「成長」と「生長」の違いと使い分け方をシンプルに解説

「成長」と「生長」の違いはとってもシンプル、次の通りです。

  • 【成長】動植物など育って大きくなること。経済などにも用いられる。
  • 【生長】動植が育って大きくなること。

しかし文部科学省の『学術用語集』の「動物学編」「植物学編」それぞれでは、動物・植物ともに表記を「成長」で統一するとしています。

よって「成長」と「生長」の使い分け方は以下の通りとなります。

  • 【成長】基本的にこちらを使えば間違いない。
  • 【生長】固有名詞に「生長」が含まれている場合だけ使う。

このページでは「成長」と「生長」の違い使い分け方について、それぞれの言葉の意味を確認しながらさらに詳しく解説しています。

「成長」と「生長」の違い

【成長(せいちょう)】
①人・動植物などが育って成熟すること。育って大きくなること。おとなになること。
②規模が大きくなること。拡大。拡張。

【生長(せいちょう、しょうちょう)】
①人、また動物が生まれそだつこと。おいたつこと。
②草木などのおいそだつこと
③大きくなること。うまれそだつこと。

出典:小学館『日本國語大辞典』

数ある国語辞典の中で「成長」と「生長」について最も詳しい解説がされている『日本國語大辞典』では、「成長」と「生長」はほぼ同義語として扱われています。

「成長」と「生長」の使い分けに動物と植物の区別はなく、「成長」と「生長」の違いを際立たせているポイントはたった一つ。

「成長」は動植物以外にも用いられるという点です。

「規模が大きくなること」という意味も含む「成長」は「経済成長」「成長通過」「成長株」など経済分野でも頻繁に使われる言葉です。

ところで、大半の国語辞典が「成長」と「生長」をほぼ同義語とみなす中で、小学館の『新選国語辞典』の中に以下に引用する記述が見つかりました。

学術用語では「生長」は植物に、「成長」は動物に用いる。
出典:小学館『新選国語辞典』

小学館の『新選国語辞典』以外の一部の国語辞典でも「成長」と「生長」の対象を動物と植物に区別する解説が付され、一般的にもこの使い分け方がよく知られています。

では、この「成長」と「生長」の使い分け方の由来はどこにあるのでしょうか。

「成長」と「生長」の使い分け方

戦後、「当用漢字表」と「現代かなつかい」が制定された時のこと。学界や教育界からも学術用語の制定を求める声があがり、当時の文部省が学術用語の整理・統一事業に着手。

昭和22年(1947年)に設置された「学術文献調査特別委員会学術用語調査研究科会(後の「学術審議会学術用語分科会」)」で、自然科学24分野、人文科学10分野の学術用語の調査が進められ、制定された用語は『学術用語集』として刊行されました。

その際、植物学の審査に当たり植物学用語専門部会の服部静夫氏が「『生長』は生い長くなるという意味、『成長』は長くなるという程の意味、あるいは成体になるというほどの意味 と考えられている」と説明。

これにより、『学術用語集-植物学編』では「生長」が、『学術用語集-動物学編』では「成長」が採用され【「生長」は植物「成長」は動物 】という使い分け方が定義として確定しました。(参考:『学術用語の表記の基準よもやま(青戸邦夫)』

しかし昭和31年(1956年)の『学術用語集』改定により、動物・植物を問わず「成長」という表記に統一することが決定。

それ以降『学術用語集-植物学編』『学術用語集-動物学編』ともに「成長」が用いられ、これを受けても現在でも学校の教科書などは「成長」で統一されています。

なお、文部科学省の国語審議会が発行している『同音異義語の使い分け』においては「成長」と「生長」の使い分け方を次のように示しています。

【生長】植物などが伸び育つこと。(例)稲が生長する。
【成長】人間・動物などが育ち成熟すること。(例)子どもが成長する。
出典:文部科学省国語審議会『同音異義語の使い分け』

よって、植物が伸び育つことを「成長」と表記しても「生長」と表記しても間違いはありませんが、もし使い分けに迷うようであれば「成長」にするのが無難な選択です。

ところで「生長の家(神道系宗教団体)」などのように固有名詞の中に「生長」が用いられている場合には「生長」を使うべきであることは言うまでもありません。

コラム:『文部省学術用語集-動物学編-増訂版』
平成2年発行の『文部省学術用語集-動物学編-増訂版』には「成長」をはじめとして「成長部」「成長解析」「成長勾配」「成長調整物質」など「成長」に関連する学術用語は24種類が掲載されています。これら24種類はすべて「成長」で統一されています。

「成長」と「生長」の違いと使い分け方、まとめ

「成長」と「生長」の違いと使い分け方、このページの説明でご納得いただけましたでしょうか。最後にもう一度、「成長」と「生長」の違いと使い分け方のポイントをまとめますので頭の中の整理にご活用ください。

  • 【成長】動植物など育って大きくなること。経済などにも用いられる。
  • 【生長】動植が育って大きくなること。
  • 【成長】基本的にこちらを使えば間違いない。
  • 【生長】固有名詞に「生長」が含まれている場合だけ使う。
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