「景色」「風景」「景観」「光景」「情景」。どれも似たり寄ったりの言葉ですが、以下のポイントで区別するとそれぞれの意味の違いがはっきりと見えてきます。
- 【景色】眺める対象としての山、海、川などの自然
- 【風景】眺める対象としての自然、街、人の様子
- 【景観】特にすぐれて風情ある景色、風景、眺め
- 【光景】目の前に具体的に見える状況やありさま
- 【情景】人の心を強く動かす景色、記憶に残る場面
このページでは、「景色」「風景」「景観」「光景」「情景」それぞれの言葉の意味を確認しつつ、違いと使い分け方についてさらに詳しい解説を行なっています。
【景色、風景、景観、光景、情景】意味の違いを解説
【景色】眺める対象としての山、海、川などの自然
「景色」という言葉の意味はシンプルです。人が眺めたり鑑賞したりする対象としての山、海、川などの自然を意味します。
ただし厳密に自然だけと言うわけではありませんので、その「景色」の中に建造物が少しくらい入っていたとしても、それが「景色」でなくなることはありません。
しかし「景色」の主人公はやはり自然。眺める対象としての自然、それが「景色」です。
また「景色」の特殊な意味として、茶の湯などで使われる陶器の見どころを「景色」と呼ぶ場合があります。
いわゆる「わび、さび」の美学の文脈の中で使われる場面が限定された言葉です。
【風景】眺める対象としての自然、街、人の様子
「風景」は、「景色」と違いが区別しにくい言葉ですが、「景色」が海や山などの自然に特化した言葉なのに対して「風景」には自然に加えて街並みや里、人の様子も含まれます。
「都市の風景」には恐らく自然はないでしょう。「田園風景」も自然のようですが、そもそも田園は人工物です。自然ではありません。
また「通勤風景」「通学風景」などという使われ方をしますが、この場合は自然でも街並みでもなく、見えているのは人だけです。人だけにも使えるのが「風景」です。
また、比喩的な表現として「心象風景」という言い方もあります。「景色」に比べて汎用性が高い言葉、それが「風景」です。
【景観】特にすぐれて風情ある景色、風景、眺め
「景観」は、「景色」や「風景」の中でも特に風情がありすぐれて美しい眺め、またその美しさを指す言葉です。
また「景観」は、ドイツ語で「田舎」を意味する「Landschaft(ラントシャフト)」という単語を、植物学の学術用語として日本語に翻訳したのが言葉の由来です。
そのため「景観」という言葉は、は行政や司法、学術分野でよく使用されるという特徴を持っています。
もしかしこまった表現が求められるビジネス文書などに「景色」や「風景」に関する記述が含まれる場合、「景観」という言葉を使ってみてはいかがでしょうか。
【光景】目の前に具体的に見える状況やありさま
「景色」「風景」「景観」が見た目にここちよい有様に限定された言葉なのに対して、「光景」は見た目にここちよい有様に加えて、目を覆いたくなるような有様も言い表します。
風光明媚な観光地の眺めの良い場所を「光景」と呼ぶ一方で、事件や事故現場の見たまま、ありのままの様子をも「事件の光景」「事故の光景」などと言い表します。
「景色」と「風景」は眺める対象、鑑賞の対象であるのに対して、眺めたり鑑賞する目的がない、見たまま・見えたままの有様が「光景」です。
【情景】人の心を強く動かす景色、記憶に残る場面
見たまま・見えたままの「光景」と対をなすのが「情景」です。
「光景」が、見る人の心を激しく揺さぶるような場合。見る人に強烈な印象を残し、見る人の記憶に深く刻み付けられるような場合。「光景」は「情景」になります。
また「光景」が見た目にここちよい有様、目を覆いたくなるような有様の両方を含んでいるのと同様に「情景」も両者を含む言葉です。
美しい景色に感動しそれがいつまでも心に残り続ければそれは「情景」となり、事故現場の生々しい光景に強いショックを受ければそれも「情景」となります。
【景色、風景、景観、光景、情景】意味の違い、まとめ
「景色」「風景」「景観」「光景」「情景」。これら四つの言葉の違いと使い分け、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。
最後にもう一度、「景色」「風景」「景観」「光景」「情景」を区別するポイントをまとめますので頭の中の整理やおさらいにご活用ください。
- 【景色】眺める対象としての山、海、川などの自然
- 【風景】眺める対象としての自然、街、人の様子
- 【景観】特にすぐれて風情ある景色、風景、眺め
- 【光景】目の前に具体的に見える状況やありさま
- 【情景】人の心を強く動かす景色、記憶に残る場面