「養う」「培う」「育む」。育てることを意味するこれら三つの言葉は、①人を育てる場合、②人以外のものを育てる場合で、それぞれ次のような意味の違いがあります。
養う | 培う | 育む | |
① | 生活の面倒を見る | 資質や能力を伸ばす | 親が子を愛情を注いで育てる |
② | 動物・植物を育てる | 植物を育てる | 言葉の由来は親鳥がヒナを育てること |
このページでは、上にまとめた「養う」「培う」「育む」の違いを区別するポイント、そしてそれぞれの言葉の意味についてさらに詳しく解説しています。
【養う、培う、育む】意味の違いと使い分け方
【養う、培う、育む】の意味
「養う」「培う」「育む」。それぞれの言葉の違いが際立っている意味だけを三種類の国語辞典からピックアップし集めてみました。以下、引用です。
【養う】
②食事など生活の面倒をみる。扶養する。
③動物を飼い育てる。飼育する。また植物を培う。施肥する。
出典:『日本國語大辞典』より抜粋【培う】
①草木の根に土をかけて育てる。培養する。
②能力や性質を養い育てる。育成する。
出典:『広辞苑』より抜粋【育む】
親鳥がひなを大事に育てる意。
大切に優しく育てる意で使われる。
出典:『類語例解辞典』より抜粋
上に引用した「養う」「培う」「育む」それぞれの言葉の意味から、以下に述べる三つの視点によって言葉の違いを区別できることがわかります。
- 人を育てる場合「養う」「培う」では、育てる内容が違う。
- 人以外を育てる場合「養う」「培う」では、育てる対象が違う。
- 親が子に注ぐ愛情を強調している点が「育む」の違いを鮮明にしている。
これら三つの視点から区別できる「養う」「培う」「育む」それぞれの違いは以下に説明するとおりです。
三つの視点から区別する【養う、培う、育む】の違い
【1】人を育てる場合「養う」「培う」では、育てる内容が違う
人を育てる意味として「養う」「培う」という言葉を使った場合、どちらの言葉を使うかによって育てる内容が異なってきます。
「養う」を使う場合は、食事や衣服など生活の中の具体的・物理的なモノを与えること。面倒を見ることを意味します。
一方の「培う」は、育てる人の資質、能力、学力など形のないスキルが育てる対象です。
【2】人以外を育てる場合「養う」「培う」では、育てる対象が違う
「養う」は動物を飼う場合、植物を栽培する場合の両方に使えます。動物を育てるときも「培う」、植物を育てるときも「培う」です。
しかし「培う」は植物限定の言葉です。
「培う」という漢字が「栽培」の「培」であることからもわかるとおり、「培う」という言葉はそもそもは草木を育てることを意味する言葉でした。
【3】親が子に注ぐ愛情を強調している点が「育む」の違いを鮮明にしている
「養う」と「培う」が「what」すなわち何を育てるのかについての言葉なのに対して、「育む」は「how」に重点が置かれた言葉。育て方についての言葉です。
育て方というのは方法論ではなく、育てるという行為に含まれる愛情の有無です。
ところで「はぐくむ」という言葉は「羽包む」とも書きます。(読み方は正確には「はぐくむ」ではなく「はくくむ」です)
「羽包む」と書いた場合、親鳥が羽でヒナを大事に育てるという意味を持ち、この意味から転じて愛情を持って大切に育てることを表す言葉になったと言われています。
【養う、培う、育む】の違い、まとめ
「養う」「培う」「育む」。すべて育てることを意味する言葉であるために、区別するのが難しい言葉です。
しかし、上に述べたように三つの視点から区別することで少しはそれぞれの言葉の違いが明瞭になったのではないでしょうか。
- 【養う】生活の面倒を見る。動物・植物を育てる。
- 【培う】資質や能力を伸ばす。植物を育てる。
- 【育む】親が子を愛情を注いで育てる。