「顧みる」と「省みる」の違いと使い分け方を区別するポイント

「顧みる」と「省みる」はともに「かえりみる」と読み、両方とも何かに意識を向けることを意味する言葉です。

よく似ているこの二つの言葉、その違いと使い分けは意識を向ける対象によって区別することができます。次の通りです。

  • 【顧みる】意識を向ける対象が自分、他人、時代
  • 【省みる】意識を向ける対象が自分だけ

このページでは「顧みる」と「省みる」のそれぞれの言葉の意味と、違いと使い分け方についてさらに詳しく解説しています。

「顧みる」と「省みる」の言葉の意味から違いを解説

【顧みる】
ふりかえる。ふりむく。
心配する。気に掛ける。
過去を思い出す。回顧する。

【省みる】
自分の行いをふりかえる。
反省する。
出典:小学館『新選国語辞典』

「顧みる」と「省みる」それぞれの言葉の意味は上に引用した通りですが、これら言葉の意味の対比から、

【1】意識を向ける対象の違い
【2】意識の向け方の違い

という二つの点で、違いと使い分け方を区別することができます。

【1】意識を向ける対象の違いで区別する「顧みる」と「省みる」

上に引用した国語辞典も含めて「顧みる」と「省みる」の両方に共通する意味は「ふりかえる」。すなわち「意識を向ける」ことですが、その対象に大きな違いがあります。

「顧みる」の「意識を向ける」対象が特定されていないのに対して、「省みる」の「意識を向ける」対象は「自分」だけです。

また「省みる」のもう一つの意味である「反省する」という行為も、その対象は「自分」に限定される行為です。

このことから、「顧みる」と「省みる」の決定的な違いは「意識を向ける」対象が無制限なのか、それとも自分限定なのかで区別することが可能です。

  • 【顧みる】意識を向ける対象が自分、他人、時代
  • 【省みる】意識を向ける対象が自分だけ

【2】意識の向け方の違いで区別する「顧みる」と「省みる」

「顧みる」と「省みる」の二つの言葉の間には「意識を向ける」対象の違いだけでなく、「意識の向け方」の違いも存在します。

「顧みる」の「意識の向け方」は「ふりかえる」「心配する」「気に掛ける」「過去を思い出す」「回顧する」など多種多様です。

それに対して「省みる」は「ふりかえる」と「反省する」の二点のみ。さらに「反省する」という言葉の意味は「自分の言動をふりかえる」なので、実質「ふりかえる」限定です。

  • 【顧みる】意識の向け方が多種多様
  • 【省みる】意識の向け方が「ふりかえる」限定

【顧と省】で区別する「顧みる」と「省みる」の違い

「顧みる」と「省みる」は、「顧」と「省」という漢字が使われている熟語の意味を知ることで、両者の違いをさらにはっきりと理解することができるようになります。

参考までに「顧」と「省」という漢字の意味は次の通りです。

【顧】という漢字が使われている熟語

【顧】ふりかえって見る。目をかける
【一顧(いっこ)】ちょっとだけふりかえって見ること。
【回顧(かいこ)】過去をふりかえってみること。
【顧客(こきゃく)】特別に目をかけている客。
【愛顧(あいこ)】ひいきにすること。ひいきにしてもらうこと。

「顧」という漢字が使われている熟語も「顧みる」と同様に、意識を向ける対象は特に限定されず、意識の向け方も様々です。

【省】という漢字が使われている熟語

【省】ふりかえってよく考える。
【省察(せいさつ)】自分自身の言動の良否を考えること。
【三省(さんせい)】毎日三度反省すること(1日に何度も反省することのたとえ)
【自省(じせい)】反省すること。
【内省(ないせい)】自分の心のはたらきをかえりみること。
【反省(はんせい)】振り返って考えること。

「省」という漢字が使われている熟語も「省みる」と同様に、意識を向ける対象はあくまでも自分自身に対してです。

また意識の向け方も、自分の言葉や行い、考え方の是非・良否を自分自身に対して厳しく問うものばかり。言い換えると「反省」に通じる事柄ばかりです。

【用例】で区別する「顧みる」と「省みる」の違い

最後に、具体的な用例で「顧みる」と「省みる」を区別してみました。なお、違いを理解しやすくなるよう、似た状況を「顧みる」と「省みる」で使い分けてみました。

【顧みる】家族を顧みずに今日まで働いてきた
【省みる】家族をないがしろにして働いてきたことを省みる
「顧みる」は家族を無視してきたという事実を振り返っています。それに対して「省みる」は家族を無視してきた自分の働き方を振り返っています。

【顧みる】昨年の日々を顧みる
【省みる】昨年の行動を省みる
「顧みる」が昨年の出来事を思い出しているだけなのに対して「省みる」は昨年の自分の行動を振り返っています。

【顧みる】危険やリスクを顧みずに登山する
【省みる】危険やリスクを考慮せず登山したことを省みる
「顧みる」が危険やリスクに注意を払わなかったという事実を振り返っているのに対して、「省みる」は無謀な行動をしてしまった自分の良し悪しを振り返っています。

「顧みる」と「省みる」の違いと使い分け方、まとめ

「顧みる」と「省みる」の違いと使い分け方、このページの解説でご納得いただけましたでしょうか。最後にもう一度、区別のポイントを以下にまとめます。

 顧みる省みる
意識を向ける対象自分、他人、時代自分だけ
意識の向け方多種多様「ふりかえる」だけ

 

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