「継承」「承継」の違いと使い分けの例文

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「継承」「承継」は、どちらも「先代、先任者などから受け継ぐ」という意味ですが、何を受け継ぐのか、どのような場面で使うのかという点で違いがあります。その違いを簡潔にまとめると以下のようになります。

 ①何を受け継ぐのか②どのような場面で使うのか
継承地位、財産、権利、仕事を主に土地や技術などの具体的なもの広く一般的な場面で
承継主に理念や思想などの精神的なもの主に法律や契約場面で

このページでは「継承」「承継」の違いについて、詳しい意味と具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。

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「継承」「承継」の意味と例文

まず、「継承」「承継」の辞書での意味を確認しておきましょう。

【継承】
前代の人の財産・地位・権利・義務または、仕事などを受けつぐこと。承継。

【承継】
地位・役職・事業・財産などをうけつぐこと。継承。

出典:『学研国語大辞典』

多くの辞書で、「継承」を調べるとその意味の中に「承継」とあり、また「承継」と調べると「継承」と書かれていました。それほど「継承」と「承継」は似通った意味を持っており、実際に「継承」と「承継」のどちらでも使える場合もあります。

ここでは詳しい意味や例文を解説するとともに、どちらか一方しか使えない場合とどちらを使ってもいい場合についても確認していきます。

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「継」「承」の意味

言葉の意味を知るときには、漢字の意味を知るとよりわかりやすくなります。「継承」と「承継」はどちらも「継」「承」という漢字の組み合わせですから、まずそれぞれの意味を確認しておきましょう。

「継」の右側の部分は「ばらばらに切る」ことを示しています。左側の部分は「糸」です。この二つが組み合わさった「継」は「ばらばらに切ったものを糸でつなぐ」様子を表しています。そこから、「糸でつなぐように、先人の地位・仕事・物などを受けて行う。後を継ぐ」という意味になりました。

「承」の中央には「了」という字がありますが、この上の部分は人がひざまずいている様子を表しています。そして、その下の三本線がある部分は「手」を表しています。また、「了」の両側で対になっている字は「二つ」であることを表しています。これらを組み合わせた「承」は、「人がひざまずいて、両手で持ち上げながら受け取る」様子を表しています。そのような行為は相手を敬いながら受け取るときにすることから、「相手の意に沿って引き受ける。承る」という意味で使われるようになりました。

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「継承」「承継」意味の違いと例文

では、「継」「承」の組み合わせから出来ている「継承」「承継」の意味の違いを見てみましょう。

「継承」は「継=つなぐ」が先にあるので、「受け継ぐ」ことに重きが置かれています。前からの物事や状態などを維持することが重視されている言葉です。

一方で「承継」は「承=相手の意に沿って引き受ける」が先にあるので、相手の気持ちや考えに沿うことが重視されています。様々な辞書で「承継」の意味を調べたところ、『大辞泉』には「先の人の地位・事業・精神などを受け継ぐこと」と「精神」が言及されていました。このことからも「承継」は気持ちを受け継ぐことに重きが置かれた言葉だということがわかります。

「継承」「承継」のどちらか一方しか使えない場合

では、具体的な例文を見てみましょう。

〇先祖の土地を継承する。
✕先祖の土地を承継する。

〇孫が著作権の継承者となった。
✕孫が著作権の承継者となった。

「土地」や「著作権」といった具体的な物や権利・資格を受け継ぐ場合には「継承」が適切です。

✕経営への想いを継承することが要だ。
〇経営への想いを承継することが要だ。

「想い」や「精神」を受け継ぐ場合には、「承継」が適切です。

また、耳慣れない言葉ですが、以下のような法律や契約関係の場面では「承継」を用います。

・承継執行文
・中小企業経営承継円滑化法

「継承」「承継」のどちらでも使える場合

以下の例文では「継承」と「承継」のどちらでも使えますが、ニュアンスは若干異なります。

・伝統を継承する。
・伝統を承継する。

「伝統を」とした場合には「承継」のほうがよりしっくりきます。なぜなら伝統を受け継ぐときに精神面は切り離せないと考えられるからです。しかし、「伝統」の中には技術的なことも含まれるので、「継承」でも間違いではありません。「伝統工芸の技術を」のようにより技術面を強調すると「継承」のほうがよりしっくりしてきます。

・事業を継承する。
・事業を承継する。

この場合も「継承」「承継」のどちらも使えますが、「継承」の場合には、地位だけを受け継いで経営理念等は刷新するという意図が感じられ、「承継」の場合には、地位だけではなく経営理念も受け継ぐという意図が感じられます。

なお、法律用語としては「事業承継」が使われます。

「継承」「承継」の違い、まとめ

「継承」「承継」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。「承継」と「継承」の使い分けはなかなか難しいのですが、精神面まで受け継ぐのかどうか、法律用語として使うのかどうかという二点を抑えておくとわかりやすくなります。

最後にもう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にお役立てください。

 ①何を受け継ぐのか②どのような場面で使うのか
継承地位、財産、権利、仕事を主に土地や技術などの具体的なもの広く一般的な場面で
承継主に理念や思想などの精神的なもの主に法律や契約場面で
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