「湯気」と「水蒸気」は違うものです。そして「湯気」と「水蒸気」の違いを一番簡単に見分けることができる場所。それはお湯がわいている時のヤカンの口です。
ヤカンの口のあたりを観察してみてください。ヤカンの口の上に立ちのぼる白い煙のようなモヤモヤとしたもの、これが湯気です。
その湯気とヤカンの口の間は透明で何も見えませんが、実はここにある無色透明の気体が水蒸気です。(観察する時は、ヤカンに顔を近づけすぎないようにしましょう)
画像出典:国土交通省北海道開発局帯広開発建設部ウェブサイト
このページでは「湯気」と「水蒸気」について、さらに詳しく解説しています。
「湯気」と「水蒸気」の雑学
「湯気」と「水蒸気」の違い
水は1気圧のもとで温度が100度になると沸騰し気体になります。この気体が水蒸気です。ただし気体は目には見えません。ヤカンの口のすぐ上に何も見えないのは、無色透明の気体である水蒸気がそこにあるからです。
しかしヤカンの口から吹き出した水蒸気は、ヤカンの外に出た途端にまわりの空気に冷やされて一瞬にして100度以下になってしまいます。
液体である水蒸気が100度以下になると液体に戻ります。この液体が水滴となって目に見えるようになったものが湯気なのです。
余談ですが、水分が少なくて硬いサツマイモなどをしっとりホクホクに蒸かすことが出来るのは、水蒸気の高温・高圧の性質を上手に利用しているからです。
また水蒸気ほど高温ではない湯気を上手に使ったのが中華まんなどの蒸し料理です。
100度以下(常温)でも水が蒸発する理由
水は100度になると沸騰し気体になると上に述べましたが、水は100度にならなくても気体となって蒸発することがあります。
晴れた日に洗濯物を家の外に出して干すと乾くのは、洗濯物に含まれていた水が気体となって蒸発してしまったからです。
しかし、いくら真夏の暑い日でも気温が100度になることなどありません。にもかかわらず水が蒸発して気体になってしまうのは何故でしょうか。
水の分子は全部が全部、100度になってはじめて気体になるわけではありません。常温(普通の気温)でも、わずかずつ蒸発して気体になっているのです。
そして常温の中でわずかずつ気体になった水蒸気は空気に溶け込みます。この空気中に含まれる水蒸気が、梅雨の季節などで特に多くなる「湿気」の正体なのです。
気体でもないのに「湯気」に気体の「気」がついている理由
「湯気」という文字には気体の「気」がついていることから「湯気」は気体だと思い込んでいる人が少なくありません。
また、一部の国語辞典などが「湯気」という言葉の意味を「湯や熱い食物などから立ち上る水蒸気」と解説し、あたかも「湯気」と「水蒸気」を全く同じものとしていることが誤解を招いているのでしょう。
気体ではなく液体であるはずの「湯気」という文字に気体の「気」がついているその理由は定かではありません。
ただし「湯気」という言葉は、江戸時代初期に井原西鶴が発刊した『好色一代男』の中ですでに使われています。
科学が発達していない江戸時代初期ですから、煙のように見える湯気が液体であることなど誰も想像できなかったのかも知れませんね。
なお「湯気」という言葉は、『好色一代男』の中の、京都の女性たちの今でいうスキンケアの方法が記述されている箇所に確認することができます。
かほはゆげに。むしたて。手に指かねを。さゝせ足にハ。
筆者現代語訳:顔は湯気で蒸し、手には指金を差し、足には革足袋をはいて寝る。
出典:『好色一代男・巻三:恋のすて銀』
「湯気」と「水蒸気」の違い、まとめ
「湯気」と「水蒸気」の違い、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。最後に「湯気」と「水蒸気」の違いのポイントをまとめますので頭の整理をしてください。
- 【違い】湯気と水蒸気は違うもの。
- 【湯気】湯気は液体。気体ではない。
- 【水蒸気】水が気体になると水蒸気。