「おざなり」と「なおざり」は、どちらも「いい加減に対応する」という意味ですが、その「いい加減さ」には大きな違いがあります。言葉の響きが似ているからといって使い方を間違えると、誤解を生む可能性があるので、ここでしっかり確認しておいてください。
「おざなり」と「なおざり」の違いを簡潔に表すと、以下のようになります。
- おざなり:手を抜いて、その場限りのいい加減なことをする。
- なおざり:そのまま放っておいて、ほとんど何もしない。
このページでは「おざなり」と「なおざり」の違いについて、詳しい意味と具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。
「おざなり」と「なおざり」の意味と例文
まず、「おざなり」と「なおざり」の辞書での意味を確認しておきましょう。
【おざなり】
その場逃れにいいかげんな言動をする・こと(さま)。
【なおざり】
1.真剣でないこと。いいかげんにして,放っておくこと。また,そのさま。
2.深く心にとめないこと。あっさりしていること。また,そのさま。
出典:『大辞林』
この説明からは、どちらも「いいかげん」という意味であることぐらいしかわかりません。それぞれの違いをよりはっきりさせるために、詳しい意味と例文を見ていきましょう。
「おざなり」の語源と例文
「おざなり」は「御座なり」と書きます。
「座」は「座敷」のことで、江戸時代には「座成(ざなり)」や「御座成(おざなり)」という言葉があったそうです。これは、お座敷(宴会の席)で舞妓さんや芸妓さんがお客を楽しませることをせず、手を抜く様子を示していました。そこから、手を抜いたいい加減な対応をすることが「おざなり」という言葉になりました。
では、「おざなり」を使った例文を見てみましょう。
・おざなりに報告をして済ませる。
・仕事が忙しくて家事がおざなりになっている。
これらの例文では、「おざなり」は、どれも「手を抜いていい加減」に置き換えることができます。
「なおざり」の語源と例文
では次に、「なおざり」の語源と例文を確認しましょう。「なおざり」は、漢字では「等閑」と書きます。「なおざり」とは読めそうにない漢字ですが、これは当て字です。「閑」という漢字は「用事がなくてひまである」という意味のほかに、「大切ではない。どうでもよい」という意味を持っています。そこから「等閑(とうかん)=どうでもよい扱いをする、物事を軽く見る」という熟語がありました。「なおざり」も「等閑」と同じ意味であることから、この漢字が「なおざり」に当てられたのです。
「なおざり」の言葉の元になっているのは、「猶(なお)・去り」だと言われています。「猶=以前の状態がそのまま続く」と「去り=離れる」が繋がって、「そのまま何もしないで去る・放っておく」という意味の言葉ができあがりました。
では、「なおざり」を使った例文を見てみましょう。
・子どもに手が取られて、自分のことがなおざりになっている。
・基礎練習をなおざりにしたために、試合で勝てなくなってしまった。
これらの例文では、「なおざり」は、どれも「何もせず放ったまま」に置き換えることができます。
「おざなり」と「なおざり」の比較
では、「おざなり」と「なおざり」の両方が使える例文を見て、意味の違いを比べてみましょう。ここをきちんと押さえておくと、実際に自分が使うときにも使い分けができるようになります。
・仕事をなおざりにする。:仕事をそのまま放っておいて、ほとんどやらなかった。
・知事は県民の声をなおざりにしている。:県民の声を放っておいてほぼ無視している。
どうでしょうか。きちんと意味の違いを説明できましたか。
「おざなり」と「なおざり」の練習問題
それでは、最後に以下の練習問題で「おざなり」と「なおざり」の総復習をしておきましょう。
1.受付の(おざなり/なおざり)な対応が、相手をより怒らせてしまった。
2.品質を(おざなり/なおざり)にして、利益だけを追求する。
3.政府の答弁は(おざなり/なおざり)の域を出ない。
「おざなり」「なおざり」の違い、まとめ
「おざなり」と「なおざり」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。見た目はとても似ている言葉ですが、その使い分けをおざなりにしていると、とんだ誤解を招くかもしれません。(この場合は「おざなり」ですね)。気を付けて使ってくださいね。
最後にもう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にお役立てください。
- おざなり:手を抜いて、その場限りのいい加減なことをする。
- なおざり:そのまま放っておいて、ほとんど何もしない。
<答え>
1.おざなり 2.なおざり 3.おざなり