「該当」「当該」の違いと使い分けの例文

「該当」「当該」は二つの同じ漢字の組み合わせですが、順番が違うだけで意味と用法は違います。「該当」と「当該」の違いを簡潔に表すと以下のようになります。

 意味用法
該当条件や枠に一致している・適合している

該当+名詞、〇該当する
幅広い場面

当該取り上げられている話題・事項のまさにそのこと

当該+名詞、✕当該する
改まった場面

このページでは「該当」「当該」の違いについて、詳しい意味と具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。

「該当」「当該」の意味と例文

まず、「該当」「当該」の辞書での意味を確認しておきましょう。

【該当】
ある条件・資格などに、当てはまること。

【当該】
いま話題になっている事柄に直接関係すること。まさに、そのもの。また、その担当であること。

出典:『大辞泉』

辞書の説明で意味の違いはわかりますが、使い方にも慣れておく必要があります。詳しい意味や例文を見ながら、それぞれの違いを確認していきましょう。

「該」「当」の漢字の意味

「該当」「当該」はどちらも「該」「当」という漢字の組み合わせですから、まずそれぞれの漢字の意味を確認しておきましょう。

「該」の右側にある「亥」はイノシシの全身の骨格を描いた象形文字で、「枠や条件」という意味があります。「該」は「言=言葉」+「亥=骨格・枠」の組み合わせで、戦争等の際に全面にはりめぐらす命令や条件のことを表しています。

「当」は、「ボールが当たる=ぶつかる」「当選=何かに選ばれる」「祖父に当たる人=そのような関係にある」のように様々な意味を持っています。しかし、根底にあるのは「まさにぴったり」という意味です。「当」は元々「當」と書き、これは「田んぼの中で神様を祭る儀式」を表しています。儀式は、田植えや稲刈りに丁度良い時に行うことから「まさにぴったりなその時に」という意味で使われていました。そこから「ボールが当たる=ボールと体がぴったりぶつかる」や「当選する=一位としてぴったり選ばれる」のようにも使われるようになりました。

「該当」「当該」意味の違いと例文

では、「該」と「当」の組み合わせから出来ている「該当」「当該」の意味の違いを見てみましょう。

「該当」は「該=条件に+当=まさにぴったり」なので、「条件にぴったり合う。適合する」という意味です。例文を見てみましょう。

・これら5つのうち2つ以上に該当する場合は、申し出ること。
・主婦の目撃した車に該当するものはなかった。

「該当」を使う場合には、条件や枠組みがあることが前提です。

最初の例文では5つの項目が示されていて、それに当てはまることが「該当する」ということになります。二つ目の例文では、目撃者である主婦が証言した車の車種や色といった枠組みに合うものが「該当する車」ということになります。

では、「当該」はどうでしょうか。「当=まさにぴったり」+「該=条件」なので「該当」と違わないのではないかと思ってしまいますが、「当」が先であることに注目しましょう。条件に合っているかよりも「まさにぴったり」であることに重点が置かれています。例文を見てみましょう。

・ミスをした直後に当該選手を交代する行為は選手への侮辱とされている。
・国際経済の注目テーマについて、当該分野の専門家が2-4回程度に分けて解説。

一つ目の例文の「当該選手」とは、直前にある「ミスをした選手」のことで、「まさにその人」を指すために使われています。また、二つ目の例文では「注目のテーマにまさにぴったりの分野」という意味で「当該」が使われています。「当該」は、条件というよりも話題として取り上げられている事柄や人物を指して、「まさにそのことだ」ということを示すときに用いられます。

もう少し違いを理解するために、以下の例文の意味を考えてみましょう。

ある店のアイスクリームに毒を入れたとの脅迫があり、該当商品はすべて自主回収・撤去された。しかし、毒を入れたとされる当該商品は発見されなかった。

この状況での「該当商品」はアイスクリームという条件に当てはまるものすべてです。そして、「当該商品」は毒の入っているまさにその商品ということになります。

「該当」「当該」の場面の違い

「該当」は「該当事項」「該当人物」のように名詞と繋げて使うことができます。また「該当している」のように動詞としても使えます。一方で「当該」は「当該事項」のように名詞と繋げて使うことはできますが、「当該している」のように使うことはできません。

また、使える場面にも違いがあります。「該当」は、日常的な場面やビジネス場面、または公的文書や法律などの改まった場面などで幅広く使うことができますが、「当該」は日常的な場面では使いません。

先ほどの例文で「当該商品は発見されなかった」を日常会話で言うとすれば、「その商品は発見されなかった」のようにシンプルに言い換えることになります。

「該当」「当該」の違い、まとめ

「該当」「当該」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。最後にもう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にお役立てください。

 意味用法
該当条件や枠に一致している・適合している

該当+名詞、〇該当する
幅広い場面

当該取り上げられている話題・事項のまさにそのこと

当該+名詞、✕当該する
改まった場面

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