「処方」と「調剤」は区別するのが難しいよく似た言葉ですが、「誰が」「何をするか」の二つの視点で整理すると簡単に見分けられます。
これら二つの視点で整理した「処方」と「調剤」の違いは次の通りです。
誰が | 何をするか | |
処方 | 医師 | 患者の病気に応じて薬を配合すること |
調剤 | 薬剤師 | 医師の指示によって薬を調合すること |
このページでは、上に掲げた二つの視点による区別法をさらに詳しく解説しています。
「処方」と「調剤」意味の違いを解説
「処方」は医師がするもの。「調剤」は薬剤師がするもの。
「処方」と「調剤」はそれぞれ「誰が」しているのかの視点で整理されてもイメージがつきにくい方もおられるかも知れません。
何故なら、医師が「処方」を行う場面。薬剤師が「調剤」を行う場面を見る機会がほとんどないからです。
そこで、患者の立場に立って、医師はどんなタイミングで「処方」をし、薬剤師はどんなタイミングで「調剤」しているのかを以下にまとめてみました。
ご自分が病院に行ったときのことを思い出しながら読んでみてください。
医師が「処方」を行う場面
風邪をひいて病院に行ったときのことを思い出してください。
お医者さんによる診察がすべて終わり、お医者さんから診断が下されました。そして診断をお医者さんから聞き終わった患者さんは、診断室から退室します。
患者さんは退室しますが、そのとき、お医者さんはよく机で何やら書き物をしているのを見たことはありませんか?
この時にお医者さんが書いている書類の一つが処方箋。
それまで診ていた患者さんに飲ませるクスリの配合を、患者さんの病状に合わせてつくっているのです。
別の言葉に置き換えると、患者さんの病気を回復するのに最適な薬のレシピをつくっているようなものです。
薬のレシピづくり、これが「処方」です。
さて、お医者さんの薬に関する仕事はレシピづくりまでです。このレシピは、病院の近所にある調剤薬局に届けられます。
「処方」という言葉は、薬を配合するという行為だけでなく、配合方法そのものを「処方」と呼ぶ場合もあります。「処方を書く」という用例がそれにあたります。
薬剤師が「調剤」を行う場面
お医者さんがつくった薬のレシピにしたがって、薬を完成させるのが薬剤師の仕事です。そしてレシピにしたがい薬をつくる作業が「調剤」です。
さて、患者さんの診断がすべて終わると、患者さんは病院の会計窓口で診察料の支払いを済ませます。
診察料を支払うとレシートと一緒に手渡されるのが処方箋。これが薬のレシピです。
この処方箋を持って、患者さんはその病院の近所にある調剤薬局に足を運び、そこの窓口で病院からもらった処方箋を提出。
その処方箋にしたがって薬をつくる、薬剤師の「調剤」の仕事がはじまります。
調剤薬局の窓口に処方箋を出し、薬をもらうまでしばらく待たされることになりますが、この待たされている間に、調剤薬局の奥では薬剤師が「調剤」をしているのです。
法律で定められている処方箋
処方箋は薬のレシピみたいなものと、たとえ話で「処方」と「調剤」の違いを説明しましたが、料理のレシピと異なり薬のレシピである処方箋は様々な法律によって書く内容や書き方が定められています。
それらの一部を下記にご紹介します。
処方箋の交付義務
医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当っている者に対して処方せんを交付しなければならない。ただし、患者又は現にその看護に当っている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合及び次の各号の一に該当する場合においては、この限りでない。(以下略)
出典:医師法第22条
処方箋の記載事項
医師は、患者に交付する処方せんに、患者の氏名、年齢、薬名、分量、用法、用量、発行の年月日、使用期間及び病院若しくは診療所の名称及び所在地又は医師の住所を記載し、記名押印又は署名しなければならない。
出典:医師法施行規則第 21 条
処方箋への記入等(処方箋の記入事項)
薬剤師は、調剤したときは、その処方せんに、調剤済みの旨(その調剤によって、当該処方せんが調剤済みとならなかつたときは、調剤量)、調剤年月日その他厚生労働省令で定める事項を記入し、かつ、記名押印し、又は署名しなければならない。
出典:薬剤師法第 26 条
「処方」と「調剤」意味の違い、まとめ
「処方」と「調剤」の違い、ここまでの解説でおわかりいただけましたでしょうか。
医師と薬剤師の役割、そして「処方」と「調剤」の言葉を以下のように結びつけて、違いを区別してみてください。
- 【処方】医師が、患者の病気に応じて、薬を配合し、処方箋を書く
- 【調剤】薬剤師が、医師の指示に従い、薬を調合し、調剤薬局で患者に出す