「あう」には、「会う」「逢う」「遭う」「遇う」「合う」といった様々な漢字が用いられます。それぞれ意味が違うので、意味と使い方をしっかり理解しておきましょう。それぞれの違いをまとめると、以下のようになります。
会う | 主に約束していた人と顔をあわせる | 広く一般的にあう |
逢う | 親しい人や貴重なものとあう | |
遭う | 主に偶然に物事を経験する | 事故や災いなど好ましくないことにあう |
遇う | 幸運や嬉しいことなど好ましいことにあう | |
合う | 一致する、調和する、つりあう |
このページでは「会う」「逢う」「遭う」「遇う」「合う」の違いについて、詳しい意味と具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。
「会う」「逢う」「遭う」「遇う」「合う」の意味と例文
まず、「会う」「逢う」「遭う」「遇う」「合う」の辞書での意味を確認しておきましょう。
あう【会う・逢う】
〔人と〕顔を合わせる。ある所に行って、(また、先方が来て)顔を合わせる。約束して、対面する。面会する。
あう【遭う・遇う】
〔ある物事に〕であう。経験する。遭遇する。逢着(ホウチャク)する。〔多く好ましくないことにいう〕
あう【合う】
1.〔二つ以上のものが〕集まって一つになる。つりあいがとれる。調和する。当てはまる。一致する。合致する。正しいものに一致する。正しくなる。引き合う。
2.たがいに…する。…していっしょになる。
出典:『学研国語大辞典』
辞書では、「会う・逢う」「遭う・遇う」「合う」の組み合わせで説明されています。「会う・逢う」は主に「人と顔をあわせること」、「遭う・遇う」は主に「物事を経験すること」、「合う」は主に「一致すること」という意味であることがわかります。でも、辞書だけでは「会う」と「逢う」、「遭う」と「遇う」の違いはわかりません。
それぞれの意味の違いや使い方をより詳しく見ていきましょう。
「会う・逢う」の違いと使い方
では、まず「会う・逢う」についてです。
「会う・逢う」は、主に「人と顔をあわせる」場合に使われますが、どのような人とあうかによって使い分けられます。その違いは、漢字の成り立ちを知るとわかります。
「会う」の「会」という字は、「△印(あわせる)+會(増える)」からできていて、多くの人が寄り集まって話をする様子を表しています。約束をしたり予定を決めて「あう」場合に用いられ、最も広く使われます。
「逢う」の「逢」という字の右側は、「△型の穂先を描いた象形文字+夂(足の形)」から出来ています。左側の字は「進む」ことを表す記号です。これらが組み合わさってできた「逢」は、両方から歩いて行って△型の峠の頂点でであうことを表しています。「会」と比べて、より特別な状況が表されていると感じませんか。
このようなことから「逢」は「会」のより美的な表現として使われ、親しい人や貴重なものとあう場合に使われます。
例文でその違いを確認してみましょう。
・いつもの場所で会おう。
・明日は恋人に逢える日だ。
・まさかこの世で逢えるとは。
あう相手が特別かそうでないかは、その文を書く人の気持ちによるので、厳密な使い分けを例文で示すことは難しいのですが、「恋人」という特別な人や、生きている間にあえるとは思っていなかった人にあえたというような特別な状況を表す場合には「逢う」が用いられます。
なお、「逢」は常用漢字(文化庁によって定められた、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安を示すもの)ではないため、法令、公用文書、新聞、雑誌、放送などでは使われません。
「遭う・遇う」の違いと使い方
では、次に「遭う・遇う」についてより詳しく見てみましょう。
「遭う・遇う」は、主に「物事を経験する」場合に使われますが、「会う・逢う」のように予定していた事柄ではなく、偶然経験する場合に用いられます。更に「遭う・遇う」には、次のような違いもあります。
「遭う」の「遭」という漢字の「曹」の部分は、「二つの袋+曰(いう)」からできていて、二人が一緒にいて話す様子を表しています。そこから何人もの人が雑然と話す様子も表すようになりました。左側の字は「進む」ことを表す記号で、「遭」は「無造作に出かけて雑然と一緒になる、予定なしに出くわす」という意味になりました。また、「曹」が表す二つの袋はただの袋ではなく、裁判の原告と被告がそれぞれの誓いを示す矢などを入れた袋なのだそうです。そのような漢字の成り立ちが背景にあるためか、「遭」は事件や事故、災いにあう場合に用いられます。
「遇う」の「禺」の字は、頭が大きくて人に似た猿を表しています。左側の字は「遭」の場合と同じで「進む」ことを表す記号です。この二つの字から「(人間のような)意志や目的は持たず、なんとなくあう」という意味を表すようになりました。
このように「遭う・遇う」はどちらも「偶然に物事を経験する」という意味を持ちますが、「遭う」は好ましくない出来事、「遇う」は好ましい出来事の場合に用いられます。
例文を見てみましょう。
・昨日突然のにわか雨に遭った。
・こんな幸運に遇えるなんて信じられない。
・電車で芸能人に遇えて嬉しかった。
なお、「遭う・遇う」は「物事を経験する」場合に用いられることが多いですが、偶然のであいであれば「人」の場合にも用いることができます。
また、「遇う」の「あう」という読み方は常用漢字表にはないので、法令、公用文書、新聞、雑誌、放送などでは「会う」が用いられます。
「合う」の意味と使い方
では、最後に「合う」の意味と使い方を確認しておきましょう。
「合う」は「会う・逢う」や「遭う・遇う」とは異なり、人や物事とのであいを表す言葉ではありません。「合う」は「一致する、調和する、つりあう」という意味で用いられます。そのことは、漢字の成り立ちを知るとわかります。
「合う」の「合」という字は、「かぶせるしるし+口(あな)」からできています。穴にふたをする様子から作られた漢字で、ふたと穴がぴったり一致していることを示しています。そのため、二つ以上のものがくっつく場合や、くい違うことなく一致したり、調和したりすることを表す場合に用いられます。
例文を見てみましょう。
・その時二人の目と目が合った。
・彼女とは意見が合わない。
「会う」「逢う」「遭う」「遇う」「合う」の練習問題
ここまでの説明で「会う」「逢う」「遭う」「遇う」「合う」の違いがわかったと思いますので、面白い練習問題をしてみましょう。
以下の場面に合うように「会う」「逢う」「遭う」「遇う」「合う」を選んでください。どれも「熊にあう」ですが、状況によって使う漢字が異なります。答えは、記事の一番最後にあります。
②昨日息子は動物園で初めて熊に「あった」。
③山で熊に「あって」襲われそうになった。
④飼育員は熊に「あう」餌を用意した。
⑤ずっと探していた貴重な熊に「あえた」。
「会う」「逢う」「遭う」「遇う」「合う」の違い、まとめ
「会う」「逢う」「遭う」「遇う」「合う」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。最後にもう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にお役立てください。
会う | 主に約束していた人と顔をあわせる | 広く一般的にあう |
逢う | 親しい人や貴重なものとあう | |
遭う | 主に偶然に物事を経験する | 事故や災いなど好ましくないことにあう |
遇う | 幸運や嬉しいことなど好ましいことにあう | |
合う | 一致する、調和する、つりあう |
<練習問題の答え>
①遇った ②会った ③遭って ④合う ⑤逢えた