「指示/指図/命令/指導/指南」の違いと使い分けの例文

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「指示」「指図」「命令」「指導」「指南」は、物事のやり方などを伝えたり教えたりするときに使われる言葉ですが、①どのようなことを、②どのように、③伝える/教えるのかという点で意味が異なります。その違いをまとめると、以下のようになります。

 ①どのようなことを②どのように③伝える/教える
指示さまざまな物事のやり方などを中立的な態度で伝える、または示す
指図主にその場でできる物事を威圧的な態度で強制力をもって伝える
命令ほぼ拒否できない物事を規則や法律に基づいて
指導勉強や運動に必要な知識や技術などを親身な態度で教え導く
指南武芸や芸能の技術やコツなどを

「指示」「指図」「命令」「指導」「指南」は、大きく分けると「指示」「指図」「命令」と「指導」「指南」の2つのグループになります。物事のやり方を「伝える」という意味を持つ「指示」「指図」「命令」と、物事のやり方を「教える」という意味を持つ「指導」「指南」です。

以下では、2つのグループに分けてそれぞれの言葉の詳しい意味を具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。

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「指示」「指図」「命令」の意味と例文

まず、物事のやり方を「伝える」意味を持つ「指示」「指図」「命令」について見ていきましょう。これらの言葉は、どのような物事を、どのような態度や強制力で伝えるのかという点で違いがあります。

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「指示」の意味と例文

「指示」は「指で示す」と書きますが、特定のものがどれかがわかるように指などを使ってさす行為から作られました。そして、言葉を使って何かのやり方を伝えるときにも使われるようになりました。

もともと「指で示す」という意味であることから、「指示」という言葉自体に強い強制力はありません。「穏やかに指示する」とも言えますし、「厳しく指示する」とも言える中立的な言葉です。使える幅の広い言葉なので、「指示」はさまざまな場面で用いることができます。例文を見てみましょう。

・上司が具体的な指示をすることが、部下の成長に繋がる。
・反抗期の子どもは親の指示や意見に「うるさい!」などと反発することがあります。
・業務改善の指示を行う場合の企業名の公表について
・スタッカートは音を短く切って演奏することを指示する記号だ。

「上司が具体的な指示」の例文のように仕事の場面で使われるだけでなく、「親の指示」のように家庭や日常の場面でも使われます。

また、人が人に対して行う指示だけではなく「業務改善の指示」のように組織間や企業間の場合にも使うことができます。さらに、「指示する記号」のように符号や標識で示す場合も「指示」という言葉が使えます。

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「指図」の意味と例文

「指図」も何かのやり方を伝えるという意味ですが、「指示」と違うのは強い強制力がある点です。「指示」は「このようにします/してください」のようなニュアンスですが、「指図」は「このようにやりなさい/やれ」のようなニュアンスで、威圧感のある言葉です。例文を見てみましょう。

・犯人に指図されるままバスは大通りから脇道を進んで行った。
・いちいち指図してくる上司が転勤になった。
・後輩のくせに俺に指図をしてきやがった。
・パートの先輩が、どうでもいいようなことを指図してきます。

「犯人に指図」のように、断る余地のない強制的な指示が「指図」です。また、「いちいち指図」のように威圧的な態度やぞんざいな態度で人を動かそうとすることが「指図」で、「指図」された側は不快感や反発を覚えます。

「指図」は人と人との間でのみ使える言葉ですが、「指図」をする人とされる人の間に上下関係の決まりはありません。上司が部下に「指図」することもあれば、後輩が先輩に「指図」することもあります。

また「指図」は、その場であれこれやらせるような意味合いもあり、「どうでもいいようなことを指図」のように計画性や具体性もなく物事を言いつける場合にも用いられます。

上にあげた4つの例文では、「指図」を「指示」に変えることもできますが、「指示」では強制力や態度の悪さ、具体性のなさがあまり感じられません。「指図」は、言葉自体にネガティブなニュアンスがあり、理不尽さや不快感を表す場合には「指図」が適切です。

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「命令」の意味と例文

「命令」は、上位の者が下位の者にある行動をするように言いつけることです。「指図」と同じように強い強制力がありますが、言葉自体に理不尽さや不快感といったネガティブなニュアンスはありません。例文を見てみましょう。

・兵士は指揮官からの命令をじっと待っていた。
・ランプの魔神はすぐにアラジンの命令に従った。
・文部省による学校法人への解散命令は本件が4例目だ。
この業界は、上司や顧客からの無茶な依頼、命令が多い。

「指揮官からの命令」「アラジンの命令」のように、高い役職や地位・権力を持つ人が言いつける場合に用います。また、「解散命令」のように行政機関が出す指示や法律に基づく指示にも使われます。

「命令」は規則や決まり、法律などに基づいてある行動をするようにと要請することなので、強い強制力や圧力はありますが、「命令」という言葉自体に理不尽さはありません。権力乱用のひどい命令の場合には「無茶な命令」のように言葉を加えることでネガティブな意味を持たせます。

「命令」の強制力は「指図」よりもかなり強く、「命令」された人に拒否したり無視したりする権利はほぼありません。もし拒否した場合には罰せられることもあるような場合に「命令」が使われます。

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「指導」「指南」の意味と例文

では、次に「教える」という意味を持つ「指導」「指南」について見てみましょう。これらの言葉は、どのようなことを教えるのかという点で違いがあります。

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「指導」の意味と例文

「指導」は、特定の目的が達成されるように教え導くことです。教え導くことは短期間でできるものではありません。そのため「指導」は、積み重ねが必要な物事、例えば勉強や運動などを教える場合に用いられます。例文を見てみましょう。

・元プロ野球選手の経験を活かして高校球児の指導にあたっている。
・修士課程、博士課程での指導は、個人研究とゼミを通して行います。
あの時、厳しく指導してもらったおかげで、今の私があります。

「高校球児の指導」は、必要な技術を教え習得できるように導くことです。「博士課程での指導」は、論文完成や研究者となることを目指して助言を与えたりすることが「指導」にあたります。「指導」は厳しい態度の場合もありますが、教える側は根底では相手のことを考えており親身な態度で行われるのが「指導」です。

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「指南」の意味と例文

「指南」も「指導」と同じように特定の目的が達成されるように教え導くことですが、特に伝統芸能や武術を教える場合に用います。例文を見てみましょう。

・いぜんとして謡と鼓の指南をしながら、清貧にあまんじていた。
・建物を設計する際には風水師による指南も行われたともいわれる。
警視庁の武術指南役という役にある以上、試合で負けるわけにゆかない。

「謡と鼓の指南」は専門技術のコツなどを教えることで、「風水師による指南」は良い方角を示して教えることです。また「指南役」とは武芸などを教える役割の人のことですが、「経営の指南役」「恋愛の指南役」のように武芸とは違う分野で用いられることもあります。

「指南」は「指と南」と書きますが、なぜ「南」なのか不思議に思われるかもしれません。「指南」は、古代中国で作られた方向指示装置のある「指南車」という車からきています。この車は初めに南を向けておくと、車の上に設置された人形の手が常に南を指すというものでした。中国では吉方位とされる南を常に示すことから、「指南」が良い方向へ導くという意味を持つようになったのです。

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「指示/指図/命令/指導/指南」の違い、まとめ

「指示」「指図」「命令」「指導」「指南」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。最後にもう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にお役立てください。

 ①どのようなことを②どのように③伝える/教える
指示さまざまな物事のやり方などを中立的な態度で伝える、または示す
指図主にその場でできる物事を威圧的な態度で強制力をもって伝える
命令ほぼ拒否できない物事を規則や法律に基づいて
指導勉強や運動に必要な知識や技術などを親身な態度で教え導く
指南武芸や芸能の技術やコツなどを
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