似て非なる二つの言葉「目的」と「目標」は明確な区別が出来ていないと、望む成果を得ることが難しくなってしまいます。
このページでは、成功するために正しく理解しておきたい「目的」と「目標」の違いと使い分け方を区別するポイントを5つのステップに分け、それぞれのステップについて「目的」と「目標」の具体例を交えながら詳しく解説しています。
- 目標は通過点、目的は終点
- 目標は手段、目的は到達点
- 目標は具体的、目的は抽象的
- 目標は複数・変更可、目的は一つ・変更不可
- 目標は仕事を完成に導き、目的は仕事の質を高める
「目的」と「目標」の違いを理解して成功するための5ステップ
【STEP1】目標は通過点、目的は終点(例:コンビニとレストラン)
こんな場面を想像してください。あなたはこれから口コミで大評判の看板のないレストランに食事に行くところです。
ところでそのレストランは看板もなければグーグルマップにも載っていません。そして、あなたはそのレストランの場所がどこにあるのかを知りません。
目印となるのは、そのレストランが入居しているビルの一階にあるコンビニだけです。
上に述べた状況。これは「目的」と「目標」の違いを最もシンプル且つ具体的に区別することができる状況です。
あなたはきっと「コンビニ」を目指して歩いて行くことになると思います。しかし、あなたの目的地は「コンビニ」ではありません。
あなたの目的地は「看板のないレストラン」です。あなたが「コンビニ」を目指して歩いているのは「目的」である「看板のないレストラン」に確実に着くためです。
「目的」である「看板のないレストラン」に確実に着くための通過点、それが「コンビニ」であり「目標」と呼ばれるものです。
【目標】コンビニ
岩波書店の『広辞苑』によれば「目的」という言葉の定義は「成し遂げようと目指す事柄」とあります。「成し遂げる」という文言にもあらわれているように、最終的に目指す到達点、すなわち終点を意味するのが「目的」です。
【STEP2】目標は手段、目的は到達点(例:志望校合格の目標と目的)
受験生たちは、テストでの高得点、偏差値の最大化、またそれらを実現するための勉強時間の確保や勉強の進捗など様々な事柄を「目標」に据えています。
何故彼らはこれほどまでに目標を達成しようと懸命なのでしょうか。言うまでもなく志望校に合格するという到達点にたどり着くためです。彼らが「目標」を達成しようと懸命な理由、それが「目的」です。
そして「目的」である志望校合格という到達点にたどり着くための手段として様々な事柄を「目標」に据えているのです。
「目標」達成の積み重ねが「目的」にたどり着くただ一つの道であり、ただ一つの手段だからこそ、受験生たちは唯一の手段「目標」にそれほどまでに集中するのです。
【目標】テストでの高得点、偏差値の最大化、勉強時間の確保、勉強の進捗
岩波書店の『広辞苑』によれば「目標」という言葉の定義は「目的を達成するために設けためあて」とあります。この定義を別の言葉で言い換えるなら「目的を達成するために設けた手段」になります。
【STEP3】目標は具体的、目的は抽象的(例:ダイエットの目標と目的)
3ヶ月で5キログラム減量。半年でお腹まわりマイナス10センチ。これら数値はダイエットでは定番の「目標」です。
ところでダイエットを実践している人たちは何故わざわざ体重やお腹まわりの数値を小さくしようとするのでしょうか。
女性であればお気に入りの洋服を再び着れるようになりたい。中年男性であれば健康診断で引っかかり、健康のため。それらが動機でしょう。
この動機こそが「目的」です。
上に述べたダイエットの「目標」と「目的」で分かるように、「目標」が数値で示され具体的であるのに対して「目的」は数値で示すことができない抽象的な事柄です。
【目標】3ヶ月で5kg減量、半年でお腹まわりマイナス10cm
岩波書店の『広辞苑』によれば「手段」という言葉の定義は「目的を達成するための方法」とあり「目標」の定義である「目的を達成するために設けためあて」とほぼほぼ同じ意味を持っています。
【STEP4】目標は複数・変更可、目的は一つ・変更不可(例:アスリートの目標と目的)
「目標達成は技術である」そう言い切る教育の専門家・原田隆史氏は、大会等での優勝を目指すアスリートたちに「最低限の目標」「中間の目標」「最高の目標」の三段階の目標を設定させることで知られています。
「目的」はただ一つ、優勝あるのみです。準優勝や第三位への変更はあり得ません。しかし「目的」である優勝に着実にリーチするために「目標」は柔軟に設定する。
それが、目標達成のエキスパートである原田隆史氏の考え方です。
「目標」の設定は簡単ではありません。高すぎる「目標」を設定してしまい下方修正が必要となる場合もあれば、設定した「目標」が低すぎて上方修正する場合もあります。
しかし下方・上方問わず「目標」の修正が「目的」に与える悪影響を最小化し、たった一つの「目的」を守るために「目標」は複数持っておく。
やむを得ない場合は「目標」を柔軟に修正・変更し「目的」への影響を回避する。
最も大切で変えてはならない「目的」を守るため、「目標」は複数持ち、必要に迫られれば変えてしまうというのが「目標」と「目的」の違いを際立たせている大きな点です。
【目標】最低限の目標、中間の目標、最高の目標
「目標」や「目的」と一緒に語られることの多い「ゴール」という言葉は、『広辞苑』によれば「目的・目標に達すること」と定義されています。「目的」を「ゴール」と言い換えるケースがありますが「ゴール」には「目標」も含まれているので、「目的」=「ゴール」と定義づけると混乱を招くことになるかもしれません。
【STEP5】目標は仕事を完成に導き、目的は仕事の質を高める(例:3人のレンガ職人の話)
「3人のレンガ職人の話」という有名な寓話をご存知ですか?この寓話は「目的」と「目標」の違いの本質を鋭く洞察していることで知られています。
大雑把なあらすじは以下の通りです。
3人のレンガ職人の寓話
ある男が通りかかったある街で、レンガ積みの作業を黙々とこなす三人のレンガ職人に会いました。その男は三人のレンガ職人に「何をしているのか?」と尋ねます。
三人のレンガ職人それぞれの答えは以下の通りでした。
一人目のレンガ職人:「レンガを今日中に百個積むように命令されたから、その通りにしているまでさ」
二人目のレンガ職人:「こんな暑い日にレンガを百個積まなければいけないんだが、家族を食べさせるためにしかたなくやっているだけさ」
三人目のレンガ職人:「毎日、百個のレンガを積み重ねることで、いつの日かこの建物を世界一立派な大聖堂にしたいのさ」
お気づきでしょうか?彼らレンガ職人は三人とも目標はまったく同じです。一日に百個のレンガを積むこと。それが彼ら三人に共通した目標です。
目標はまったく同じなら、作業内容もまったく同じです。しかし、三人の職人の仕事の仕上がりのクオリティはまったく違うものになると想像できませんか?
三人の職人の仕事のクオリティを決定づけるもの、それが「目的」です。
三人の職人の中で最も高品質の仕事を残すであろう三人目の職人の持っている「目的」には壮大なロマンがあります。
二番目の職人も家族を養い続けるという「目的」に支えられているので、いい加減な仕事はしないでしょうが、立派な仕事を残せるとは思えません。
一番目の職人・・・この人が手がけた建物はちょっとばかり危険そうなので入るのは避けたいところですね(笑)
目標は仕事を完成に導き、目的は仕事の質を高める
さて、三人のレンガ職人は同じ目標を持っています。この目標があるために、三人ともその日の仕事を完成させることが出来ます。
しかし、たとえ仕事は完成しても、完成した仕事の品質には雲泥の差が生じます。この差を生じさせる要因、それが「目的」の有無であり「目的」の質です。
ところで、経営コンサルタントの小宮一慶氏は「目的」とは「存在意義」であると定義づけています。自分・自社は何の「目的」のために存在するのか、ということです。
上のレンガ職人の話でいえば、三人目のレンガ職人は「レンガ職人として存在意義」を明確に意識しています。世界一の聖堂を建てるためのレンガ職人。それが三人目のレンガ職人の「存在意義」です。
一方、一人目と二人目のレンガ職人は「レンガ職人として存在意義」を持ってはいません。二人目がかろうじて「一家の長として存在意義」を持っていますが、それは職人としての「存在意義」ではありません。
「目的」を「存在意義」にまで突き詰めたとき、その「目的」はあなたの仕事の質を最高品質のものに高めてくれます。
望む成果や成功を手中に収めるためにも「目的」を徹底追及し、自分・自社の「存在意義」にまで高めたいものですね。
【目標】一日に百個のレンガを積むこと
「目的」と混同されがちな言葉に「方針」があります。『広辞苑』によれば「方針」のもともとの意味は「方位を指し示す磁石の針」です。「目的」を目指すための方位磁石のようなもの。それが「方針」です。
「目的」と「目標」の違いを理解して成功するための5ステップ、まとめ
「目的」と「目標」の違いはお分かりいただけましたでしょうか。最後に、このページで述べた「目的」と「目標」の違いのポイントを一覧形式でまとめました。
このページの情報がいささかでもあなたの成功にお役に立つことができれば幸いです。
「目的」と「目標」の違いを理解するための5つのポイント | |
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目標 | 目的 |
通過点 | 終点 |
手段 | 到達点 |
具体的 | 抽象的 |
複数・変更可 | 一つ・変更不可 |
仕事を完成に導く | 仕事の質を高める |