日常会話でよく聞く「逆に」。日常会話以外にもビジネスシーンで使われることも多い言葉です。
いったいどんな意味なのでしょうか。
まず「逆」を広辞苑で引いてみました。
最初に「①物事の順序や方向が反対であること。さかさま。」と書いてありました。確かに「逆」と「反対」は同じ意味合いで使われることが多いですね。
では「に」をつけて「逆に」はどうでしょう。
「逆に」は、文章と文章をつなぐ接続詞の役目を果たす言葉です。単独で使われることありません。前の文章があり、「逆に」が続き、そしてその後ろに前の文章と反対の意味の文章が続きます。
「A。逆にB」といった使い方です。
この場合の「逆に」は「逆説の接続詞」としての役目を果たす言葉です。
日常会話でよく使われるのは「たしかにAだね。逆にBは・・・・・・。」という言い方ではないでしょうか。
例えば
- 「昨日はとても暑かったね。逆に今日は雨が激しくて涼しすぎるくらいだ。」
- 「メロンが安いよ!逆にスイカが高くてびっくりした!」
などでしょうか。
これらは、「逆に」を「反対に」に入れ替えても通用する文章です。しかし、最近は少し違う「逆に」の使い方が出てきています。
特にビジネスのシーンです。
学校では「逆に」は逆接の接続詞ですと習うので知らないと戸惑うことも多いかと思います。
年齢によって「逆に」の使い方も違います。60代以降の方たちは20代の人たちの使う「逆に」の意味がわからない場合もあります。伝わるつもりで言ったのに、相手を混乱させてしまうこともある「逆に」。いろいろな意味や表現があることを覚えておきましょう。
次の項目では、「逆に」のビジネスシーンでの使い方や例文を紹介します。
「逆に」のビジネスでの使い方や例文を紹介
日常会話での「逆に」は「1つ目の考えを受けつつ、反対の内容を続ける場合」によく使われます。
しかしビジネスになると少し違います。
もちろん日常会話の「逆に」と同じような意味でも使われますが、さらに使い方のバリエーションが広がります。
ビジネスのシーンでは、自分の考えや意見を伝えつつも相手の意見も聞きたい、あなたの提案は理解したけれど賛成しかねる、といった場面が数多くあります。そんなときに使われるのが「逆に」です。
ビジネスシーンでの「逆に」は、『相手をはっきりとは否定しない。』という表現として使われるのが特徴です。
例えば
「Aだね。逆にわたしの考えは・・・・・・。」→Aに賛成。そして新しい考えを提案。
「Aもよいね。逆にBもよいのでは?」→Aに賛成。さらにBも提案。
「Aはいい案だ。逆にいまBの話をしてもよいかい?」→Aに賛成。次にBの話を提案。
これらは「逆に」の使い方の例ですが、さまざまなニュアンスがあることがわかると思います。
「逆に」の類語との違いを解説
「逆に」の類語にはどのようなものがあるでしょうか。
「反対に」
これは、まったく同じ意味と言っていいでしょう。もともとの「逆に」と同じ場面・意味で使われます。
「逆に言えば」「逆さまに(さかさまに)」
この二つは「逆」という漢字そのままの表現を使った言い方です。「逆に」とほぼ同じような意味や場面で使われることが多いです。
「そうではなく」
「そうではなく」と切り出されると、言われた相手は「せっかく意見を言ったのに・・・・・・」と、否定されたような気持ちになるかもしれません。親しい間柄ならよいですが上司や目上の人に使うのは気をつけたほうがよいでしょう。
「裏返せば」
「逆に」と同じように、「先に話した内容をひっくり返した視点で見ると」という意味です。紙や物のように話を「裏返す」というのは現実にはできませんが、言いたいことは伝わってくるのではないでしょうか。
「却って(かえって)」「翻って(ひるがえって)」
日常会話ではあまり使われず、どちらかというと会議や公式な場面で使用されます。少し固い表現になり、20代の人にはあまり馴染みがない言葉かもしれません。これらの表現を使えると「語彙が豊富だな。」と思ってもらえるかもしれませんよ。
「それならば」
相手の意見を受けつつ「それならこの考えはどうでしょう。」という言い方です。提案の意味が強い表現です。
「一方で」
「なるほどね。」「こんな考えもあるよ。」というニュアンスがあります。聞き手にわらかい印象を与えてくれる言い方です。
「あべこべに」
「あべこべ」は「反対」という意味です。若い人には耳慣れない言葉かもしれません。使われることは減ってきましたが、年配の方と話す時には知っておくとよい言葉でしょう。
日本語は、同じような意味の言葉でもさまざまな表現がありますね。
実に面白い言語です。
「逆に」の言い換え例文とニュアンスについて
次に「逆に」の言い換えを使った例文をみてみましょう。
【例文1】「逆に」の表現・活用方法について
「あなたの案はすばらしい。逆に、わたしの案はどう思う?」→「あなたの案はすばらしい。では、わたしの案はどう思う?」
あなたの案は認めたよ。わたしの案はどうだろう?といった場面です。1つ目の案は良いし、否定もしていない。だからできればわたしの案も受け入れてほしいな、といったニュアンスがみえかくれしているような気がします。
【例文2】「逆に」の表現・活用方法について
「あなたはよい考えと思ったかも知れないが、逆に悪い結果になった。」→「あなたはよい考えと思ったかも知れないが、むしろ悪い結果になった。」
これが、以前からあった使われ方ですね。「逆に」を「反対に」の意味で使っています。
時代とともに変化する言葉「逆に」
かつて「逆に」は「反対に」の意味だけでしたが、いつの間にか使われる場面や意味が広がりました。特に高齢者が使い慣れているのは「反対に」の意味の「逆に」です。
他の使い方はしない人や知らない人もいるでしょうから、どこまで使ってよいか注意が必要です。
年配の方に「反対に」の意味以外で使うと「反対でもないのに何が逆なのか。」腹立たしく思われてしまうかもしれません。
ビジネスにおいての「逆に」も、さまざまな意味合いで使われるようになりました。
聞き慣れないと「あれ?今どのような意味で使われているのだろう。」と戸惑うこともあるかもしれません。あらかじめいろいろな表現方法があることを知っておくと、目の前の人は何を伝えたいのだろうと想像しやすくなります。返事や受け答えもしやすくなるかもしれません。
まとめ
「逆に」はさまざまな意味で遣われるようになりました。
逆接の接続詞としてだけでなく、順接の接続詞に近い使われ方も増えてきています。
- 昔からある「反対に」の意味の「逆に」
- 相手の意見を尊重しながら、違う角度から考えを求める「逆に」
- 相手の考えを認め、次の話に続ける「逆に」
- あらたな考えを聞いてもらう「逆に」
- 全く違う話を求める「逆に」
などです。
忘れてはならないのは、これらの意味で使われることは学校では習いません。
もちろん数年後には変わるかもしれませんが、教科書で習う「逆に」は「反対に」の意味だけです。
言葉は日々変化します。「逆に」も相手の年齢や場面によって使いわけることが求められます。
友だちと、上司と、年配の人と。家で、職場で、祖父母など、会話や人とのやりとりを楽しんでいきましょう!