「伺う」と「参る」。ともに「行く」の謙譲語である二つの敬語の違いと使い分け方を簡単に区別するポイントは以下の通り、訪問先に敬う人がいるかいないかで判断します。
- 【伺う】訪問先に敬う人がいる場合限定
- 【参る】訪問先に敬う人がいてもいなくても使える
上の区別のしかたを一覧形式にすると次の通りです。
訪問先に敬う人【有】 | 訪問先に敬う人【無】 | |
伺う | OK | NG |
参る | OK | OK |
このページでは、「伺う」と「参る」の違いと使い分け方についてさらに詳しい解説を行っています。使い分け方への理解をより確かなものにしてください。
「伺う」と「参る」の違いと使い分け方を解説
「伺う」は謙譲語、「参る」は丁重語
かつて「伺う」と「参る」は、ともに「行く」の謙譲語でした。
しかし2007年(平成19年)に文化審議会が答申した「敬語の指針」によって、「参る」は丁重語という新しいカテゴリーに分類されました。
この丁重語というカテゴリーの定義を理解することで「伺う」と「参る」の違いがはっきりと見えてくるはずです。
新たに分類された丁重語は、敬うべき相手ではなく、あなたの話を聞く側、あなたの文を読む側に対してへりくだることで丁重な表現をする言葉です。
それに対して、従来からの謙譲語とは敬うべき人に対して、自分の立ち位置を低くしへりくだることで相対的に相手に敬意を示す言葉です。
よって、丁重な表現をすることが目的の丁重語「参る」は、以下のふた通りの使い方が可能です。
訪問先に敬う人【有】「御社に参ります」
訪問先に敬う人【無】「東京に参ります」
しかし、相手を敬うことが目的の謙譲語「伺う」は、以下の使い方はOKですが、
訪問先に敬う人【有】「御社に伺います」
以下の使い方はNGです。
訪問先に敬う人【無】「東京に伺います」
以上、謙譲語と丁重語という違いの観点から「伺う」と「参る」の使い分けをご説明しましたが、まだスッキリしない方は以下の解説をご覧ください。
「伺う」と「参る」それぞれの言葉の意味から、両者の違いと使い分けを整理します。
「東京に伺います」はNGだと上に述べましたが、そもそも「東京」という地名は敬う対象ではありません。だから謙譲語の「伺う」は「東京」にはNG。オールマイティに使うことができる丁重語の「参る」なら「東京」にもOK。こんな区別の仕方もあります。
『日本國語大辞典』の中での「伺う」と「参る」の違い
数ある日本語の辞典の中でも情報量において日本最大規模の『日本國語大辞典』をご存知でしょうか。
全20巻からなるこの国語辞典に記載されている「伺う」と「参る」の項目の中から、両者の違いを際立たせてる意味だけを抜粋し、以下に引用しました。
【伺う】
「訪問する」の謙譲語で、相手をうやまっていう。目上の人をお訪ねする。【参る】
「行く」の謙譲語で、行く先方をうやまう。卑所から貴所へ、下位者が上位者のもとへ行くことを意味する。出典:小学館『日本國語大辞典』
『日本國語大辞典』中の意味による「伺う」と「参る」の違いと使い分け方を区別するポイントは次の通りです。
【伺う】人を訪問する時。
【参る】人のもとに行く時。場所に行く時。
「伺う」は人だけ。「参る」は人と場所。
強引な区別の仕方にはなりますが、謙譲語と丁重語の区別でどうしても混乱してしまう場合、行き先で区別してしまいましょう。
企業の採用面接のメールをもらった場合、そのメールに返信する際の「伺う」「参る」問題で悩む人は少なくありません。迷わず次の文言を使いましょう。
「○月×日▲時に伺います」
「伺う」と「参る」の違いと使い分け方、まとめ
「行く」の謙譲語「伺う」と「参る」の違いと使い分け方、このページの解説でおわかりいただけましたでしょうか。
理解をより確かなものにしたい方には、謙譲語や丁重語を含む敬語全般について詳しく解説したページも用意しています。合わせてご覧ください。
・敬語は5種ある!【尊敬語,謙譲語,丁重語,丁寧語,美化語】違いと使い分け