「頂く」と「戴く」の違いをお調べの方の多くは、これら二つの言葉を正しく使い分けることが目的かと思います。そこでこのページでは、まずは「頂く」と「戴く」を使い分けるポイントを理解し、その上で違いについて知るという構成でまとめています。
このページの目次
「頂く」と「戴く」「いただく」、正しく使い分けるための3つのポイント
- 「頂く」と「戴く」は同じ意味を持つ言葉と考える
- 「頂く」と「戴く」で迷ったら「頂く」を用いる
- 動詞の「頂く=戴く」と補助動詞「いただく」は区別が必要
「頂く」と「戴く」は同じ意味を持つ言葉と考える
「頂く」と「戴く」という二つの言葉。同じ意味を持つ言葉として解説している辞書もあれば、異なる意味を持つ言葉として解説しているものもあり、解釈はまちまちです。
インターネット上でも、
「頂く」は行為
「戴く」は物品
などという「頂く」と「戴く」の分類をよく見かけますが、辞書の王様『広辞苑』は同じ意味の言葉として解説しています。
実際に、「頂く」と「戴く」が同じ意味の言葉であることを物語っているこんな古いことわざがあるのをご存知でしょうか。
「頂くものは夏も小袖」
他人からもらえるものなら季節はずれで不要なものでももらっておこう、という意味を持ったことわざです。
このことわざで使われているのは「行為」に使われるはずの「頂く」ですが、このことわざは物品の受け取りに関する言葉です。
このことわざからも、「頂く」と「戴く」は同じ意味で使われる言葉である。二つの言葉の違いを分類することはそれほど意味がないことであるとご理解いただけるかと思います。
そこで、「頂く」と「戴く」の二種類の表記は同じ意味を持つ言葉であるという辞書の王様の解釈を前提として説明を進めてまいります。
「頂く」と「戴く」で迷ったら「頂く」を用いる
「頂く」と「戴く」。両者の言葉の意味するところが同じということであれば、どちらを使っても間違いないということになります。
しかし、迷ったら「頂く」を使うことを筆者は強くお勧めします。お勧めするのには理由があるからです。しかも解釈の余地がない明確な理由が。
理由はひとつ。「頂く」は常用漢字だからです。
常用漢字は、役所の公用文や学校教育の分野で使われることが規定され、新聞や雑誌などの公共性が高い出版物の中でも原則として使用されています。
ちなみに学校のテストの解答は常用漢字を使うことが求められています。もしも答案用紙に「戴く」と書いてしまったら、それは間違いと評価されます。
なお学校の教育現場の外では、常用漢字だから正しい。それ以外は誤り。決してそのようなわけではありません。
しかし、常用漢字を用いていれば間違いと言われることはほぼ無くなります。
動詞の「頂く=戴く」と補助動詞「いただく」は区別が必要
「頂く」と「戴く」は同じ意味の言葉であると述べましたが、意味が決定的に異なる「いただく」という言葉が存在します。この点、注意が必要です。間違えると恥をかきます。
「頂く」も「戴く」も、いずれも動詞です。
しかし、動詞ではない「いただく」という言葉が存在するのです。動詞ではなく補助動詞。他の動詞にくっついて使われる言葉です。
例えば、
【お客様にご来店いただく】
お客様が来店する。来店してもらう。来店するという動詞だけでも十分に意味は通じますが語尾に「いただく」を付け加えることで丁寧で改まった表現に変身します。
この動詞を丁寧で改まった表現に変身させてしまう時の「いただく」は補助動詞と呼ばれ、補助動詞として「いただく」を書く際は、「頂く」でも「戴く」でもなく、ひらがなの「いただく」を使うことが原則です。
「頂く」と「戴く」/「いただく」の違いと正しい使い分けまとめ
以上、説明が長くなりましたので、再び混乱してしまった方もおられるかも知れません。最後に今一度、「頂く」と「戴く」「いただく」の正しい使い分け方をまとめておきます。
- 「頂く」と「戴く」で迷ったら常用漢字の「頂く」を用いる
- 動詞を丁寧語に変換させるときはひらがなで「いただく」と付け加える