使い分け方の目安となるポイント」をさらに詳しく以下に解説してみました。

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文化庁文化審議会国語分科会による区別

文化庁文化審議会国語分科会が発行した「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)では、「表れる」と「現れる」の使い分け方が、用例とともに次のように示されています。

【表れる】思いが外に出る。表現する。表に出る。
甘えが態度に表れる。不景気の影響が表れる。

【現れる】隠れていたものが見えるようになる。
太陽が現れる。救世主が現れる。

※筆者注:原文のうちこのページのテーマと無関係な箇所は省略しています。

出典:文化庁文化審議会国語分科会 「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)

ただし上に引用した使い分け方は一つの目安であり、そこに強制性はありません。事実、この報告書の冒頭では次のような注意書きが記載されています。

同訓の漢字の使い分けに関しては,明確に使い分けを示すことが難しいところがあることや,使い分けに関わる年代差,個人差に加え,各分野における表記習慣の違い等もあることから,ここに示す使い分け例は,一つの参考として提示するものである。したがって,ここに示した使い分けとは異なる使い分けを否定する趣旨で示すものではない。また,この使い分け例は,必要に応じて,仮名で表記することを妨げるものでもない。

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区別のポイント:抽象的か、具体的か

文化庁による使い分け方の目安を読んでも、今ひとつスッキリしない。そんな方は、以下に述べるようなポイントで理解してみてはいかがでしょうか。

あらわれらたものが「抽象的で形がないこと」なのか「具体的で形があるもの」なのかで判断するという考え方です。

文化庁の「異字同訓」の漢字の使い分け例」に記載されている具体的な用例を使って、この区別の考え方を解説すると次の通りです。

文化庁のレポートが「表れる」の用例の中で示している「甘え」「不景気の影響」はいずれも「抽象的で形がないこと」です。一方、同じレポート内で示されている「現れる」の用例の「太陽」「救世主」は「具体的で形があるもの」です。

この考え方を一覧表示すると次のようになります。

 表れる現れる
区別のポイント抽象的で形がないことがあらわれる。具体的で形があるものがあらわれる。
文化庁文化審議会による用例甘えが態度に表れる。不景気の影響が表れる。太陽が現れる。救世主が現れる。
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区別のポイント:同義熟語を参考にする

「表れる」と「現れる」には、それぞれ「表現」と「出現」という同義熟語(意味の近い熟語)が存在します。

熟語は、その言葉の意味を理解するのを助けてくれます。

そこで「表れる」と「現れる」を使い分けるに当たっては、「表現」と「出現」のどちらいの意味を伝えたいのか。そこを考えてから使い分けを行ってみてはいかがでしょうか。

また、これはすべてのケースに当てはまるわけではありませんが、「表れる」と「現れる」を「表現」と「出現」に置き換えられるかどうかで区別する考え方もあります。

 表れる現れる
同義熟語表現
心に思うことを表し出すこと。
出現
隠れていたものが姿をあらわすこと。
文化庁文化審議会による定義思いが外に出る。表現する。表に出る。隠れていたものが見えるようになる。
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使い分け方が極めて難しい「効果」「成果」そして「症状」

上に述べた「表れる」と「現れる」を的確に使い分けるための目安をもってしても、「表れる」と「現れる」の使い分けの判断が難しい言葉が三つ存在します。「効果」「成果」「症状」の三つの言葉です。

これら三つの言葉に使うのがふさわしいのは「表れる」と「現れる」のどちらなのか。以下にその目安をまとめてみました。

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「効果」と「成果」に使うのは「表れる」と「現れる」のどちら?

「効果」そして「成果」。これら二つの言葉については「表れる」「現れる」の使い分けの基準がありません。基準がないため、どちらを使っても特段の問題はありません。

しかし、どうしても使い分けをしたい場合は「動向」「開花」という二つのキーワードをヒントにしながら使い分け方を工夫してみてください。

例えば、ダイエットやスポーツ、勉強などの行動や結果を長期間にわたって記録し続けたとします。その記録の「動向」から「効果」や「成果」がじわじわと出てきている様子が読み取れる場合は「表れる」を使います。

努力が効果・成果に表れる」などという言い方がこれに当たります。

一方、ダイエットやスポーツ、勉強などの行動や結果を記録していない場合。ある日突然、それまで隠されていた才能が「開花」するかのように「効果」や「成果」が出てくることがあります。この場合に使うのは「現れる」です。

効果・成果が現れた」とシンプルに言う場合がこれに当たります。

 表れる現れる
区別するキーワード動向開花
キーワードの解説長期間の記録の「動向から「効果」や「成果」がじわじわと出てきている様子が読み取れる場合隠されていた才能が「開花」するかのように「効果」や「成果」が出てくる場合
用例努力が効果・成果に表れる。効果・成果が現れた。
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「症状」に使うのは「表れる」と「現れる」のどちら?

「症状」に関しては、読売新聞社が「表れる」と「現れる」の使い分け方について、以下のような具体的な用例をもって明確な基準を示しています。この基準を参考にしてみてはいかがでしょうか。(参考文献:読売新聞用字用語の手引 改訂新版 読売新聞社)

 表れる現れる
用例症状・副作用が表れる。皮膚に湿疹が現れる。
理解するポイント「症状」や「副作用」のような抽象的な総称「湿疹」や「腹痛」など具体的な症状や副作用

「表れる」と「現れる」の違いと使い分け方、まとめ

数ある同音異字の中でも、違いを理解し正しく使い分けることが難しい「表れる」と「現れる」という二つの言葉。

使い分けの選択が求められるケースのうち、十中八九はこのページで解決できるようにまとめたつもりです。

しかし、それでもなお使い分けに迷いが生じるケースは少なくないかと思います。

どうしても使い分けの判断がつきかねる。そのような場合は、ひらがなで書いてしまうのも選択肢の一つです。

実際、文化庁文化審議会のレポートの中にも次のような記述があるくらいですから。

必要に応じて,仮名で表記することを妨げるものでもない。

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