「押さえる」と「抑える」という二つの言葉は区別するのにそれほど難しい言葉ではありませんが、区別するポイントを誤ってしまうと混乱を招いてしまいます。
このページでは「押さえる」と「抑える」の違いと使い分けを迷いなく区別するポイントをお伝えしています。
このページの目次
「押さえる」と「抑える」の違いと使い分けを区別するたった2つのポイント
結論から申し上げます。「押さえる」と「抑える」の違いと使い分けを区別するたった2つのポイントとは次の二点です。
- 【押さえる】対象を完全にコントロール下に置く
- 【抑える】対象を完全にコントロール下に置けるとは限らない
上に示した2つのポイントだけで「押さえる」と「抑える」の違いがクリアになった方はここまでお読みいただければ大丈夫です。
まだモヤモヤが残っている方は、以下に述べる説明を引き続きご笑覧ください。
「押さえる」と「抑える」の違いと使い分けを区別するポイント
【押さえる】
「押さえる」という言葉には「加えて動けないようにする」という意味があることから、形のあるものや手で触ることができる、物理的な力を入れることができるという特徴を区別のポイントとする考え方が存在します。
しかし「店の予約を押さえる」「予算を押さえる」のように、上に述べた特徴が一つも当てはまらない対象に「押さえる」が使われるケースが数多くあります。上の区別のポイントだとその度に混乱を招きかねません。
ところで「押さえる」という行為には「押さえる」対象が具体的なものだろうが抽象的なことだろうがある共通点が一つだけあります。
それが「対象を完全にコントロール下に置く」という点です。言い換えれば対象の自由をほぼ完全に奪い取ってしまうということです。以下に三つほど用例を示して見ます。
【用例1:紙が風で飛ばされないように手で押さえる】
紙を押さえている人が飛ばされるほどの強風でなければ、この紙は完全に人のコントロール下にあります。
【用例2:宴会を開く店の予約を押さえる】
予約を押さえられた店は、予約した人のコントロール下にあり予約した人がキャンセルしない限り、他のお客さんがそこに入り込む余地はありません。
【用例3:年間予算として100万円を押さえる】
会社や役所などでよく使われるケースです。あらかじめ何かの経費予算として確保した100万円はコントロール下にあり、他の部署に奪われる心配はありません。
【抑える】
上に述べた通り「押さえる」という言葉が「対象を完全にコントロール下に置く」という特徴を持っているのに対して、「抑える」という言葉は「対象を完全にコントロール下に置けるとは限らない」という弱さを持っています。
こちらについても用例によって解説いたします。
【用例1:経営者が労働者の不満を抑える】
不満という感情を完全にコントロールできるのは労働者だけです。第三者がコントロールできる問題ではありません。また、そもそも感情は自分自身でも完全にコントロールできるものではありません。
【用例2:相手チームの反撃を抑える】
相手チームの反撃を最小化しようとどれほど努力したところで、間違いなく相手チームの反撃をなくすことなど出来ません。相手チームをコントロールするのは不可能と言い切ってしまっても差し支えないでしょう。
【用例3:経費予算が100万円を突破しないように抑える】
経費予算として100万円の枠を持っていたものの想定外の出費が重なり予定よりも早く100万円の経費予算を使いきりそうです。枠として決められた100万円を超えないことが願いですが、想定外の出費がさら発生した場合予算の枠はコントロール不能となります。
このケースは、上に挙げた「押さえる」の用例3と対比すると「押さえる」と「抑える」の違いが明瞭になります。
「押さえる」の送り仮名には「さ」が入りますが、一方で「抑える」の送り仮名には「さ」が入りません。なお、辞書によっては「押える」と表記していますが、平成22年に内閣告示された「常用漢字表」では「押さえる」となっています。辞書の通りに「押える」と書くと国語のテストでは間違いになります。微妙な違いですがくれぐれもご注意ください。参考:常用漢字表(平成22年11月30日内閣告示)
「押さえる」と「抑える」の違いと使い分けを区別するポイントまとめ
対象を完全に自分のコントロール下に置けるかどうかで区別するポイント、ご納得いただけたでしょうか。
「押さえる」と「抑える」は、区別するのがそれほど難しい言葉ではありませんが、どうしても迷いが生じた場合は、この区別のポイントを思い出してみてください。
- 【押さえる】対象を完全にコントロール下に置く
- 【抑える】対象を完全にコントロール下に置けるとは限らない