退職,退社,退任,辞職,辞任,離職,離任の違いと使い分けの例文

「退職」「退社」「退任」「辞職」「辞任」「離職」「離任」は、「地位や職業、職務などから身を引く」ことですが、①何から②どのように身を引くのかという点で意味が異なります。その違いをまとめると、以下のようになります。

 ①何から②どのように
退職働き口や勤め口から自分の意志、または成り行きで退く。
退社会社から
退任役目や役割から
辞職働き口や勤め口から自分の意志で辞める。
辞任役目や役割から
離職働き口や勤め口から離れて別々になる、またはその状態。
離任役目や役割から

このページでは「退職」「退社」「退任」「辞職」「辞任」「離職」「離任」の違いについて、詳しい意味と具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。

「退職」「退社」「退任」「辞職」「辞任」「離職」「離任」の意味と使い方

まず、「退職」「退社」「退任」「辞職」「辞任」「離職」「離任」の辞書での意味を確認しておきましょう。

【退職】
勤めていた職場をやめること。職を退くこと

【退社】
1.会社員がその会社をやめること。
2.一日の仕事を終えて会社をひきあげること。
3.社団法人の社員が社員としての資格を失うこと。

【退任】
今まで就いていた任務から退くこと。

【辞職】
職を自分からやめること。

【辞任】
職務を自分からやめること。

【離職】
1.職務から離れること。
2.仕事をやめること。
3.公務員法上,公務員がその身分を失うこと。

【離任】
今までの任務から離れること。また,転任・退職などで任地を離れること。

出典:『大辞林』

「退」と「辞」と「離」の違い

では、まず「退職」「退社」「退任」「辞職」「辞任」「離職」「離任」の「退」と「辞」と「離」の違いを見てみましょう。

「退」は、「日+夂(とまりがちの足)+ しんにょう(足の動作)」から出来ていて、足が止まって進まないことを示しています。そこから、「足をひきずって後退する」「下へ下がって低いところで落ち着く」という意味を持つようになりました。「退」は、自分の意志で後退するという意味と、自然な成り行きで後退するという意味の両方があります。「退却」「退位」は前者の意味で使われており、「退化」や「退色」は後者の意味で使われています。

「辞」は、もともと「辤」と書きました。「辤」は「断る」や「別れを告げる」という意味を持っており、自分の意志で拒絶したり、去ったりする場合に用いられます。例えば、「辞退」は「自分の意志で断ること」ですし、「辞世」は「自分の意志で別れを告げて死ぬこと」です。

「離」は「隹(とり)+大蛇の姿」を示していて、もともとは蛇と鳥がつかず離れず争っている様子を表していました。その後、二つが別々になって並んでいるという意味も持つようになりました。「離」は「離婚」や「離脱」のようにある状態から別れたり離れたりする意味を表すときにも使われますが、「隔離」や「離島」のように離れて別々になった状態を表すときにも用いられます。

「退」と「辞」と「離」の違いをまとめると以下のようになります。

退:自分の意志、または成り行きで退く
辞:自分の意志で断る、去る
離:離れて別々になること、またはその状態
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「職」と「任」と「社」の違い

では、次に「退職」「退社」「退任」「辞職」「辞任」「離職」「離任」のもう一つの要素である「職」と「任」と「社」の違いを見てみましょう。

「職を探す」「任を解く」「社に帰る」のような言い方があるように「職」「任」「社」は一語で使うことができます。

「職」は、生活を支えるための仕事のことです。「職に就く」「職を失う」と言うように、それなくしては生活が成り立たなくなるような働き口や勤め口が「職」です。

「任」は、自分に課された役目や担当している仕事のことです。「警護の任を解かれる」「地域を調査する任を受けた」のように、大きな仕事の中の一つの役割を指します。

「社」は、「会社」「新聞社」などの略で、「定時で社を出る」「取材後、社に戻った」のように会社という団体そのものを表します。

「職」と「任」と「社」の違いをまとめると以下のようになります。

職:働き口、勤め口
任:役目、役割
社:会社
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「退職」「退社」「退任」の違い

「退」「辞」「離」と「職」「任」「社」の違いがわかったので、それらを組み合わせたり比較したりしながら意味を確認しましょう。

まず、「退職」「退社」「退任」の意味を整理すると以下のようになります。

 ①何から②どのように
退職働き口や勤め口から自分の意志、または成り行きで退く。
退社会社から
退任役目や役割から

「自分の意志、または成り行きで退く」ことは共通ですが、何から退くのかが異なります。

「退職」は働き口から退き、「退任」は役割から退きます。そのため、「退職」すると無職になりますが、「退任」しても無職にはなりません。

「退職」と「退社」は同じような意味で用いられます。しかし、「退社」には「一日の仕事を終えて社員が会社から出る」という意味もあるため、働き口を辞める場合には「退職」が用いられることが多いようです。「退社届」よりも「退職届」が一般的であることからもそのことがわかります。

「退職」「退任」と「辞職」「辞任」の違い

では次に、「退職」「退任」と「辞職」「辞任」の違いを見てみましょう。

「辞職」「辞任」の意味を整理すると以下のようになります。

 ①何から②どのように
辞職働き口や勤め口から自分の意志で辞める。
辞任役目や役割から

「辞職」「辞任」は「退職」「退任」とは違い、自分の意志で辞めることを表すときのみに用いられます。そのため、会社に対する不満などが理由で自ら辞める場合には「辞職」を使います。一方で、「定年退職」のように会社の規定に則って自然な成り行きで辞める場合には「退職」を使います。

「辞職」「辞任」は「退職」「辞職」と同様に、「辞職」すれば無職になりますが、「辞任」しても無職にはなりません。時折、自社の不祥事の責任を取って社長が辞めるというニュースを聞きますが、「辞職」と「辞任」ではその後が異なります。「辞職」した場合には、会社そのものを去ることになりますが、「辞任」の場合は別の役職で会社に残ります。

「退職」「退任」と「離職」「離任」の違い

では最後に、「退職」「退任」と「離職」「離任」の違いを見てみましょう。

「離職」「離任」の意味は以下の通りです。

 ①何から②どのように
離職働き口や勤め口から離れて別々になる、またはその状態。
離任役目や役割から

「離職」「離任」が「退職」「退任」と異なるのは、退くことだけではなく、退いた後の状態にも焦点が当たる点です。そのため、仕事をしていない状態は「退職中」ではなく「離職中」と言います。また、「離任」には「任地を離れる」という意味もあり、例えば、学校の先生が他の学校に異動する時に開かれる式は「離任式」と言います。

「職」と「任」は他の場合と同様で、「離職」すれば無職ですが、「離任」しても無職にはなりません。

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「退職」「退社」「退任」「辞職」「辞任」「離職」「離任」の違い、まとめ

「退職」「退社」「退任」「辞職」「辞任」「離職」「離任」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。

最後にもう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にお役立てください。

 ①何から②どのように
退職働き口や勤め口から自分の意志、または成り行きで退く。
退社会社から
退任役目や役割から
辞職働き口や勤め口から自分の意志で辞める。
辞任役目や役割から
離職働き口や勤め口から離れて別々になる、またはその状態。
離任役目や役割から