「信用」「信頼」の違いと使い分けの例文

「信用」「信頼」はどちらも「相手を信じること」ですが、①何を評価して、②どのように信じるのかという点で違いがあります。違いをまとめると、以下のようになります。

 ①何を評価して②どのように信じる
信用過去の実績や根拠を客観的に一方的に受け入れて
信頼相手の未来を主観的に相手が応えてくれると期待して

このページでは「信用」「信頼」の違いについて、詳しい意味と具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。

「信用」「信頼」の意味と例文

まず、「信用」「信頼」の辞書での意味を確認しておきましょう。

【信用】
1.確かなものと信じて受け入れること。
2.それまでの行為・業績などから、信頼できると判断すること。また、世間が与える、そのような評価。
3.現在の給付に対して、後日にその反対給付を行うことを認めること。当事者間に設定される債権・債務の関係。

【信頼】
信じて頼りにすること。頼りになると信じること。また、その気持ち。

出典:『大辞泉』

辞書の説明だけでは使い分けを理解することはできそうにないので、詳しい意味や例文を見ながら、それぞれの違いを確認していきましょう。

「信」の意味

辞書の説明ではどちらにも「信じる」という言葉が使われています。また、「信用」「信頼」のどちらにも「信」の漢字が使われていますので、まずここから確認しておきたいと思います。

「信」は、「人+言」から出来ています。「一度言ったことを変えずに押し通す人の行為」を表していて、途中で屈することなく、まっすぐ進むという意味を持っています。途中で屈せず変わることのないまっすぐな言動は「正しい・確実だ」と思えるのではないでしょうか。そこから「信じる=そのことが正しい・確実だと思う」という表現ができました。

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①何を評価して

では、「信用」と「信頼」の「①何を評価して」の違いを見ていきましょう。その違いを知るためには、「用」と「頼」の違いを知る必要があります。

「用」は「用いる」と言うように「使う・役立てる」という意味があり、このことから「信用」は、「何かに役立てるために信じる」、あるいは「信じることで何かの役に立つ」場合に用いられます。例文を見てみましょう。

・目撃者の証言を信用する。
・店の信用に傷がつく。

犯人を捜す場合にいい加減な証言を信じることはできません。しかし、証言は正しいと判断し「信用」したことで、捜査資料として役立てられることになります。また、「店の信用」は商売をしていくには欠かせないものですが、そこに傷がつくことで商売の役には立たないものになってしまいます。

「信用」は役立つことと密接な関係がありますから、正しい・確実だと思えるだけのしっかりとした根拠や実績が必要です。そして、それらを客観的に評価したうえで信じられるとなった場合に「信用する」と言うことができます。

では、次に「頼」です。「頼」は「たのむ・たよる」という読み方があるように、助けてくれるだろうとあてにしたり、期待したりするという意味を持っています。このことから「信頼」にも、相手はきっと応えてくれるだろうという期待感が含まれます。例文を見てみましょう。

・信頼していた友人に裏切られた。
・両親の信頼にこたえる。

若干意味合いは変わりますが「信頼していた友人」は「あてにしていた友人」に、「両親の信頼」は「両親の期待」に言い換えることができますね。

「信頼」に含まれる「期待」とは「良い結果や状態への望み」のことです。「望み」ですから、「信用」するときに必要な根拠や実績までは必要ありません。期待してもいいだろうと信じられる場合には、直感であっても「信頼」を使うことができます。「信頼」は、相手の未来を信じたいという主観的な気持ちが元になっていて、自身が信じてもいいと評価できれば「信頼する」と言うことができます。

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②どのように信じる

では、次に「②どのように信じる」かの違いを見ていきましょう。ここでも「用」と「頼」の違いが関係しています。

「用」の漢字は「長方形の板+ト印(棒)」から出来ていて、これは板の片方から棒で穴をあけて通す様子を表しています。棒が板を貫通して他の面にまで影響を与えることから「力・人・道などをある面にまで及ぼして使う」という意味になったのですが、その背後には「貫き通す」という意味合いもあります。

このことから「信用」にも「疑うことなく信じることを貫く」という意味があり、一方的に受け入れて信じる場合に用いられます。

「頼」に含まれる「あてにする・期待する」という感情は一方向では成り立ちません。あてにした相手側の変化や働きかけがあることを予期しているからこそ「期待する」のです。そのため「信頼」はお互いに信じ・信じられという関係のもとで使われます。「信用」は一方的で、「信頼」は双方向的だと言えます。

例文を見てみましょう。以下の例文では、「信用」と「信頼」を入れ替えることはできません。

・情報を鵜呑みにして信用してしまった。
・二人の間には信頼関係がある。

「鵜呑みにする」という一方的に信じる行為を表しているので、「信用」を使うのが適切です。また、「関係」は「二つ以上の物事が互いにかかわり合う」場合に使われる言葉なので「信頼関係」とは言えますが、一方的に信じる「信用」には使えません。

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「信用」「信頼」の違い、まとめ

「信用」「信頼」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。最後にもう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にお役立てください。

 ①何を評価して②どのように信じる
信用過去の実績や根拠を客観的に一方的に受け入れて
信頼相手の未来を主観的に相手が応えてくれると期待して