「努める」「勉める」「勤める」「務める」は、どれも「つとめる」と読みますが、意味や使う場面が少しずつ違います。その違いをまとめると以下のようになります。
意味 | 場面 | |
努める | 力を尽くす | 様々な場面で |
勉める | 主に学問の場面で ※ただし、常用外漢字 | |
勤める | 仕事に力を尽くす | 職場に勤務して。または、仏道や刑期を |
務める | 役割や任務を担当して |
このページでは「努める」「勉める」「勤める」「務める」の違いについて、詳しい意味を具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。
このページの目次
「努める」「勉める」「勤める」「務める」の意味と例文
まず、「努める」「勉める」「勤める」「務める」の辞書での意味を確認しておきましょう。
【努める・勉める】
事をなしとげようとして力を尽くす。【勤める】
1.会社や役所などに雇われて、一定の仕事に従事する。勤務する。
2.仏に仕え仏道に励む。勤行する。
3.一定の任期や刑期をまっとうする。勤め上げる。【務める】
役割や任務を引き受けて、その仕事をする。役割や任務に当たる。出典:『明鏡国語辞典』
「努める」と「勉める」は意味の近い言葉で、辞書では同じ項目で説明されていることが多いです。また、「勤める」と「務める」も「仕事をする」という点では共通しており、辞書の意味だけでは違いははっきりしません。より詳しい意味や例文を見ながらそれぞれの違いを確認していきましょう。
「努」「勉」「勤」「務」の漢字の意味
言葉の意味を知るときには、漢字の意味を知るとよりわかりやすくなりますので一つ一つ見ていきたいと思います。
まず「努」からです。上にある「奴」は、女性の奴隷を表しています。下の「力」は力強い腕の様子から作られた文字です。「奴+力」で作られた「努」は、力を尽くして働く女性の奴隷のことで、そこから粘り強く力を尽くすという意味を持つようになりました。
次に「勉」ですが、左側の「免」は女性が股を開いて出産する様子を表しています。そして右側には「力」がありますが、これは先ほど説明した通り「力を尽くす」という意味です。出産はとても大変なことで、必死に力まなければなりません。ここから「勉」は、困難に耐えて努力することや、無理をしてでも励むといった意味を示すようになりました。
「勤」の左側にある字は「廿(動物の頭)+火+土」から作られていて、動物の頭蓋骨を燃やした様子を表しています。「勤」は、そこに「力」が加わって頭蓋骨が粉々になった様子です。ここから「勤」は、細かいところまで力を出し尽くすことや、こまめに働くという意味を持っています。
最後に「務」ですが、「務」の左側には「矛」の字があります。これは槍のような形の武器を描いたものです。右側にある字は、物を手で持ち、力を出している様子です。「務」は、戦う者として武器を持って困難な局面に切り込む様子を表しています。ここから「務」は、やらなければならない仕事や任務に力を尽くすという意味を持っています。
「努」「勉」「勤」「務」にはどれも「力」という字が使われており、「力を尽くす」という共通の意味を持っています。しかし、どのように力を尽くすのかや、どのような場面で使われるのかに少しずつ違いがあります。
では、以上のような漢字の意味の違いを踏まえながら「努める」「勉める」「勤める」「務める」の使い方の違いを、例文を見ながら確認していきましょう。「努める」「勉める」と「勤める」「務める」の二つのグループに分けて考えるとわかりやすいので、そのように見ていきます。
「努める」「勉める」の意味と例文
「努める」と「勉める」は、女性の奴隷の様子や女性が必死に出産をする様子から作られた漢字が用いられており、どちらも粘り強さを持って取り組むこと、無理をしてでも必死になって行うという意味を持っています。
もともとの語源は同じだと考えられており、現在ではほぼ同じ意味で用いられています。
大きな違いといえば、「努」は常用漢字で、「勉」は常用漢字ではないという点です。常用漢字とは文化庁によって定められた、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安を示すものです。常用漢字ではないものは法令、公用文書、新聞、雑誌、放送などでは使われません。
そのため、常用漢字である「努める」のほうが広く使われています。例文を見てみましょう。
・製品開発に努めた結果、ついに成功した。
・気持ちをさとられないように努めて明るく振舞った。
・資格試験に合格するよう日々勉強に勉めている/努めている。
・各大学との共同研究による学術活動にも勉めている/努めている。
上記の例文ではどれも「努める」を使えばよいのですが、「勉める」が使われる場合もあります。「勉める」は学問や勉強に関わる場面であえて使われることがあるのです。
「勤める」「務める」の意味と例文
では、次に「勤める」と「務める」を見てみましょう。「勤める」「務める」も「努める」「勉める」と同じように力を尽くして何かに取り組むという点では共通していますが、「勤める」「務める」は仕事や任務などを担当して働く場面で使われます。
「勤める」と「務める」の違いは、「勤める」は職場で勤務する場合に用い、「務める」は役割を担当する場合に用いるという点です。例文を見てみましょう。
・父は市役所に勤めています。
・二年ほど田舎の小学校へ勤めたことがあります。
・本日の司会を務めさせていただきます。
・祖母が私の親代りを務めてくれました。
「市役所」や「小学校」のように具体的な勤務先や会社とともに、そこで力を尽くすことを言いたい場合には「勤める」を用い、「司会」や「親代わり」のように、ある役割を担って力を尽くす場合には「務める」を用います。
なお、「勤める」は以下のような場面でも使われます。
・日夜念仏に勤める。
・刑期を務め上げる。
仏道の修行や罪に対する刑を受ける場合には「勤める」を用います。仏道や刑罰を担うことは仕事なのか任務なのか区別はつきにくいですよね。なので、これらについては「勤める」を使う特殊な場面として覚えておくのが良いと思います。
「努める」「勉める」「勤める」「務める」の使い分けのヒント
ここまでの説明で「努める」「勉める」「勤める」「務める」の違いはおわかりいただけたでしょうか。わかったけれども、いざ使おうと思うと「どれだっけ?」と迷うことがあるかもしれません。
そんな時のために、「努める」「勉める」「勤める」「務める」を使った熟語を覚えておくことをおすすめします。熟語から類推することで、使い分けのポイントが思い出しやすく、わかりやすくなります。私がおすすめするのは以下の熟語です。
努める:努力(力を尽くして一生懸命取り組む)
勉める:勉強(自分を強いて学問に励む)
勤める:勤続(同じ勤務先で続けて働く)
務める:任務(果たすべき役目)
「努める」「勉める」「勤める」「務める」の練習問題
ここまでの説明で「努める」「勉める」「勤める」「務める」の違いがわかったと思いますので、最後に練習問題をして確認しておきましょう。
以下の場面に合うように「努める」「勉める」「勤める」「務める」を選んでください。答えは、記事の一番最後にあります。
②入団後は、新人ながらいきなり開幕投手を(つとめた)。
③亡くなって一年後に(つとめる)法事が一周忌です。
④社員教育の徹底と信頼回復に(つとめて)まいります。
⑤長年(つとめた)自動車部品のメーカーを3月で退職した。
「努める」「勉める」「勤める」「務める」の違い、まとめ
「努める」「勉める」「勤める」「務める」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。
最後にもう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にご活用ください。
意味 | 場面 | |
努める | 力を尽くす | 様々な場面で |
勉める | 主に学問の場面で ※ただし、常用外漢字 | |
勤める | 仕事に力を尽くす | 職場に勤務して。または、仏道や刑期を |
務める | 役割や任務を担当して |
<練習問題の答え>
①勉めず/努めず ②務めた ③勤める ④努める ⑤勤める