つらい経験や思いを表す時に使う「苦汁」と「苦渋」。それぞれの言葉を「〜をなめる」「〜を味わう」と合わせて使うときの区別のしかたはいたって簡単。次の通りです。
- 【苦汁をなめる】汁だから「なめる」
- 【苦渋を味わう】味覚の渋だから「味わう」
「苦汁」と「苦渋」の使い分けを区別するポイントは上の通りです。さらに詳しい解説を以下に記しています。合わせてご覧になってください。
「苦汁」と「苦渋」の違いと使い分け方を解説
「苦汁」と「苦渋」の使い分け方をシンプルに区別しましたが、あまりにもシンプル過ぎて本当のことなの?と疑念をお持ちの方もおられるかと思います。
そこで国語辞典の王様『広辞苑』で「苦汁」と「苦渋」それぞれの言葉の意味を調べつつ、「苦汁」と「苦渋」の違いと使い分け方を解説いたします。
【苦汁をなめる】汁だから「なめる」
【苦汁】
①にがい汁
②転じて、苦しみまたはにがい経験
「苦汁を嘗める」
出典:岩波書店『広辞苑』
『広辞苑』をはじめとして大半の国語辞典では「苦汁」の言葉のもともとの意味は、文字通りの「苦汁:苦い汁」、漢字の表記の通りの意味を持っています。
「汁」という実体があり、なめることが出来るものなので「なめる」。よって「苦汁をなめる」が正解です。
また、実体のある「汁」という言葉が使われている「苦汁」は、同じく実体のある「経験」を表す言葉でもあります。
「苦汁」は言い換えると「苦い経験」です。
【苦渋を味わう】味覚の「渋」だから味わう
【苦渋】
①にがくてしぶいこと。
②転じて、物事がうまく進まず、苦しみ悩むこと。
「苦渋を味わう」「苦渋に満ちた人生」
出典:岩波書店『広辞苑』
「苦渋」という言葉も、もともとの言葉の意味は「苦渋:苦くて渋い」という漢字があらわしている通りの意味を持っています。
「苦い」も「渋い」も味覚です。実体がないのでなめることはできません。味覚は味わうことしかできません。よって「苦渋を味わう」が正解です。
また実体のある「汁」が「経験」を象徴し、「苦汁」が「苦い経験」と言い換えられるのに対して、実体のない「渋」は実体のない「悩み」を象徴しています。
「苦渋」は言い換えると「苦い悩み」です。
「苦汁」と「苦渋」の違いと使い分け方、まとめ
「苦汁」と「苦渋」の違いと使い分け方、おわかりいただけましたでしょうか。最後にもう一度、ここまで述べてきた二つの言葉を区別するポイントをおまとめいたします。
- 【苦汁をなめる】汁だから「なめる」
- 【苦渋を味わう】味覚の渋だから「味わう」
- 【苦汁と苦渋の違い】「苦汁」=「苦い経験」/「苦渋」=「苦い悩み」