「視線」と「目線」の違いと使い分け

古くから使われている「視線」という言葉に対して、一部の業界以外での使用の歴史が浅い「目線」という言葉の意味と使い方はまだ固定化されていません。

しかし、最近では次のような使い分けが定着しつつあります。

  • 【視線】目の向き。見ている方向。
  • 【目線】ものを見る立場。「視点」に近い。

このページでは「視線」と「目線」の違いと使い分け方について、さらに詳しく解説しています。

「視線」と「目線」の違いを解説

「視線」という言葉が古くから使われていたのに対して、「目線」はもとは一部の業界だけで使われていた特殊な言葉で、最近になって広く普及しました。

そこで、

  1. 最近になって使われるようになった目線】【視線】の違い
  2. 一部の業界だけで使われていた目線】【視線】の違い

以上の2つのポイントから違いと使い分けを解説します。

①【最近になって使われるようになった目線】と【視線】の違い

「視線」と「目線」。ともに「目の向き。見ている方向」という、ほぼ同じ意味を持つ言葉として区別なく使われるケースが少なくありません。

しかし、両者を決定的に区別する「目線」の使い方が存在します。

他人に対して露骨に見下す態度を取ることを意味する「上から目線」がそれです。また、「上から目線」に近い用例として「消費者の目線」「子供の目線」などがあります。

これらの用例の中での「目線」の意味は「目の向き。見ている方向」ではなく、「ものを見る立場」すなわち「視点」「観点」「見地」などの言葉に近い意味を持っています。

よって、「視線」と「目線」の違いは以下のように区別することができます。

  • 【視線】目の向き。見ている方向。
  • 【目線】ものを見る立場。「視点」に近い。

【視線】目が見ている方向。
【視点】ものを見る立場。
【観点】観察・考察するときの立場や目の付けどころ。
【見地】観察、または判断する際の立場。
出典:岩波書店『広辞苑』より一部抜粋

②【一部の業界だけで使われていた目線】と【視線】の違い

誰もが普段から使っている「視線」という言葉に対して、「目線」という言葉は映画・演劇・テレビ・ファッション業界など極めて限られた業界だけの専門用語でした。

歌手・俳優・モデルなどの撮影会で、カメラマンが被写体となる人に対して「目線をこっちにください!」と言うことがあります。

これは別の言い方をすると「写真にあなたの瞳が映り込むようにこっちを見てください!」という意味です。

業界の外にいる一般の人でも「カメラ目線」などと言うことがありますが、この「カメラ目線」という言葉こそ、業界用語としての本来の「目線」の意味に沿った使い方です。

さて「視線」と業界用語の「目線」はともに「目が見ている方向」を意味する言葉ですが、大きな違いが一つだけ存在します。

「視線」とは何かを見ることが目的で何かに目を向けるのに対して、「目線」の目を向ける目的は写真写りがよくなることにあります。目を向けることそのものが目的とも言えます。

「視線」と「目線」の違い。最も大きな違いはこの一点です。

  • 【視線】目を向ける目的は「見る」ため。
  • 【目線】目を向ける目的は「瞳をカメラに向ける」ため。

「視線」と「目線」の違い、まとめ

「視線」と「目線」の違い、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。最後に違いと使い分け方を区別するポイントを以下にまとめます。頭の中の整理にお役立てください。

 視線目線
一般的な使い分け目の向き。見ている方向。ものを見る立場。「視点」に近い。
業界用語との使い分け目を向ける目的は「見る」ため。 目を向ける目的は「瞳をカメラに向ける」ため。
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