「節約」「倹約」は、どちらも「無駄に使わない」という意味ですが、何をどのように使わないのかという点で違いがあります。その違いを簡潔にまとめると以下のようになります。
何を | どのように | |
節約 | 金銭、品物、時間、エネルギーなど | 無駄を省いて、切り詰める |
倹約 | 主に金銭 | 無駄遣いをせず、地味で質素にする |
このページでは「節約」「倹約」の違いについて、詳しい意味と具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。
「節約」「倹約」の意味と例文
まず、「節約」「倹約」の辞書での意味を確認しておきましょう。
【節約】
むだを省いて、きりつめること。倹約。【倹約】
費用を切り詰めて無駄遣いしないこと。節約。出典:『広辞苑』
辞書の説明では「節約」は「倹約」、「倹約」は「節約」となっており使い分けはほとんどわかりません。より詳しい意味や例文を見ながら、それぞれの違いを確認していきましょう。
「約」「節」「倹」の意味
言葉の意味を知るときには、漢字の意味を知るとよりわかりやすくなりますので一つ一つ見ていきたいと思います。
まず、「節約」「倹約」のどちらにも使われている「約」からです。「約」の左側は糸で、右側の「勺(シャク)」は何かをすくいとるときに使うひしゃくです。「糸+勺」は、すくったものを糸でまとめて引き締める様子を表しています。ここから「約」は、「一点に向けて引き締める」「小さく細く縮める」のような意味を持つようになりました。
では、次に「節」です。「即」という字がありますが、この字の左側はごちそうを、右側はひざを折ってひざまずいている人の様子を表しています。「即」の上に竹がついた「節」は、ごちそうの前でひざを折っている足の区切れの部分と、一段ずつ区切れる竹のふしが同じであることを表しています。そこから、「境目があるふしめの部分」や「ふしめを越えないように、ほどほどに抑える」のような意味を持つようになりました。
続いて「倹」の成り立ちも見てみましょう。「倹」の右側の字は、もともと「僉」という形でした。上にあるのは屋根や蓋で、その下に描かれているのは、口のある二人の人間です。「僉」は、二人の人が放置された多くの物をひと所に集めている様子を表しています。そして、「倹」の左側には「人」がいますが、この人はその二人を見張って締め上げています。ここから、「倹」は締まりがない状態で散らかしておくのではなく、「きちんと引き締めた生活をする」「つましくする」というような意味を持つようになりました。
では、それぞれの漢字の意味がわかったので、「節約」「倹約」について詳しく見ていきましょう。
「節約」「倹約」の意味
「節約」は、それぞれの漢字の意味を組み合わせると「ふしめを越えないように抑える+引き締める」となります。「節約」は、区切りを決めてそれを越えないように切り詰めて、度を越えないようにすることです。
「倹約」は、「つましくする+引き締める」となり、無意味な、あるいは不要な出費を控えて地味で質素にすることです。
つまり、「節約」は、切り詰めることを主な目的として、そのために無駄を省こうとすることですが、「倹約」は、つましい生活を送るために無駄遣いをしないようにするという違いがあります。
「節約」は、切り詰めるためなら金銭に限らず時間やエネルギーなどさまざまなものを省いていきますが、「倹約」は主に金銭の出費を抑える場合に用いられます。
「節約」「倹約」の例文
「節約」「倹約」は、これまで説明してきたような意味の違いはあるものの、「無駄なお金は使わない」という共通する部分もあるので、どちらでも使える場合があります。
・生活費を節約/倹約する方法を学んだ。
・少しでも安いものを探して、節約/倹約するようにしている。
・節約/倹約の効果が出て、貯金が増えてきた。
上記の例文のように、不要な出費を抑えるという意味の場合には、「節約」「倹約」のどちらでも使うことができます。
では、次にどちらか一方しか使えない例、またはどちらか一方のほうがより適切な例を見て、違いを確認していきましょう。
・電車より飛行機を使って、時間を節約することにした。
・油汚れを新聞紙で落としてから洗うと、水を節約できます。
・この発見で、大幅に時間と労力が節約された。
時間や水、労力などのエネルギーの使用を抑える場合には「節約」を用います。上記の例文の「節約」を「倹約」に言い換えることはできません。
・質素倹約な生活を貫き、財力を教育方面への社会還元に使った。
・母は勤勉と倹約と献身を常に心がけていた人でした。
・彼は派手な格好をしているが、実は倹約家で浪費は一切していない。
「質素倹約」は、飾り気がなくつましく暮らすという意味なので「倹約」を使います。また、「勤勉・倹約・献身」のような、あるべき姿や心構えを言う場合には「倹約」がよりしっくりします。
「派手な格好をしているが、実は倹約家」の場合、派手な格好をすることになんらかの目的があってお金を使っているので無駄遣いをしているわけではないということになります。そのような場合には「倹約」が適しています。「節約」の場合には、切り詰めることが目的なので派手な格好すらしないイメージです。
「節約」「倹約」の違い、まとめ
「節約」「倹約」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。最後にもう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にお役立てください。
何を | どのように | |
節約 | 金銭、品物、時間、エネルギーなど | 無駄を省いて、切り詰める |
倹約 | 主に金銭 | 無駄遣いをせず、地味で質素にする |