「飲む」「呑む」の違いと使い分けの例文

「飲む」「呑む」は、どちらも「口の中に入れたものを、噛まずに喉を通して体内に送り込む」ことです。「飲む」と「呑む」の使い分けは、①何を、②どのようにのむのかという点がポイントです。その違いをまとめると以下のようになります。

 ①何を②どのように
飲む ・液状のものや小さなものを
・主に飲食の対象になるものを
・中に入れるように
呑む ・大きなものや多くのものを
・主に飲食の対象にならないものを比喩的に
・出そうになるものを押しとどめながら

このページでは「飲む」「呑む」の違いについて、詳しい意味と具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。

「飲む」「呑む」の意味と例文

まず、「飲む」「呑む」の辞書での意味を確認しておきましょう。多くの辞書で「飲む」と「呑む」はひとつの項目で説明されています。

【飲む・呑む】
1.液体を口からのどを通して体内へ流し入れる。また、固形物をかまずに体内に送り込む。
2.特に、酒を体内に入れる。飲酒する。
3.タバコを吸う。喫煙する。
4.高波などが人や人家などを中に取り込む。包み込む。飲み込む。
5.〔やや古い言い方で〕刃物などを隠し持つ。
6.気力で相手を圧倒する。また、相手を軽く見る。
7.相手の要求などを受け入れる。妥協して認める。
8.〔慣用句的に〕出そうになるものを抑える。こらえる。

◆表記「吞」は丸のみにする、ぐいぐいのむ意で、「丸薬を吞む(①)」「大酒を吞む(②)」「蛇[波]が蛙[舟]を吞む(①④)」「短刀を吞む(⑤)」「敵を吞む(⑥)」「条件を吞む(⑦)」「息を吞む(⑧)」などと好まれる。

出典:『明鏡国語辞典』

残念ながらこの説明では「飲む」と「呑む」の違いはまったくわかりませんね。一番下に「呑」についての補足説明がありますが、「3.タバコを吸う。」の意味のときには「呑む」は使えないということしかわかりません。しかも、「好まれる」程度の使い分けで、厳密な線引きはないようです。

しかし、「飲」と「呑」の二つの漢字が存在する限り、使い分け方はあるはずです。実際の例文を見ながら考えていきましょう。

①何をのむか

まず、「何を」のむのかから考えてみます。

「飲む」の例文

以下のような例では、迷わず「飲む」を選ぶことができるのではないでしょうか。

・お茶を飲む。
・飲まず食わずで過ごす。
・スイカの種を飲んでしまった。

「飲む」は、飲食の対象になるものとよく使われます。また、液体や小さい固形物で、喉を通るときにあまり障害を感じないものと使われます。

「呑む」の例文

では、「呑む」の例文を見てみましょう。

・蛇が蛙を丸呑みにする。
・話を鵜呑みにする。
・雰囲気に呑まれる。

「丸呑み」は、噛み砕かないでそのまま喉を通していくことですが、例文のように比較的大きなもの、本来であれば噛み砕いたほうが喉の通りがよくなるものの場合に用いられます。「丸呑み」は「丸飲み」と書くこともありますが、「丸飲み」という表記はほとんどの辞典で取り上げられていません。『明鏡国語辞典』には、「丸呑み」の項目に「◆表記「丸飲み」でもまかなうが、「丸吞み」「丸のみ」が一般的。」という説明があり、「呑」の漢字が適切であることがわかります。

次の例文の「鵜呑み」にも「呑む」しか使われません。「鵜呑み」は、物事の内容を十分に考えずにそのまま受け入れるという意味で、鵜が魚を噛まずにのみこむ様子から作られた表現です。ここでも「呑」の漢字が使われていることから、やはり「呑む」は比較的大きなものを対象とした場合に用いられることがわかります。

三つ目の例の「雰囲気に呑まれる」は飲食物を対象にした使い方ではありませんが、この場合にも「呑む」が使われます。「雰囲気に呑まれる」は、圧倒されて押しつぶされそうな様子のことです。その場にかもしだされている気分や空気は目には見えませんが、なにか大きなものを感じるのではないでしょうか。「雰囲気に呑まれる」「波に呑まれる」「敵を呑む」のように大きな力や多くの圧力が感じられるときには「飲む」よりも「呑む」が使われることが多いようです。

これらの例から、「飲む」と「呑む」には以下の違いがあることがわかります。

 ①何を
飲む ・液状のものや小さなものを
・主に飲食の対象になるものを
呑む ・大きなものや多くのものを
・主に飲食の対象にならないものを比喩的に

「飲む」「呑む」の使い分け

ただ、ここでお酒好きの人なら疑問が湧いてくるのではないでしょうか。

お酒をのめる店のことを「呑み屋」と書いたり、酒豪のことを「呑兵衛」と言ったりするのはなぜかという疑問です。お酒は液体でかつ飲食物なのにです。

確かに「お酒」は、一般的には「お酒を飲む」のように「飲む」とともに使われます。そして、「飲み屋」「飲兵衛」とも書きます。しかし、「呑み屋」や「呑兵衛」のようにあえて「呑」の漢字を使うことで、「大きなものや多くのものを」というイメージを加えることができます。そうすることで、お酒を大量にのめる店とか、お酒にとても強い人という意味を持たせているのです。

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②どのようにのむか

「飲む」「呑む」はどちらもものを内部に取り入れることですが、その取り入れ方には微妙な違いがあります。最初の表をもう一度見てみましょう。

 ②どのように
飲む・中に入れるように
呑む・出そうになるものを押しとどめながら

「飲む」は「中に入れること」が主な目的ですが、「呑む」は「外に出ないようにすること」が目的です。

具体的な例文を見ながら確認していきましょう。

「飲む」の例文

まず「飲む」が適切な例文を見てみます。

〇爪の垢を煎じて飲む。
✕爪の垢を煎じて呑む。

〇泥水を飲む。
✕泥水を呑む。

「爪の垢を煎じて飲む。」は、優れた人の爪の垢を薬として飲んでその人にあやかるように心がけるという意味の慣用句です。この場合には、優れた人の要素を自分の中に取り入れることが大事なので「飲む」が使われます。

「泥水を飲む。」は、泥水しかないので生きるためにそれを飲む様子から、嫌なことでも必要と思えば我慢してやるという意味です。苦労を受け入れていくこと、つまり「中に入れること」に焦点が当てられた表現なので、この場合にも「飲む」が使われます。

「呑む」の例文

次に、「呑む」がより適切な例文を見てみましょう。

△息を飲む。
〇息を呑む。

△涙を飲む。
〇涙を呑む。

「息を呑む。」は、おそれや驚きなどで一瞬息を止めるという意味です。思わず漏れ出そうになった息を止めて押しとどめることですから「外に出ないようにすること」が目的です。そのため「呑む」が適切です。

「涙を呑む。」は、辛い気持ちをこらえるという意味です。流れそうな涙を止めて我慢する様子なので、この場合にも「呑む」を使うのがより適切です。

「飲む」「呑む」の注意点

ただ実際には「息を飲む」「涙を飲む」と書かれている場合もあります。これは「呑」が常用漢字(文化庁によって定められた、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安を示すもの)ではないことが関係しています。法令、公用文書、新聞、雑誌、放送などでは常用漢字を使う必要があるので、「呑む」がより適切な場合でも、「飲む」が使われることがあります。

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「飲む」「呑む」の違い、まとめ

「飲む」「呑む」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。

最後にもう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にお役立てください。

 ①何を②どのように
飲む ・液状のものや小さなものを
・主に飲食の対象になるものを
・中に入れるように
呑む ・大きなものや多くのものを
・主に飲食の対象にならないものを比喩的に
・出そうになるものを押しとどめながら