「材料/原料/原材料/素材/資材」は、どれも物を作るときに使うものですが、その状態や使われる場面は少しずつ違います。その違いをまとめると以下のようになります。
状態 | 例)木の場合 | |
材料 | もとの形が残っている | 家を建てるときは「材料」 |
原料 | もとの形が残っていない | 紙を作るときは「原料」 |
原材料 | 原料と材料の両方、または区分が曖昧なもの | 木は材料にも原料にもなる「原材料」 |
素材 | 加工される前の材料で、まっさらな状態の特徴に焦点を当てたもの | 木の「素材」の特徴は木目 |
資材 | 特に産業や経済を支える原材料で、ある程度加工されたもの | 木は建築や土木の「資材」 |
このページでは「材料/原料/原材料/素材/資材」の違いについて、詳しい意味と具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。
「材料/原料/原材料/素材/資材」の意味と例文
まず、「材料/原料/原材料/素材/資材」の辞書での意味を確認しておきましょう。
【材料】
1.物を製造・加工するとき、もととして用いるもの。原料。資材。
2.調査・発表・研究などのもととなる資料。データ。
3.芸術作品の題材。素材。【原料】
物を製造・加工するとき、もととして用いる材料。【原材料】
生産のもとになる材料。原料と材料。【素材】
1.もとになる材料。
2.芸術作品の題材となるもの。【資材】
物を作る材料とする物資。出典:『明鏡国語辞典』
少しずつ説明は違うものの、辞書だけでは具体的な意味の違いや使い分け方はわかりません。より詳しい意味や例文を見ながらそれぞれの違いを確認していきましょう。
「材/料/原/素/資」の意味
言葉の意味を知るときには、漢字の意味を知るとよりわかりやすくなります。それぞれの言葉を分解して、一つずつ漢字の意味を確認しておきましょう。
「材」は「木+才」から出来ています。「才」は川の氾濫を遮って止めるために建てられた堰(せき)を表しています。左側は「木」ですから、「材」は木で作った堤防のようなもののことです。堰(せき)は氾濫を止める重要な役割を持っていることから、「材」は「物事に役立つもの」という意味を持つようになりました。
「料」は「米+斗(ます)」から出来た漢字です。左側の「米」は広く穀物のことを、右側の斗(ます)は米を量るときの道具を表しています。「料」は、何かを作るときに、そのもとになる米の分量を量っている様子で、ここから「もとになるもの」という意味を持つようになりました。
「原」は「厂(がけ)+泉」から作られています。削り取られた崖の岩穴から泉が湧き出ている様子、つまり水源を表しています。このことから「原」は、「みなもと、もと」という意味を表します。
「素」は「垂+糸」から出来ていて、束ねた糸が垂れ下がっている様子です。糸を染める時には、糸を束上に結んで染め汁の入った鍋に漬けるのですが、結んだ箇所は染まらず白い色のままで残ります。そこから「素」は「加工する前のまっさらな状態」を指します。
「資」は「次+貝」から出来ています。「欠」は人がしゃがんで休んでいる様子で、「貝」は古代に貨幣として使われていた二枚貝です。この二つが組み合わさった「資」は、休んでいるときでも持っている手持ちの財産を表しており、そこから「元手となるもの」という意味を持つようになりました。
「材料」の意味と例文
すべての漢字の意味がわかったので、「材料/原料/原材料/素材/資材」の意味を確認しましょう。
「材料」は「物事に役立つもの+もとになるもの」で、何かを作るときに、そのもとにするもののことです。もっとも一般的に使われる言葉で、以下のようにさまざまな場面で使われます。
・家の柱の材料にヒノキを選んだ。
・採否を決める判断の材料が足りない。
・小説を書くための材料は自分の中にある。
料理や家などのような形のある物を作るときだけではなく、判断や研究の資料になるものや芸術活動の題材になるものも「材料」と言うことができます。
また、形があるものを作る場合の「材料」は、もとの形が残っているという点が特徴です。料理になんの材料を使ったのかは見れば大体わかりますし、柱ももとは木だったということはわかりますよね。そのような場合には「材料」を使います。
「原料」の意味と例文
「原料」は「みなもと+もとになるもの」で、「材料」と同じく形のある物を作るときのもとになるものです。「みなもと」という意味の漢字が使われていますが、「材料」よりも更に初期的な状態にしたものを指すという点が特徴です。例文を見てみましょう。
・これは植物を原料にしている手にやさしい洗剤です。
・豆板醤の主な原料は大豆だ。
一つ目の例文を、先ほどの「材料」の例文と比べてみましょう。柱は見れば木だとわかるので「材料」ですが、紙は見ても木だとはわかりません。これは木が違う製品に加工できるように、「材料」よりももっと初期的な状態にしてあるということです。そのようなものは「原料」と言います。
その他の例文も同じで、洗剤を見ても植物から作られているはわかりませんし、豆板醤が大豆から作られているのもわかりません。だから「原料」を使います。
「原材料」の意味と例文
「原材料」は「材料と原料」のことです。以下の例文を見てください。
・間伐材を原材料とした木材製品は資源の有効利用として期待されている。
製品にはさまざまな材料と原料が入っているので、ラベルには「原材料」が表示されています。また、間伐材は割り箸にすれば「材料」ですし、紙にすれば「原料」です。同じ木でも、使い方によっては材料にも原料にもなるため「原材料」を用います。
「素材」の意味と例文
「材料」「原料」「原材料」は、何かを作るときのもとになるものがどのような状態なのかという点で違いがありましたが、「素材」「資材」は少し違います。
「素材」は材料のある点に注目した言葉で、「資材」は原材料がどこで使われるのかと関わっている言葉です。詳しく見ていきましょう。
「素材」は「加工する前のまっさらな状態+物事に役立つもの」で、物を作るときに用いられるものの加工前の特徴に注目した言葉です。
・わが社は、木の素材を活かした家づくりをしています。
・歴史小説とは、史実を素材として構成された小説のことだ。
・自分という素材を消さずに演技に取り入れた。
例えば、玉ねぎはカレーの「材料」ですが、玉ねぎの「素材」としての特徴は、炒めると甘くなるということです。「素材」は、そのもの自体が持っている特徴に焦点を当てた言葉なのです。
「木の素材を活かす」と言った場合にも、ただ木を使うということではなく、木の木目の美しさや断熱性の高さといった木の特性を活かすということです。
また、「素材」は「材料」と同じように、形のないものに使うことも出来ます。例文のように「史実」や「自分」なども「素材」と言うことができます。
「資材」の意味と例文
「資材」は、「元手となるもの+物事に役立つもの」です。他の言葉と違い「元手」、つまり金銭が関係しているのが特徴です。
・スタジオには写真撮影に使用される機材や資材が用意されている。
「資材を積んだトラック」と聞いて、家庭用の料理に使う野菜が積んである様子は想像しないと思います。建設や工事に使われる木材や砂利、セメントなどを思い浮かべたのではないでしょうか。
「資材」は産業や経済の場で使われる言葉で、生産や消費といった経済活動と深く関わりのある場面で用いられます。
「材料/原料/原材料/素材/資材」の違い、まとめ
「材料/原料/原材料/素材/資材」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。最後にもう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にお役立てください。
状態 | 例)木の場合 | |
材料 | もとの形が残っている | 家を建てるときは「材料」 |
原料 | もとの形が残っていない | 紙を作るときは「原料」 |
原材料 | 原料と材料の両方、または区分が曖昧なもの | 木は材料にも原料にもなる「原材料」 |
素材 | 加工される前の材料で、まっさらな状態の特徴に焦点を当てたもの | 木の「素材」の特徴は木目 |
資材 | 特に産業や経済を支える原材料で、ある程度加工されたもの | 木は建築や土木の「資材」 |