子供をほめる時や部下をほめる時など。「褒める」と「誉める」のどちらを使えば良いか迷う方が少なくありません。このページでは「褒める」と「誉める」の違いを理解し、正しく使い分けることができるようになるポイントをお伝えしています。
「褒める」と「誉める」の違いと使い分けを理解する3つのポイント
- 「褒める」と「誉める」は同じ意味。
- 「褒める」は常用漢字。こちらを使えば間違いはない。
- 「褒める」と「誉める」を使い分けたい場合は漢字の意味を知る。
「褒める」と「誉める」の違いと使い分けを解説
「褒める」と「誉める」の違いを理解し正しく使い分けるために最低でも抑えておきたい3つのポイントは上に挙げた通りです。
これら3つのポイント一つひとつについて、順を追って詳しくご説明いたします。
「褒める」と「誉める」は同じ意味
【褒める/誉める】
物事を評価し、よしとしてその気持ちを表す。
出典:岩波書店『広辞苑』
「褒める」と「誉める」。使われている漢字は異なりますが、大半の国語辞典はこれら二つの言葉をまったく同じ意味の言葉であると解説しています。
使われている漢字が違うにもかかわらず意味は同じなのです。意味が同じなのに果たして使い分けなどできるものなのでしょうか。
できます。
いとも簡単に区別がついてしまう使い分け方法が一つだけあるのです。それが以下に述べる【使い分けポイント1】です。
【使い分けポイント1】常用漢字を使えば間違いはない
「褒める」と「誉める」。意味は同じですが大きな違いが一つだけあります。「褒める」は常用漢字ですが「誉める」は常用漢字ではありません。常用漢字かそうでないか。二つの言葉の決定的な違いはこの一点です。
常用漢字とは役所や学校、新聞・雑誌などで使うことが定められている漢字です。
よって、公用文や正式なビジネス文書。また学生さんであればテストの解答用紙には「褒める」を使いましょう。
特に解答用紙は「褒める」を使わなければ減点対象なので注意が必要です。
しかし、プライベートな手紙やメールなどでは「褒める」と「誉める」、どちらを使ってもまったく問題はありません。
ただし、どちらを使ったら良いのか迷った場合や、誰かに間違いを指摘されるのを避けたいのであれば常用漢字の「褒める」を使っていればまず間違いはありません。
以上【使い分けポイント1】は常用漢字か否か、です。
【使い分けポイント2】漢字の意味を知る
上に述べた通り「褒める」を使っていれば間違いはありません。しかし、「褒める」と「誉める」をどうしても使い分けたい場合もあるかと思います。
そんな場合に「誉める」と「誉める」をどのように使い分けたらいいのでしょうか。
異字同訓の言葉を正しく使い分けるには、漢字そのものも意味を知るか、その漢字が使われている熟語の意味を知れば、おのずと使い分け方が見えてきます。
以下に、「誉」または「誉」の文字が含まれている熟語を知ることで見えてくる【使い分けポイント2】をご説明いたします。
【褒】が含まれている熟語
【褒美(ほうび)】
ほめて与えるもの。賞与。
出典:岩波書店『広辞苑』
良いことをした子供に対して親が何かを与える時によく使う「ごほうび」。
時代劇の中でも、お殿様などの偉い人が部下の働きに対して金品を与える場面で「褒美をとらせる」なんて言う場面を見たことはありませんか?
これら「褒美」という言葉が実際に使われている用例から、二つのことがわかります。
- 目上の者が目下の者の良い行いに対して褒美を与えている
- 努力すれば普通の人でももらうことが出来るのが褒美
【誉】が含まれている熟語
【名誉(めいよ)】
ほまれあること。名高いこと。
出典:岩波書店『広辞苑』
「名誉」とは優れた能力や行為で良い評判を得ることです。
能力的に普通の人でも行える良い行為などでもらえるのが「褒美」。それに対して「名誉」を得るには優れた能力や卓越した行為が求められます。能力的に普通の人では簡単に手にいれることができないの「名誉」です。
そして優れた能力や行為への評価なので、当然のことですが部下が上司の立派な業績を素晴らしい!と評価する場面もあるでしょう。子供が親の立派な仕事をたたえることだってあるはずです。
以上のような「名誉」という熟語の意味から次の二つのことがわかります。
- 目下の者が目上の者を評価する場合がある
- 普通の人の並みの努力では得ることが難しい
熟語の意味の違いから見えてくる「褒める」と「誉める」の使い分け
以上、【褒】または【誉】を含む熟語から見えてくる違いから、「褒める」と「誉める」の使い分けは次のように区別できると考えられるのではないでしょうか。
「褒める」
- 目上の者が目下の者をほめる
- 普通の人でもできる良い行いに対してほめる
「誉める」
- 目下の者が目上の者をほめる
- 限られた人だけが成し遂げられる偉業に対してほめる
ただし「ほめる」という言葉には俗にいう「上から目線」の意味合いがなきにもしもあらずです。目下の者が目上の者を「ほめる」のは失礼に当たる。そう考えられがちです。
目下の者が目上の者を評価する場面でよく使われる表現は「ほめる」ではなく「ほめたたえる」です。目上の者が目下の偉業を評価するときも「ほめたたえる」です。
よって「ほめたたえる」と言う時だけ「誉める」。その他は「褒める」。どうしても使い分けを行い時は「たたえる」をつける場面か、そうでないか。
ここを基準にしてみはいかがでしょうか。
- ほめるだけの時は「褒める(褒美)」
- ほめたたえる時は「誉める(名誉)」
「褒める」と「誉める」の違いと使い分け方、まとめ
以上、「褒める」と「誉める」の違いと使い分けの区別のしかた、おわかりいただけましたでしょうか。最後に、ここまで述べてきたポイントを一覧表にまとめますので、使い分けの際のお役に立てていただければ幸いです。
褒める | 誉める | |
公用文 | OK(常用漢字) | NG(常用漢字外) |
解答用紙 | OK(常用漢字) | NG(常用漢字外) |
私的手紙 | OK | OK |
使い分け | ほめるだけ(褒美) | ほめたたえる(名誉) |