ほぼ同じ意味と理解している人が多い「純粋」と「素直」という一対の言葉は、以下の2つの具体事例を通して観察するとまったく異なる意味を持つ言葉であることがわかります。
- 「純粋」だが「素直」ではない会社員の例
- 「素直」だが「純粋」ではない会社員の例
このページでは、2つの具体事例を通して「純粋」と「素直」の違いを解説しています。
「純粋」と「素直」の違いを2つの具体事例を通して解説
「純粋」と「素直」の言葉の意味
「純粋」と「素直」の違いを区別する具体事例を観察する前に、「純粋」と「素直」それぞれの言葉の意味を確認します。
【純粋】邪念・私欲がないこと。
【素直】人にさからわないこと。
岩波書店『広辞苑』より一部抜粋・引用
「純粋」も「素直」も、上に挙げた意味の他にも様々な意味を持つ言葉です。
しかし「純粋」と「素直」の違いを際立たせるため、上に挙げた意味にフォーカスを絞って「純粋」と「素直」の違いを区別するための具体事例を観察することにします。
「純粋」だが「素直」ではない会社員Aの例
会社員Aが上司の営業方針に対して異を唱えました。
会社員Aには邪念や私欲など微塵もありませんでした。上司ににらまれ左遷されるのも覚悟の上。ただひたすらに会社の利益を守り抜くその一心で上司に対して意見したのです。
会社員Aは「純粋」です。
その動機に邪念も私欲もなく「純粋」という言葉の定義そのままです。
しかし、上司から見たら会社員Aは「素直」ではありません。自分の営業方針に真正面からさからったからです。
たとえ「純粋」であったとしても「素直」ではありません。
「素直」だが「純粋」ではない会社員Bの例
上の例に挙げた「素直」でない部下・会社員Aに手を焼く上司。
この上司のもう一人の部下である会社員Bは、上司の営業方針にさからいなどしません。諸手を挙げて賛成します。
上司から見たら、自分にさからわない会社員Bは「素直」です。
ところが会社員Bの腹の中は邪念や私欲でいっぱいでした。会社員Bも上司の営業方針が会社の利益を損なうことは承知していました。
しかし会社員Bにとって大切なのは会社の利益よりも自分の出世でした。だから、会社の利益という大義を捨て、私欲を守るために「素直」に徹する道を選んだのです。
会社員Bは上司から見たら「素直」です。しかし「純粋」ではありません。このように「純粋」でなくても「素直」になることは可能です。
「純粋」と「素直」の違い、まとめ
「純粋」であることは時に「素直」であることを拒絶し、「素直」はまた「純粋」とは正反対の「不純」のための武器になることがおわかりいただけましたでしょうか。
「純粋」と「素直」を同じ意味の言葉として認識する人も少なくありませんが、上の例のように「純粋」と「素直」が両立しないケースも少なくありません。
「純粋」と「素直」の違い、ポイントをまとめると以下のようになるかと思います。
- 【純粋】とは動機。
- 【素直】とは行動。
- 【動機と行動】は一致するとは限らない。