「山」と「丘」はどちらも「周囲よりも高く盛り上がった地形」のことです。「山」のほうが「丘」より高いイメージですが、漢字や地形の成り立ちなどを調べるとさまざまな違いがあります。その違いを簡単にまとめると以下のようになります。
山 | 丘 | |
辞書の意味 | 周りの土地より著しく高くなった所 | 土地の小高くなった所。低い山 |
漢字の成り立ち | 高く盛り上がった土地の様子から | 低くくぼんだ土地の様子から |
地形の成り立ち | 主にプレートの衝突による隆起 | 主に断層のずれや浸食、または人工的 |
国土地理院の定義 | 定義なし。ただし、地形図記載の条件は以下の三点。 |
この記事では「山」と「丘」の違いを、さまざまな観点から掘り下げて詳しく解説しています。
「山」「丘」の違い
「山」と「丘」の違いを、辞書の説明、漢字の成り立ち、地形の形成、そして、国の基本図である「地形図」を発行する国土地理院の定義から確認していきます。
「山」「丘」の辞書の意味の違い
まずは、辞書で「山」と「丘」の意味の違いを見てみましょう。ここでは、慣用的に使われる場合の意味ではなく、土地に関する意味だけを取り上げます。
【山】
周りの土地より著しく高くなった所。また,山登り。【丘】
周囲より小高い所。普通,山より低く,傾斜のゆるやかなものをいう。出典:『ハイブリッド新辞林』
山のほうが丘よりも高い、丘のほうがなだらかだということがわかります。これは一般的に持っているイメージと近いのではないでしょうか。
「山」「丘」の漢字の成り立ちの違い
では次に、「山」と「丘」の漢字の成り立ちから違いを見てみたいと思います。
「山」は、山脈の様子から作られています。山脈は、△型のいくつかの山が左右に連なって出来ていますよね。こんな感じに、「△△△」。連なる山々の底辺に横線を引き、それぞれの△の頂点と底辺を縦の線で結んでできた漢字が「山」です。
「丘」は、周囲が小高くて中央がくぼんだ盆地の様子から作られています。「△△」の真ん中はくぼんでいますよね。この二つの△が中央に傾きながらくっついて「丘」という漢字になりました。「丘」の真ん中には「口」がありますが、そこはもともとはくぼみを表していた部分なんです。
「山」と「丘」の漢字の成り立ちを見ると、真反対だということに気づきませんか。「山」は上に高く盛り上がった土地の様子を、「丘」は下に凹んだ土地の様子から作られているんです。
このことは、「山」と「丘」の地形の成り立ちとも関係しています。
「山」「丘」の地形の成り立ちの違い
「山」はどのようにしてできるのでしょうか。「山」にもいくつかの種類がありますが、主なものに、火山の噴火でできたものと、地球の表面を覆っている岩盤プレートがぶつかり隆起してできたものがあります。
どちらも上に向かって高くなってできたというのが特徴です。
では、「丘」はどうでしょうか。「丘」にもいろいろな種類がありますが、主な要因は断層が沈み込むことや、川による土地の浸食です。土地が沈んだり、削り取られたりすると、その部分は低くなりますが、周辺には高い土地が残ります。これが「丘」となったのです。
先ほど、「山」という漢字は上に高く盛り上がった土地の様子から、「丘」は下に凹んだ土地の様子から作られていると説明しましたが、それぞれの漢字は、実際の地形の成り立ちが踏まえられているのです。
尚、「丘」という地形にはもう一つの特徴があります。それは、築山(つきやま)や古墳のように人工的に作られたものがあることです。築山は、庭園などに石や土を盛って作った小山のことです。「山」は自然現象で生じたもので、人が「山」を作るということはできませんが、「丘」は墓地や公園などとして新たに作ることができるのです。
「山」「丘」の国土地理院の定義の違い
では次に、国土地理院の「山」「丘」の定義を見てみましょう。国土地理院は国の基本図である「地形図」を作っており、この「地形図」を見ると日本の土地の高低や河川の位置などさまざまなことがわかります。
「地形図」には「〇〇山」や「○○丘」のように名前も掲載されているので、「山」と「丘」の違いも明確に定義されていそうですが、国土地理院では定義をしていません。
Q2.9:丘と山を区別する基準は何ですか?
A2.9
国土地理院では定義はしていません.
辞典等によりますと,丘は,その周囲より高いが,山よりは低くかつ傾斜のゆるやかな地形である.山と丘の区別は明確ではなく,この定義に当てはまる地形であっても「山」あるいは「山岳」と呼ばれる場合もあります。
実際、日本一低い山は宮城県の「日和山」で標高3メートル、日本一高い丘は山梨県の「清里の丘」で標高1150メートル。丘は山よりは低いとは言えないのです。
では、「地形図」にある「〇〇山」や「○○丘」はどのようにして決められているのでしょうか。
国土地理院では「地形図」に掲載する条件は、「地元住民が山と呼んでいるか」「地元自治体が公式名称としているか」「国土地理院が記載を妥当と判断するか」の三点としています。つまり、地域の人々が、そこにある周囲より高い土地をどう呼んできたかで「山」と「丘」を区別しているということなのです。
「山」「森」の違い、まとめ
「森」と「林」の様々な違いが、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。最後にもう一度違いをまとめた表を載せておきます。頭の中の整理にお役立てください。
山 | 丘 | |
辞書の意味 | 周りの土地より著しく高くなった所 | 土地の小高くなった所。低い山 |
漢字の成り立ち | 高く盛り上がった土地の様子から | 低くくぼんだ土地の様子から |
地形の成り立ち | 主にプレートの衝突による隆起 | 主に断層のずれや浸食、または人工的 |
国土地理院の定義 | 定義なし。ただし、地形図記載の条件は以下の三点。 |