「不況」と「不景気」は、経済活動の停滞を意味する言葉という点では同じですが、両者の間には次のような違いがあります。
- 【不況】経済活動に限定して用いられる言葉。文書向きの言葉。
- 【不景気】経済に限らず沈滞した様子を表す言葉。口語に近い。
このページでは「不況」と「不景気」、そしてそれぞれの対義語に当たる「好況」と「好景気」の違いと使い分けについて、さらに詳しく解説しています。
【不況、不景気】【好況、好景気】の違いと使い分け方を解説
【不況、不景気】の違い
「不況」と「不景気」の間にある違いは国語辞典でそれぞれの言葉の意味を調べてみると一目瞭然です。
国語辞典の中でも情報量が圧倒的に多い『日本國語大辞典』の中で解説されている「不況」と「不景気」それぞれの意味のごく一部を以下に抜粋・引用してみます。
【不況(ふきょう)】
資本主義社会における景気変動の一局面。投資・生産・雇用の減少、物価・利潤・の低落などをきたし、経済活動全体が沈滞する状態。不景気。【不景気(ふけいき)】
①盛んな状態を失うこと。ふるわないこと。活気がないこと。閑散としていること。陰気なこと。
②特に、商売が繁盛しないこと。
③態度や顔つき・様子などに活気がないこと。浮かない様子であること。
④面白くないさま。出典:小学館『日本國語大辞典』より抜粋
ご覧の通り「不況」という言葉は使用対象が経済活動に限定された言葉です。経済活動以外の沈滞した状態については「不況」は使えません。
一方で「不景気」という言葉は、沈滞した様子や活気がない状態をジャンルを限定することなく使える言葉で、数ある意味の中の一つが「不況」と全く同じ意味を持っています。
また「不景気」は「不景気な面をしやがって・・・」など軽口をたたく場面で使われることがある口語に近い性質を持った言葉です。
よって、ビジネス文書など硬い表現が求められる書面の中では「不景気」ではなく「不況」を使うのが無難と言えましょう。
【好況、好景気】の違い、そもそも【況、景気】とは?
「好況」と「好景気」の違いと使い分けも、「不況」と「不景気」のそれとほぼ同じです。
「好況」は経済活動限定の言葉。それに対して「好景気」は経済活動以外にも使えます。ただし「好景気」は「不景気」ほどには用途は広くありません。
「不景気な顔」とは言っても「好景気な顔」とは言わないところに「不景気」と「好景気」の用途の範囲の広狭が現れています。
ところで「不況」と「不景気」、「好況」と「好景気」にそれぞれ使われている「況」と「景気」にはどのような意味があるのでしょうか。
『日本國語大辞典』の中の解説を以下に引用します。
【況】
ようす。ありさま。(用例:概況、近況、現況、実況等)【景気】
①物事の様子。ありさま。気配。また、景色。
②〜④中略
⑤商売取引の状況。また、社会全体の経済活動の状態。出典:小学館『日本國語大辞典』より抜粋
「況」と「景気」は、ともに様子やありさまを意味する言葉ですが、「景気」の方が圧倒的に広いジャンルをカバーする言葉です。
【不況、不景気】【好況、好景気】の違い、まとめ
【不況、不景気】【好況、好景気】の違いと使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。
最後にもう一度、「不況」と「不景気」の違いを区別するポイントを記します。頭の中の整理をするのにお役立てください。
- 【不況】経済活動に限定して用いられる言葉。文書向きの言葉。
- 【不景気】経済に限らず沈滞した様子を表す言葉。口語に近い。