「若干」と「弱冠」という一対の言葉は、意味がまったく違うにも関わらず間違って使う人が少なくありません。このページでは誤用を避けるポイント、そして迷うことが多い年齢の使い方についてまとめています。
「若干」と「弱冠」の違いと使い方
- 【若干】数が少ないこと
- 【弱冠】年齢が若いこと
- 【弱冠】放送業界では18~22歳。20歳限定説も根強い
「若干」と「弱冠」それぞれの言葉の意味と使い方を徹底解説
【若干】数が少ないこと
【若干】
①それほど多くはない、不定の数量。
②多少。いささか。
用例:採用若干名、若干優れている
引用:岩波書店『広辞苑』
若さを表す際に、年齢に「若干」をつけてしまう人が少なくありません。しかし、年齢に「若干」をつけてしまうのは完全な誤用です。
「若干」という言葉は数が少ないという意味を持ってはいますが、そこに年齢の要素は含まれてはいません。
ちなみに「若干」の「干」という文字は「一」と「十」を合体させた文字で、「一」と「十」で「一の若く(ごとく)、十の若し」という意味を持っています。
「一の若く、十の若し」とは現代口語に訳すと「一のようでもあり、十のようでもある」となり、数が少なくてしかも数が決まっておらず曖昧な状態を指しています。
なお「一の若く、十の若し」を一桁とする説もありますが、この言葉は曖昧さを意味していますので桁数にそれほどこだわる必要もないかと思います。
【弱冠】年齢が若いこと
【弱冠】
①20歳の男子の異称。また成年に達すること。
②年の若いこと。
用例:弱冠17歳で七段の棋士
引用:岩波書店『広辞苑』
古代中国では「弱」という漢字は20歳(成人)を意味しました。そして20歳になったことを祝って「冠」をかぶって元服式を行ったことが「弱冠」という言葉の由来です。
よって、もともとは20歳の男子を意味する言葉で年齢も性別も特定されていたのですが、近年は性別の区別もなくなり、年齢も20歳と特定せずに使われるケースが増えています。
年齢に使う「じゃっかん」は「若干」でなく「弱冠」。成人式のお祝いに「冠」をかぶると覚えておけば誤用を避けられます。
【弱冠】放送業界では18~22歳。20歳限定説も根強い
上に述べたように本来は「男子20歳の異称」であった「弱冠」という言葉ですが、この言葉を使う上で性別も年齢も制限がなくなる傾向にあります。
事実、放送業界では20歳のプラスマイナス2歳、すなわち18~22歳の間なら「弱冠」を使っても良いという基準をもうけています。
また国語辞典によっては放送業界以上のゆるやかな年齢基準をもうけており、国語辞典のクラシックとも言える『広辞苑』では用例として「17歳」を掲載。
『精選版日本国語大辞典』では「34歳」という用例を示しています。
なお、NHK放送文化研究所では「弱冠」の本来の使い方を基準にしています。
「弱冠」は、もともと男子20歳の異称です。特に女性にそのような言い方をするのは適切・的確ではありません。
出典:NHK放送文化研究所
20歳前後の女性に「弱冠」という言葉を用いても誤用とは言い切れませんが、一方で「弱冠」の本来の意味にこだわる考え方も根強いため、私的なメールや手紙以外では安易に「弱冠」を使わないのが無難です。
「若干」と「弱冠」の違いと使い方、まとめ
「若干」と「弱冠」の違いと使い分け方、おわかりいただけましたでしょうか。このページで述べた要点を、最後にもう一度まとめてみます。
- 【若干】数が少ないときに使う
- 【弱冠】年齢が若いときに使う
- 【弱冠】放送業界では18~22歳。20歳限定説も根強い