「規則」「規程」「規定」は、どれも「それに基づいて物事が行われるように定められた約束ごと」のことですが、以下のような違いがあります。漢字の成り立ちを知ると意味の違いがわかりやすいので、表にまとめてみました。
漢字の成り立ち | 意味 | |
規則 | 基準+法則 | 法則となる基準として定められたこと |
規程 | 基準+一区切り | 特定の目的のために定められたひとまとまりの決まりの全体 |
規定 | 基準+決める | ある物事を決まった形に決めること。また、定められた一つ一つの決まり |
このページでは「規則」「規程」「規定」の違いについて、詳しい意味と具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。
「規則」「規程」「規定」の意味と例文
まず、「規則」「規程」「規定」の辞書での意味を確認しておきましょう。
【規則】
1.それに基づいて、行動や手続きが行われるように定めたきまり。
2.同じことが一定の間隔で繰り返されるという法則。
【規程】
特定の事項に関する規定の全体。〔特に、官公庁などの執務に関する規則について言う〕
【規定】
1.判断のよりどころとするために、あいまいな内容をある決まった形に定めること。
2.行動の是非を判断するよりどころとなるべき個個の規則や条文(を定めること)。
出典:『新明解国語辞典』
どれも決まりであることはわかるものの、意味の違いや使い分けについては辞書の説明だけからではわかりません。以下で詳しい意味や例文を見ながら違いを確認していきましょう。
「規」の意味
言葉の意味を知るときには、一つ一つの漢字の意味を知るとよりわかりやすくなります。
「規則」「規程」「規定」のいずれにも「規」が使われていますので、まずその意味を見ておきたいと思います。
「規」の左側の字は、二本の棒が∧型に組まれたものを表しています。そして、右側の字は「見る」です。「規」は、∧型に組んだ二本の棒をコンパスのように使って円を書き、それを見る様子を表しています。
コンパスできちんとした円を書いたり、図面を区切ったりすることから「基準となる決まり」という意味を持つようになりました。「規範」「規律」などに用いられていることからも、そのことがわかると思います。
では、「規則」「規程」「規定」の意味を確認していきましょう。ここでもそれぞれの漢字の成り立ちを手掛かりにしながら見ていきます。
「規則」の意味と例文
まずは、「規則」です。
「則」は、「貝+刂」から成っています。「貝」は「鼎(カナエ)」という王様用の食器で「刂」は刀を表しています。「則」は、鼎にスープや肉を入れ、すぐそばにナイフを備えた様子で、「そばにくっついて離れない」という意味を示していたのですが、のちに「Aの後にすぐにBがくっついて起こる」「常にそうである」ということ、つまり「法則」という意味で用いられるようになりました。
「規則」は「基準+法則」から出来ている言葉で、物事の決まり、秩序、順序、ルールのような「従うべき定めごとや掟」という意味です。「規則」「規程」「規定」の中では、「規則」が最も一般的でかつ広い範囲で用いることができます。例文を見てみましょう。
・最高裁判所規則に従う。
・規則正しい生活を送る。
「規則」は学校や会社のような団体・組織などのルールにも使われますし、国が定める決まりや法律にも使われます。さらには「規則正しい生活」のように「一定の秩序をもった」という意味でも用いられます。
「規程」の意味と例文
次に、「規程」についてです。
「程」の左側の字は「禾(のぎへん)」で、穂先が垂れかかる稲を表しています。また右側の字は、まっすぐ立った人を表しています。「程」は、人が稲が一定の長さに伸びているかを測っている様子で、そこから「一区切りの長さやあるひとまとまりの分量」を表す場合に用いられるようになりました。
「課程」のように一区切りになったコースを表す場合や、「工程」のようにある作業の始めから終わりというまとまりの中での手順を示す場合に用いられます。
「規程」は「基準+ひとまとまり」から出来ており、「特定の目的のために定められた決まりの全体」のことを指します。
・両院協議会に関する規程
「服務規程」は「仕事に従事する者が守るべき事柄」の全体を指します。この服務規程の中に、個々の細かい決まりが定められています。また、「規程」は特に、官公庁などの執務に関する規則について言うときに用いられます。
「規定」の意味と例文
次に、「規定」についてです。
「定」は「宀(やね)」の下に立ち止まる足がある様子を表していて、足をまっすぐ家の中に立てて止まること、一ヶ所に落ち着いて動かない様子を表しています。ここから「物事を一つに決める/決まる」という意味を持つようになりました。
「定刻」のように約束で決められた時刻や、「定義」のようにある事物や用語の意味・内容を明確に限定することを表すような場合に用いられます。
「規定」は「基準+決める」から出来ており、「ある物事を一つの定まった形に決めること。また、そうして決まったこと」という意味です。一つ一つ決めることに焦点が当たった言葉なので、「決まったこと」が指すのは「個個」のことで、「規程」のようなまとまり全体ではありません。
また、「規定」は「規定する」のように使うこともできます。一方で「規程」は「規程する」とは言えず、「規程を制定する」のように言う必要があります。「規定」「規程」は、読み方は同じですが意味も使い方も異なるため注意が必要です。
・第一条に規定するところに従う。
「規則」「規程」「規定」の違い、まとめ
「規則」「規程」「規定」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。最後にもう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にお役立てください。
漢字の成り立ち | 意味 | |
規則 | 基準+法則 | 法則となる基準として定められたこと |
規程 | 基準+一区切り | 特定の目的のために定められたひとまとまりの決まりの全体 |
規定 | 基準+決める | ある物事を決まった形に決めること。また、定められた一つ一つの決まり |