「かがむ」と「しゃがむ」。同じ意味で使われる場合もありますが、一般的には次のように使い分けられています。違いを区別するポイントは「歩けるか否か」です。
- 【かがむ】かがんでも歩くことができる。
- 【しゃがむ】しゃがんだら歩くことができない。
このページでは「かがむ」と「しゃがむ」の意味の違いと使い分け方について、さらに詳しく解説しています。
「かがむ」と「しゃがむ」用例の違い
「かがむ」と「しゃがむ」は、大半の国語辞典でも同じような意味を持つ言葉として解説されているため、区別するのが簡単ではありません。
このような似た言葉を区別したい時は、数多くの用例を観察し言葉の使われ方のパターンを知ることで、違いが明瞭になってきます。
「かがむ」と「しゃがむ」の用例の一部を以下に引用します。
「かがむ」の用例
少佐の上に馬乗りの状態になったモモ太は腰を屈めたまま立ち上がった。
出典:飴村行『粘膜人間』より引用わたしは宮中の御挨拶として、いまはただ深く身を屈めるばかりである。
出典:ロチ『秋の日本』より引用そのうちのひとり、背中を屈めた老人が杖をつきながら、声をかけてきた。
出典:水野良『ロードス島戦記 6 ロードスの聖騎士(上)』より引用
いずれも「かがむ」姿勢をとりながらも、歩いている様子が伺えます。これらの用例から、「かがむ」状態でも歩くことができるということがわかります。
参考:「用例.jp」
「しゃがむ」の用例
だから僕はしゃがむわけにはいかず、立ち続けなければならなかった。
出典:西尾維新『少女不十分』より引用もちろん和式のしゃがむ方式で、床にただ穴が開いていて、下が見える。
出典:赤瀬川原平『優柔不断術』より引用二人の人間はその場にしゃがんで、食事する一匹の猫を眺めていた。
出典:今野緒雪『マリア様がみてる 07 いとしき歳月(前編)』より引用
「しゃがむ」姿勢をあらわしたこれらの用例は、いずれもその姿勢のままでは歩くことができない。または歩くのが困難な状態です。
参考:「用例.jp」
「かがむ」と「しゃがむ」意味の違い
「かがむ」と「しゃがむ」は、大半の国語事典では意味の違いを区別するのが困難です。しかし、それぞれの言葉の語源にまで踏み込むと意味の違いが見えてきます。
「かがむ」の意味と語源
「かがむ」の意味は以下に引用した通りです。
【かがむ】
①折れ曲がる。多く、腰、手、足、指など体の部分についていう。また、身を低くしてしゃがむ。うずくまる。あるいは縮む。
②人目を盗んでうずくまり隠れる。物陰などに潜む。
出典:小学館『日本國語大辞典』
「しゃがむ」「うずくまる」など「しゃがむ」と重なる意味ばかりで、これでは違いの区別ができません。
ところで「かがむ」という言葉の語源は、一説には「陰へ引き込む」「隠れる」であると言われています。
身を隠すような事態というのは、隙を見て逃げる必要も生じてきます。その隙が見つかったときにすぐに逃げることが出来る姿勢。
それが「かがむ」の姿勢の特徴と言えます。
「しゃがむ」の意味と語源
「しゃがむ」の意味は以下に引用した通りです。
【しゃがむ】
腰を落とし、ひざをまげてかがむ。うずくまる。
出典:小学館『日本國語大辞典』
「しゃがむ」を漢字で書くと「蹲む」となり、「蹲」という漢字は「蹲る」と書いて「つくばる」。「這いつくばる」の「つくばる」です。
地面にひれ伏すほどの姿勢をとる「つくばる」と同じ漢字を共有しているため、「しゃがむ」はそのままの姿勢では歩けないと判断することができます。
「かがむ」と「しゃがむ」違い、まとめ
「かがむ」と「しゃがむ」の違い、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。
ここまで述べてきた「かがむ」と「しゃがむ」の違いの要点をまとめると次のようになります。頭の中の整理にお役立てください。
- 【かがむ】姿勢を低くしているが歩くことが出来る姿勢。すぐに逃げられる姿勢。
- 【しゃがむ】腰を低く落としているためそのままでは歩くことができない姿勢。