「ジーパン」と「ジーンズ」の違いについてインターネット上では諸説入り乱れているため服飾関連の文献で徹底調査したところ、二種類の呼び名の意外な事実が判明しました。
その意外な真実とは・・・
- 【ジーパン】1940年代後半に終戦直後の日本で命名。GIのパンツの略。
- 【ジーンズ】米国でも「ジーンズ」の名が定着したのは1950年代前半。
- 【ジーン】複数形の「ジーンズ」はスボンの名前。生地名は「ジーン」。
このページでは「ジーパン」と「ジーンズ」の違いの調査結果をまとめています。「ジーパン」と「ジーンズ」にまつわる意外な真実をお楽しみください。
【ジーパン】1940年代後半に終戦直後の日本で命名
【ジーパン】二種類ある名称の由来説
終戦直後、進駐軍の払い下げ品の中にあった作業スボンが闇市に横流しされ販売されたのが日本の「ジーパン」や「ジーンズ」の歴史の始まりです。
そして「ジーパン」という呼び名が終戦直後の日本人が命名した和製英語であることは、インターネット上でも多くの方が語っています。
この命名の由来には二つの説があることをご存知でしょうか。
【2】ジーンズと呼ばれる生地で出来たパンツだから「ジーパン」
どちらの説ももっともらしく聞こえますが、調査の結果わかったのは【1】の「Gパン=ジーパン」説がどうやら正しいらしいということです。
【ジーパン】GI(進駐軍の米兵)のパンツ「Gパン」が正しいらしい
戦後の復興期の1948年(昭和23年)に創業され現在もなお東京上野のアメヤ横丁で営業を続けている「ジーンズショップ・マルセル」。
同店の創業者・檜山健一氏が「Gパン」と名付けたのが「ジーパン」の名前の由来で、同点のホームページにて、以下に引用する記述が確認できます。
ジーンズを日本で最初に販売したとして知られる上野のマルセル。Gパンというネーミング発祥の店。 東京は上野アメヨコで1948年に創業したGパン屋マルセルは今も変わらずGパンを売り続けます。
出典:「ジーンズショップ・マルセル」ホームページ
また、服飾研究家・出石尚三氏は1950年代末に初めて「ジーパン」を穿いたその頃「ジーンズ」という呼び名は聞いたことがなかったと語っています。
さらに終戦当時の1940年代後半。「ジーンズ」の生まれ故郷であるアメリカでさえも「ジーンズ」という呼び名は存在はしていても世間には普及しておらず、デニム生地のパンツは「オーバーオールズ」や「リーバイズ」という名で呼ばれていたとか。
多くのアメリカ人の間ですら「ジーンズ」という名が知られていない時代に、日本人がそれまで見たこともないような作業ズボンの生地の名前がわかるとは思えません。
まして当時、その見慣れぬ作業ズボンは囚人服であるという噂すら流れたそうです。
それほどまでに馴染みのなかったズボンの、しかも生地の名を特定し、生地がジーンズだから「ジーパン」と呼んだという説は現実的ではありません。
「ジーンズ」が日本に初めて登場したのは意外に早い時期で、1923年(大正12年)のことでした。関東大震災が発生した際、アメリカから送られてきた救援物資の中に「ジーンズ」が入っていたのだそうです。しかし、ほとんどの被災者から見向きもされなかったようです。またその数年後には輸入もされ「香港ズボン」という呼び名で日本国内の市場に登場したものの、人気が出ないまま市場から姿を消したと記録に残されています。
日本と「ジーンズ」の本格的な関わりは終戦後。アメリカから輸送されてくるGI(進駐軍の米兵)用の物資を破損させないため荷の中にクッション材として詰め込まれていた履き古しの中古の「ジーンズ」が闇市に出回ったのがはじまりです。これを払い下げて本格的なビジネスとしたのが上述した「ジーンズショップ・マルセル」でした。
【ジーンズ】米国でも普及していなかった「ジーンズ」という呼び名
上にも記したように「ジーンズ」の生まれ故郷であるアメリカでも「ジーンズ」という呼び方は、ある時期まで普及していませんでした。
アメリカで「ジーンズ」という呼び名が普及するきっかけとなったのは、まさに日本の闇市で「Gパン」が売られていた終戦二年後の1947年にラングラー社が出した広告でした。
ラングラー社は広告の中でデニム生地のパンツに「ジーンズ」という名前をつけて宣伝。デニム生地のパンツが公に「ジーンズ」と呼ばれるのはこれが初めてのことでしたが、この名前はすぐには普及しなかったようです。
ちなみにラングラー社がデニム生地のパンツに「ジーンズ」という名前をつけて売り出したのには訳がありました。
リーヴァイスとリーという2大ブランドがそれぞれデニム生地のパンツを「オーバーオールズ」「カウボーイ・パンツ」という呼び名で販売しすでに市場を席巻する中、後発ブランドだったラングラーが市場に食い込んでゆくにはシンプルで力強い商品名が必要でした。
そこでラングラーは「ジーンズ」という当時としては目新しい名前をつけてデニム生地のパンツの販売を開始。
十年ほどの歳月をかけて「ジーンズ」という呼び名を消費者の間に浸透させ、ついに「ジーンズ」をデニム生地のパンツの代名詞にまでしてしまったのです。
【ジーン】複数形の「ジーンズ」はスボンの名前。生地名は「ジーン」
「ジーンズ」は生地の名前であるという解説をよく見かけますが、語尾に「ズ」がついて複数形になった「ジーンズ」はズボンのことで、生地の名は「ジーン」です。
ちなみに「デニム」と「ジーン」は同一視されていますが、厳密に言うと「デニム」と「ジーン」はまったく異なる生地です。
「デニム」と「ジーン」は別物。にも関わらずラングラーはデニム生地のパンツに、デニムとは別物である生地の名前「ジーンズ」という名前をつけることで「ジーンズ」をデニム生地のパンツの代名詞にしました。
そのため、「デニム」と「ジーン」が同一視されるようです。
なお、「デニム」と「ジーン」の違いについては以下のリンク先のページで詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
▼関連記事
・「デニム」と「ジーンズ」の違い/実は別物の二種類の生地
「ジーパン」と「ジーンズ」の違い、まとめ
「ジーパン」と「ジーンズ」の違いにまつわる意外な真実、お楽しみいただけましたでしょうか。最後にもう一度、「ジーパン」と「ジーンズ」の違いのポイントを以下にまとめます。
- 【ジーパン】1940年代後半に終戦直後の日本で命名。GIのパンツの略。
- 【ジーンズ】米国でも「ジーンズ」の名が定着したのは1950年代前半。
- 【ジーン】複数形の「ジーンズ」はスボンの名前。生地名は「ジーン」。