「効果」「効能」「効用」は、どれも「他に働きかけ、作用することによって起こる好ましい結果」のことですが、「作用」のどこに注目しているかがそれぞれ違います。
効能 :作用の「働き」に注目
効用 :作用の「使い道」に注目
このページでは「効果」「効能」「効用」の違いについて、詳しい意味と具体的な使い方とともにわかりやすく解説しています。
「効果」「効能」「効用」の意味と例文
「効果」「効能」「効用」の意味
「効果」「効能」「効用」を辞書で調べると、次のように説明されています。
【効果】
・ある行為によって得られた、期待通りのよい結果。ききめ。
・演劇などで、その場にふさわしい状況を人為的に作ること。
出典:『広辞苑』
【効能】
・ある結果をもたらすはたらき。薬などのききめ。しるし。効果。効用。
出典:『広辞苑』
【効用】
・役に立つ、また、効果のある使い道。 役に立ち、ききめがあること。
出典:『学研国語大辞典』
どれも「ききめ」という言葉が使われていますが、この「ききめ」とは漢字の「効」の部分が持つ意味です。
では、「効」とはどんな意味なのでしょうか。
漢和辞典で、漢字の成り立ちを調べてみると以下のように説明されています。
交は、人が足を交差させた姿。平行線をたどれば、どこまでも結果が出ない。交差してしめあげたところに結果が出る。
出典:『学研漢和大辞典』
つまり、「効」は「結果を出すための行為」ということです。
「効」の意味がわかったので、次に「効果」「効能」「効用」の「効」以外の部分、「果」「能」「用」の意味を確認しましょう。これらが「効果」「効能」「効用」の意味の違いを作り出しています。
「果」は「果実」「結果」「成果」「因果」といった言葉からもわかるように、「事柄が進んでしまったあとに生じるもの」という意味です。
「能」は「能力」「能動的」「可能」「芸能」といった言葉に使われますが、「力を出して働く」という意味があります。
そして、「用」は「使用」「活用」「常用」「盗用」などに使われ、「力・人・道具などをある面にまで及ぼして使う」という意味を持っています。
このような「果」「能」「用」の意味と、さきほどの「効」の意味とを組み合わせて「効果」「効能」「効用」の意味を考えてみると、以下のようになります。
- 効果:結果を出すために行う行為によって生じる結果
- 効能:結果を出すために行う行為が持つ働きや作用
- 効用:結果を出すために行う行為の使い道
この意味を踏まえながら、具体的な例文で使い方を確認していきましょう。
「効果」「効能」「効用」の使い方と例文
では、まず「風邪薬の効果/効能/効用」でそれぞれの意味の違いを比べてみましょう
風邪薬の効果 | その薬を使うことで得られる結果≒風邪が治るなど |
風邪薬の効能 | その薬の持つ働きや作用≒発熱や鼻水など風邪の諸症状を緩和するなど |
風邪薬の効用 | その薬の使い道≒風邪を治すため、症状を軽くするためなど |
薬の箱には「効果・効能」は書かれていますが、「効用」は書かれていません。「効果と効能」は、効能という働きがあって効果という結果が出るという密接な繋がりがあるため、まとめて書かれています。しかし、「効用」は病気に対する直接的な働きよりも広い範囲での効き目を示すものであるため、薬の説明書には登場しません。
では、もう一つ「温泉の効果/効能/効用」を考えてみましょう。
温泉の効果 | 温泉に入ることで得られる結果≒体が温まり血行が良くなるなど |
温泉の効能 | 温泉の持つ働きや作用≒神経痛や筋肉痛の緩和など |
温泉の効用 | 温泉の使い道≒病気を治療するため、リラックスするためなど |
温泉の場合、効能書きをよく見かけます。この温泉に入ることによって身体にどのような良い作用があるかを説明したものです。しかし、薬とは違って、それによって必ず病気が治るというような結果が得られるとは言えないため「効果」ではなく「効能」が使われます。温泉に効能はあるけれども、温泉の効果は人によって違うということです。
「効用」は気分がリフレッシュしたり癒されたりするなど、身体への作用よりも更に広い範囲の効き目を含みます。
では、最後にもう一つ、「教育の効果/効能/効用」で考えてみましょう
教育の効果 | 教育によって得られる結果=知識が身に着くなど |
教育の効能 | 教育の持つ働きや作用=✕ |
教育の効用 | 教育の使い道=知識を得るため、人生を豊かにするためなど |
「教育の効果」「教育の効用」とは言えますが、「教育の効能」とは言えません。これは「効能」は主に「物質の働き」を示す言葉であるため、医療や健康に関する話題以外では使うことができないためです。
「教育の効果」とは、例えば知識が身に着くことや学力が上がるといった教育による直接的な結果です。
そして「教育の効用」とは、人に何をもたらすために教育は使われるのかということです。つまり、教育が目指しているものが「効果」であり、教育によってどのようになってほしいという期待が「効用」であると言えます。
「効果」「効能」「効用」の違い、まとめ
「効果」「効能」「効用」の違いと正しい使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。
もう一度、正しい使い分けのポイントを以下に記します。頭の中の整理にお役立てください。
効能 :作用の「働き」に注目
効用 :作用の「使い道」に注目